「おひょなげひゃいひょ。えひょう(大人気ないぞ。遠藤)」
上手く喋れない俺はこのアラサー、バツイチ、ノッポっと悪口(あっこう)を吐きまくる。
「こいつ…、一々バツイチだのアラサーだのを出しやがって。マージどうしてくれよう、この馬鹿息子」
「あら、ついに坂本のパパになったわけ? 遠藤」
「俺がパパならお前はママに指名だからな。結婚しちまうか」
「ヤーよ。あんた、整理整頓もできないズボラ男だもの。しかもこんなクソ生意気な子供はいらない」
ホンットアラサーは失礼な奴等ばっかだな。
俺をなんだと思ってるんだよ。遠藤はいつまでも頬を抓ってくれているし…、傍から見たらパントマイムをしている不思議お兄さんだぜ!
いっそのこと不審者に見られて来い!
心中で毒づきつつも、俺は残り僅かとなった二人との会話を存分に楽しむ。
俺の中の砂時計はもう殆ど残されていない。
タイムリミットは目と鼻の先だ。
長く伸びた両脇の二つの影を見つめて俺は、切な交じりに吐息をついた。