それから、二人の間には奇妙な均衡が生まれた。
表向きは相変わらず素っ気なく貴族と武家、生まれの違いを互いに意識したままの距離があった。だが稽古のたび勤めの合間、輔道は誰に見咎められるでもなく朝隆に一言二言の助言をくれるようになった。
朝隆もまた、いつしかその無骨な言葉に耳を傾けるようになっていた。
「お前、笛が吹けるんだってな」
ある晩、詰所での宿直の折に輔道がぽつりと言った。
「……誰から聞いたのですか?」
「小耳に挟んだ」
馬鹿にしているのかと身構えた朝隆だったが、輔道の目に嘲りの色はなかった。ただ純粋な、興味のようなものが浮かんでいた。
「今度、聞かせてくれ」
短い一言だったが、朝隆はなぜかそれを、すぐには忘れられなかった。北の詰所に差す月明かりの下、二人の間にあった隔たりにごくわずかな、しかし確かな綻びが生じ始めていた。

