北面の契り




 数日後、朝隆は実家に赴き、父と対面した。


「乗り気ではないようだな」

「……北面での務めを、志半ばで退くのは本意ではありません」

「北面など、いつまでも続けられるものではない。功を挙げて受領にでもなれれば別だが、お前にそこまでの器量があるとは、正直思っておらぬ」


 父の言葉は、決して悪意からのものではなかった。むしろ息子を案じる、家長としての実直な物言いだった。だからこそ、朝隆の胸には鈍い痛みが走った。


「……少し、時をいただけませんか。北面での務めに、まだ道半ばのことがございます」

「道半ば、とは」


 朝隆は一瞬言葉に詰まった。輔道の顔が脳裏をよぎったが、それを父に語れるはずもない。


「……武芸の鍛錬です。北面に入った者として、恥じぬ腕を身につけてから身の振り方を決めとうございます」


 父はしばらく朝隆を見つめていたが、やがて小さく頷いた。


「良かろう。だが、いつまでも猶予があると思うな」

「はい。わかっております」