「じゃあ、おじさんはあたしに興味があるの?」
自意識過剰な質問をしちゃったかも。おじさんは少し笑った。
「ちょっとな」
それはどういう意味?
「ひどく色彩センスのあるやつだって思った」
あたしが訊ねる前に、おじさんは答えた。
「おまえの料理をはじめて見たとき、ちょっと衝撃受けたよ」
「料理?」
「そう」
うなずいて、なにかを思い返すような顔をすると、不精ひげのある口元だけで笑う。
「なんか知らねえけど、ある日を境に毎日パソコンに料理の写真が届くようになってさ。差出人はおまえのオカアサン。娘のつくったメシを写真に撮っては、ご丁寧に毎日モト部下に送りつけてきてたんだ、あのひと」
めずらしくおじさんがよくしゃべった。
知らなかった。おかーさんがそんなことをしていたなんて。あたしの、決しておいしくないごはんを、そんなふうにしてくれていたなんて。
なにそれ。いまになってネタバラシするなんて反則だよ。
「おまえはきれいなメシをつくるよな」
『メシ』を形容するのに、キレイってのはなんだか間違っているような気がした。ふつうはオイシイとかマズイとかなんじゃないの。
でも無性にうれしかった。お腹のあたりがきゅっとして、それからじんわりあったかい。
キレイって、そういえば、サユも似たようなことを言ってくれたっけ。
キレイ、ごはんが、キレイ――こんな褒め言葉をもらえる人は、世界にどれくらいいるんだろう?