北面の契り


 それから二年、北面での日々は変わらず続いた。

 賭弓のたびに輔道の名は院の御前に轟き、時には強盗追捕で目覚ましい功を挙げ、その名は次第に都の内外に知れ渡っていった。
 朝隆もまた輔道の傍で鍛錬を重ね、かつての「凡庸な三男」という評から抜け出しつつあった。

 だが二人の間に流れる空気は、周囲の誰も気づかぬところで、確かに睦まじいものへと変わっていた。

 宿直の夜、誰もいない詰所で肩を寄せ合い、笛の音に耳を傾ける輔道。稽古の合間、汗を拭う朝隆の額に、さりげなく触れる輔道の指。そのたびに朝隆の心臓は、戦場でもないのに早鐘を打った。


「……そんな顔で見るな」


 ある宵、月を眺めていた朝隆に、輔道がぽつりと言った。


「どんな顔です」

「まるで、俺しか見えていないような顔だ」

「事実、そうですから」


 悪びれもせずそう返すと、輔道は珍しく狼狽えたように視線を逸らした。その耳が赤いのを見て、朝隆はひそかに胸のすく思いがした。無骨で動じないはずのこの男を、こんなふうに揺さぶれるのは自分だけなのだと思うと、たまらなく嬉しかった。