北面の契り




 縁談の対面が十日後に迫ったある夜、都の東で盗賊の一団が押し込みを働いたとの報せが入った。
 北面に追捕の命が下り、朝隆と輔道は同じ組に配された。

 夜半、松明の灯りだけを頼りに賊の潜む廃屋へと踏み込む。乱闘は瞬く間に始まった。輔道は先頭に立ち、次々と賊を制していく。朝隆もまた、これまでの鍛錬の成果を発揮し、己の受け持つ賊と渡り合った。

 だが不意に、物陰から新手の賊が朝隆の背へと迫った。気づいた時にはもう遅い――そう覚悟した瞬間、横合いから飛び込んできた影があった。

 輔道だった。朝隆を庇うように割って入り、賊の刃を己の肩で受け止める。


「輔道殿!」

「……大したことはない」


 そう言う輔道の肩からは、確かに血が滴っていた。朝隆は残る賊を退けると、すぐさま輔道の傍らに膝をついた。


「大したことはない、ではありません。なぜ庇ったのです」

「考える前に、体が動いていた。それだけだ」


 事は収まり、賊は捕らえられた。だが詰所に戻り、輔道の傷の手当てをしながら、朝隆の胸にはずっと、ある一つの想いがくすぶり続けていた。


「……もし、あなたに何かあれば」


 包帯を巻く手が、わずかに震えた。