「私は――」
続く言葉が、喉の奥で詰まる。輔道はそんな朝隆をじっと見つめていた。
「言え。今更、隠す仲でもないだろう」
その一言に背を押されるように、朝隆はようやく口を開いた。
「私は、あなたを失いたくない。それだけです。武家の誼でも、北面の仲間としてでもなく――」
「分かっている」
輔道が静かに遮った。
「お前が縁談の話をした夜から、ずっと分かっていた。俺も、同じだ」
朝隆は息を呑んだ。輔道の目には、いつもの無骨さの奥に、隠しきれない熱があった。
「だが、俺とお前では釣り合わん。家格も、これから歩む道も違う。お前は婿入りして家を立てるべき身の上だ。俺のような男に構っている暇はないはずだ」
「その道を選べと、父から言われたばかりです。……ですが、私はまだ、それを受け入れる気にはなれない」
朝隆は真っ直ぐに輔道を見つめた。
「私が欲しいのは、家のための縁でも、都合のいい出世でもありません。ここで――あなたの傍で、自分の腕で何かを掴みたい。それが、今の私の望みです」

