さみしがりやのホリデイのレビュー一覧
「でもきっと、価値はあることだよ」 学校に行くっていう、一番の日常を手放して。自分の殻に閉じこもった。さみしいを抱えて、吐き出す場所を探していた。そんなある日迎えにきたのは、15歳も年上のおじさん。 トクベツなことがあるわけじゃない。一緒に暮らすって、一緒に食事をするってこと。一緒にテレビを見たり、一緒に今日のことを話したりするってこと。たったそれだけの日常が、ふたりの心と距離をじわじわ溶かしていく。そしてまた、新しい色に染め上げていく。それはきっと、優しくてあったかい色なんだろう。 愛情という名前の不確かなモノを、こんなにも揺るぎなく鮮明に描いた作品を私は他に知りません。気づいたらぼろぼろと流れている涙を止めることができませんでした。 何度でも読み返したくなる、愛を見つけられる素敵なお話です。ぜひ、御一読を。このあたたかさに触れてみてください。
日常を放って、ヘンテコな日々に足を踏み入れた。手放しても惜しくない毎日を。休んでみた。学校に行かない理由なんてない。好きじゃない理由なんてない。 退屈で、愛せない、塗りつぶされた世界。 「自分で考えて、決めろ。拙くても、それが正解だ」 15コ上のぬくもり。近くにあった。そばにいた。頭をなでる手は色褪せていた景色を、いとも簡単に。 目の前を、自分を。変えた。染めた。多彩でいとおしく。こんな世界で、夢だって持てた。 柔らかい文章、優しい雰囲気、淡い世界観。それなのにどうしてこんなに力強く響いてくるんだろう。説得力があるんだろう。涙がずるずる引っ張り出されました。これだから人と人っていとしくて綺麗なんだ。毎回、作品を読む度にそう思います。 歪でも不器用でもいいよ。あなたがいる世界で、空の下できょうも、生きてゆこう。 素敵な作品ありがとうございました。ぜひ御一読を。
無精髭を生やして、ぶっきらぼうで、無愛想。 でも、本当はとても優しくて不器用。 柔らかな染め物をする、32歳のおじさん。 学校が楽しくない祈は、不登校を続けるある日、唐突に、デザイナーの母の元部下だというそのおじさんのもとで生活することになった。 高校生にとって日常であるはずの「アッチ側」と、新鮮で居心地がいい「コッチ側」。 2つの価値観を見比べながら、ときに胸の痛くなる出来事に遭遇しながら、祈は自分と向き合っていく。 学校に行かないのはワルイコトなのか、仕事ばっかりの母への正直な気持ちはどこにあるのか、将来が何も見えない不安をどうすればいいのか。 おじさんは祈の疑問に丁寧に答えてくれるわけではないけれど、祈はおじさんのそばにいることで、自分なりの答えを探していく。 後悔は、必ずある。 だから、有意義な後悔を。 でこぼこな二人が少し切なくて、けれどとても爽やかな物語でした。
高校生の祈には、父親がいない。母親はいつも忙しい。孤独を抱える祈は、ある日高校に行くのをやめてしまう。そんな祈を迎えに来たのは、32歳の見知らぬ男でーー 一度だけでは足りず、二度目を読み終えてからレビューを書いています。 大好きすぎて、どこから語ればいいかわかりません。人と人との間にいつの間にか生まれていたあたたかさや絆を、どうしてこんなにも素敵に描けるんだろう。わたしもこういう風にされたかった、こういう言葉をかけてほしかった。祈に共感して、沢山、ぼろぼろと泣きました。 この二人の関係は、この二人だからこその形であって、そしてこの形は、作者さんにしか描けない。二人でいるその空間が、いとおしかった。 もう読んで!!すっごく忙しくても読んで!!と、人に薦めて、読み終えたその方と沢山語りたい。こんなに愛おしくてたまらないお話に出会えたことが幸せです。大好きで、宝物です。