しばしの沈黙の後、輔道は小さく笑った。それは、これまで見た中で最も柔らかな表情だった。
「……頑固なところは、貴族らしくないな」
「褒め言葉として受け取っておきます」
輔道の手が、そっと朝隆の頬に触れた。傷ついた肩をかばいながらも、その仕草には確かな意志があった。
「なら、俺も覚悟を決めるしかないな。お前の家に、正面から申し入れよう。北面の武者として、いずれ受領に届く功を立てる。そこまで待ってもらえるよう、俺自身の口で頼んでみる」
「……できるのですか、そんなことが」
「やらねば始まらん。戦場で敵に怯んだことなど、一度もない」
その言葉に、朝隆は思わず笑みをこぼした。不安がなくなったわけではない。だがこの男となら、その不安さえも共に越えていけるという確信があった。
二人の距離は、もうそれ以上言葉を必要としないほどに近づいていた。
月明かりの差す詰所の片隅で、輔道の腕が朝隆の体をそっと引き寄せる。朝隆はそれに抗わず、身を委ねた。
北の詰所に、長い静寂が満ちた。

