北面の契り




 輔道が朝隆の家を訪れたのは、それから数日後のことだった。

 北面の武者が正装で参上したいと申し出たと聞き、父は初め訝しんだ。だが輔道は一切ひるむことなく賭弓での功や院の覚え、そして今後の抱負を淀みなく語った。


「――某、必ずや功を立て、受領の地位を得てご覧に入れます。その暁には、正式に朝隆殿を頂きたく」


 面と向かって堂々とそう告げる輔道の姿に、朝隆は詰所で待つ間、気が気ではなかった。もし父が激高したら。もし輔道が追い返されたら――そう思うと、胸が締めつけられるようだった。

 だが夕刻、屋敷から戻ってきた輔道の顔には、隠しきれない安堵があった。


「……どうだったのです」


 待ちきれず駆け寄った朝隆に、輔道はふっと笑みをこぼした。


「二年、待つとさ。それまでに功を立てられなければ、諦めろとも言われたがな」

「二年……」

「短いとは言わん。だが、永遠でもない」


 輔道はそう言うと、不意に朝隆の手を取った。武骨な指が、そっと朝隆の指に絡む。


「その二年、お前は俺の傍にいてくれるか」


 問うまでもない言葉だったが、輔道がわざわざ口にしたことに朝隆の胸は不意に高鳴った。こんな無骨な男が、こんなにも真っ直ぐな言葉をくれるとは。


「……愚問です」


 朝隆は顔が熱くなるのを隠しきれないまま、繋がれた手をそっと握り返した。