告白されたら、君を忘れる

 振られていない。

 頭ではわかっている。

 湊は僕を嫌いになったわけじゃない。

 むしろ逆だ。

 僕を忘れさせたくないから。

 自分がまた傷つきたくないから。

 だから。

『俺はもう、好きって言わない』

 そう決めただけ。

 なのに。

 次の日の朝。

 教室へ入って湊の顔を見た瞬間。

 僕は少し腹が立った。

「おはよう」

「おはよう」

 普通。

 いつも通り。

 窓際の席で本を読んでいる。

「昨日ちゃんと帰れた?」

「ああ」

「何時?」

「七時前」

「ご飯何だった?」

「魚」

「何の」

「鮭」

「おいしかった?」

「普通」

 普通。

 全部普通。

 僕だけが昨夜、ベッドの中で二時間も、

『もう好きって言わない』

 を反芻していたみたいで。

 馬鹿らしくなる。

「何」

 湊が本を閉じた。

「別に」

「怒ってる?」

「怒ってない」

「嘘」

「何で」

「お前も右手見るようになった」

 僕は自分の手を見る。

 親指。

 握ってはいない。

「僕には嘘の癖ないよ」

「ある」

「何」

「笑う」

「え?」

「本当に平気じゃない時ほど笑う」

 反射的に。

 笑いそうになった。

 やめた。

「そういうの」

「何」

「知ってるの、ずるい」

「またそれ?」

「だって僕、湊のことまだ全然知らない」

「聞けばいいだろ」

「じゃあ質問」

「何」

「僕のこと好き?」

 湊の顔が止まった。

 僕は。

 自分でも性格が悪いと思う。

「律」

「質問したら答えていいって言った」

「それ以外」

「じゃあ好きじゃない?」

「そういう誘導もなし」

「面倒くさい」

「お前がな」

 湊はまた本を開いた。

 僕はその本を上から押さえる。

「読めない」

「知ってる」

「昨日からずっと考えてた」

 湊の手が止まった。

「何を」

「本当に言葉だけなのかなって」

「……」

「湊が僕に好きって言う」

「うん」

「次の日、僕が忘れる」

「三回とも」

「それだけ?」

「何が」

「他に共通してること」

 湊は本から手を離した。

「俺も考えた」

「何かある?」

「時間も場所も違う」

 一回目。

 駅までの道。

 二回目。

 河川敷。

 三回目。

 駅近くの公園。

「季節も違う」

「十月、十二月、六月」

「ああ」

「天気は?」

「一回目曇り。二回目晴れ。三回目晴れ」

「食べたもの」

「知らない」

「全部同じプリン食べてたり」

「ない」

「じゃあやっぱり」

「告白」

「だよね」

 言ってから。

 少し怖くなった。

「試す?」

 僕が聞く。

 湊の目が鋭くなった。

「絶対嫌だ」

「でも」

「嫌だ」

「一回だけ」

「三回やってる」

「実験としては」

「お前」

 低い声。

 本気で怒っている。

「自分が何言ってるかわかってる?」

「わかってる」

「わかってない」

「じゃあどうすれば確かめられるんだよ」

「確かめなくていい」

「僕は確かめたい」

「俺は嫌だ」

 机を挟んで。

 僕たちは黙った。

 教室に生徒が増えてくる。

 松岡が入口から僕たちを見て。

 何かを察したのか。

 そのまま別の友達のところへ行った。

「湊」

「何」

「怒った?」

「ああ」

「ごめん」

「謝るなら言うな」

「それは無理」

「何で」

「僕のことだから」

 湊の眉が動く。

 また。

 この言葉。

「忘れるのも」

 僕は続けた。

「好きになるのも、僕だろ」

「……」

「湊だけで決めないでよ」

 河川敷で。

 二回目の僕も。

 同じようなことを言った。

 勝手に決めるな。

 僕の気持ちまで決めるな。

 でも。

 今なら。

 湊の気持ちも少しわかる。

「でも」

 僕は声を落とした。

「今すぐ試したいわけじゃない」

「絶対やらない」

「わかった」

「本当に?」

「たぶん」

「たぶんをつけるな」

 少しだけ。

 湊の顔が緩む。

「じゃあ」

 僕は自分の席へ戻りかけて。

 振り向く。

「別の言葉なら?」

「何」

「大事とか」

「は?」

「会いたいとか」

「律」

「かわいいとか」

「言うわけないだろ」

「今ちょっと照れた?」

「帰れ」

「自分の席に帰ります」

 僕は笑いながら離れた。

 でも。

 胸の奥には。

 小さな棘が残っていた。

 言わない。

 絶対に。

 そう言われるたび。

 本当は。

 聞きたくなる。

     *

 昼休み。

 僕たちは最近、ほとんど毎日一緒に昼を食べている。

 一度目も。

 二度目も。

 三度目も。

 きっと同じだった。

 今日も湊の前の席に座る。

「これ」

 パンを置く。

「何」

「新商品」

 レモンクリームパン。

 湊が袋を見る。

「炭酸じゃないよ」

「見ればわかる」

「前の僕は見なかったらしいから」

「お前はパッケージを読め」

「一口交換しよう」

「嫌だ」

「何で」

「俺こっちある」

 湊の手元。

 焼きそばパン。

「それ昨日も食べてなかった?」

「好きだから」

 言った。

 僕は反射的に顔を上げた。

 湊も。

 止まった。

「今」

「何」

「好きって言った」

「焼きそばパンがだろ」

「大丈夫?」

「何が」

「僕、忘れない?」

 湊が呆れた顔をする。

「今すぐ忘れたらどうする」

「とりあえず保健室?」

「馬鹿」

「でも言ったよね」

「告白じゃない」

「じゃあ単語そのものじゃない」

 湊の顔から。

 少し表情が消えた。

 僕も。

 冗談をやめる。

「今の重要じゃない?」

「……かもな」

「じゃあ」

「本気の告白」

「ああ」

「湊から僕への」

「たぶん」

「僕が湊に言うのは?」

 湊の目が動く。

「三回目」

「僕が先に言った」

「ああ」

「その時は忘れなかった?」

「その日の夜までは普通だった」

「じゃあ僕から言うだけなら」

「やめろ」

 即答。

「まだ何も言ってない」

「顔でわかる」

「どんな顔」

「実験しようとしてる顔」

「そんな顔ある?」

「ある」

「僕しか知らない?」

「たぶん」

 また。

 それ。

 湊だけが知っている僕。

 でも。

 少しずつ。

 僕も湊のことを知り始めている。

 嫌な話をするとコーヒーを飲む。

 困ると左耳を触る。

 本気で怒ると声が小さくなる。

 僕が近づくと耳が赤くなる。

「ねえ」

「何」

「湊ってさ」

「うん」

「僕が好きって言うのも怖い?」

 湊の手が止まった。

「……怖いよ」

 予想していなかった。

 もっと。

 否定されると思った。

「何で」

「次に何が起こるかわからないから」

「僕から言っても?」

「お前が言ったら」

 一度。

 湊は視線を落とす。

「俺も返したくなる」

 胸が。

 大きく鳴った。

「返さなきゃいいじゃん」

「簡単に言うな」

「言わないって決めたんだろ」

「決めた」

「なら」

「お前に目の前で言われて」

 湊が僕を見る。

「黙っていられる自信はない」

 僕は。

 言葉を失った。

 数秒後。

「それ」

「何」

「ほぼ言ってない?」

「何を」

「僕のこと――」

「言うな」

 パンの袋で口を塞がれた。

「むぐ」

「黙って食え」

 僕は袋をどける。

「乱暴」

「誰のせいだ」

「湊」

「何」

「耳赤い」

「うるさい」

 僕は笑った。

 嬉しい。

 聞いていないのに。

 ちゃんと。

 聞いた気がした。

     *

 六時間目。

 現代文。

 先生の声を聞きながら。

 僕はノートの右上に四角を描いていた。

 一個。

 二個。

 三個。

「朝倉」

 先生に呼ばれる。

「はい」

「次読んで」

「どこですか」

 教室が笑う。

「聞いてなかったな」

「すみません」

 ページを教えてもらう。

 読み始める。

 途中。

 何となく窓際を見る。

 湊と目が合った。

 ノートの右上。

 指で示す。

 四角。

 僕は小さく睨んだ。

 湊が笑う。

 それだけ。

 それだけなのに。

 嬉しい。

 先生にもう一度名前を呼ばれた。

「朝倉、読む」

「はい」

 また教室が笑った。

     *

 放課後。

「図書室行く?」

 僕が聞く。

「今日は無理」

「何で」

「委員会」

「何委員?」

「美化」

「似合わない」

「何が」

「掃除好きなの?」

「嫌い」

「じゃあ何で」

「余った」

「友達少なそうな決め方」

「余計なお世話」

「何時まで?」

「五時くらい」

「待ってる」

「何で」

「一緒に帰る」

「先帰れ」

「嫌」

「また」

「嫌なものは嫌」

 湊が。

 少しだけ笑う。

「わがまま」

「湊の前だけらしいから」

 言うと。

 表情が変わった。

 嬉しいような。

 悲しいような。

「何」

「いや」

「また前の僕思い出した?」

「少し」

「どんな」

「同じこと言った」

 胸がざわつく。

「いつ」

「二回目の前」

「……そっか」

 また。

 過去の僕。

 僕は。

 その顔をしていたのか。

 その言葉を言っていたのか。

 たまに。

 嫌になる。

 何をしても。

『前も』

 と言われる。

 僕は。

 前の自分をなぞっているだけなのか。

「やっぱ帰る」

「え?」

「待つって言っただろ」

「気が変わった」

「律」

「また明日」

 笑う。

 たぶん。

 平気じゃない時の笑い方。

 湊が僕の腕を掴んだ。

「待て」

「委員会遅れるよ」

「何怒ってる」

「怒ってない」

「嘘」

「証拠は」

「笑ってる」

 僕は笑うのをやめた。

「……毎回さ」

「何」

「僕が何かすると」

 言わないつもりだった。

 でも。

 湊には。

 言ってしまう。

「前もやったって言うじゃん」

 湊が黙る。

「前もそう言った」

「……」

「前もここに来た」

「律」

「前も好きだった」

 喉が。

 少し苦しくなる。

「僕って何なの」

「何って」

「四人目?」

「は?」

「一度目の僕」

 指を一本。

「二度目」

 二本。

「三度目」

 三本。

「今」

 四本。

「四人いるみたい」

「同じお前だろ」

「僕には違う」

「律」

「だって知らないんだよ」

 声が強くなる。

「湊が知ってる僕のこと」

 廊下。

 部活へ向かう生徒が通る。

 僕たちは少し端へ寄る。

「僕が湊を好きだったことも」

「……」

「泣いたことも」

「……」

「手つないだことも」

「律」

「全部知らない」

 湊が手を離した。

 僕は。

 それが嫌だった。

「なのに」

 続ける。

「僕が何かするたび、前の僕が出てくる」

「そんなつもりで」

「わかってる」

 責めたいわけじゃない。

 湊は悪くない。

 覚えているだけ。

「でもさ」

 僕は俯いた。

「湊はどの僕が好きなの」

 沈黙。

 自分で言って。

 胸が痛くなった。

「一回目?」

「律」

「二回目?」

「やめろ」

「三回目?」

「やめろって」

「今の僕?」

 湊の声が消える。

 ほら。

 答えられない。

 そう思った瞬間。

「全部だよ」

 低い声。

 顔を上げる。

 湊は。

 怒っていた。

「全部お前だ」

「でも」

「一回目も二回目も三回目も」

 僕を見る。

「今も」

 強い目。

「全部、朝倉律だ」

 心臓が鳴る。

「記憶がなくなったから別人になるわけじゃない」

「湊にはそう見えるかもしれないけど」

「見えるんじゃない」

「じゃあ」

「知ってるんだよ」

 湊の声が。

 少し震えた。

「お前が忘れても」

「……」

「笑い方も」

「……」

「怒り方も」

「……」

「好きなものも」

「……」

「嫌なものも」

 一つずつ。

「変わってない」

「でも」

「毎回」

 湊の目が僕を離さない。

「また俺の前でわがままになる」

 息が止まる。

「また俺のパン勝手に食う」

「一回しか」

「何回もある」

「……」

「また袖つかむ」

「……」

「また名前で呼ぶ」

 胸が熱い。

「また俺を」

 そこで。

 湊は止まった。

 言わない。

 最後の言葉を。

「何」

 僕が聞く。

「何でもない」

「言って」

「言わない」

「湊」

「言わない」

 僕には。

 続きがわかった。

 また俺を好きになる。

 たぶん。

 そう言おうとした。

 でも。

 言わなかった。

「……ずるい」

「何が」

「そこまで言ったら同じじゃん」

「違う」

「何が違う」

「言葉にしない」

「意味は同じ」

「それでも」

 湊は。

 静かに言った。

「もう言わない」

 僕は。

 また少し腹が立った。

 でも。

 今度は。

 悲しくはなかった。

「わかった」

「本当に?」

「うん」

「何か企んでる?」

「失礼」

「顔」

「どんな顔」

「企んでる顔」

「僕より僕を知ってるんでしょ」

「だからわかる」

 僕は笑う。

「委員会行きなよ」

「待ってる?」

「待ってる」

「絶対?」

「うん」

 湊が歩き出す。

 数歩。

「湊」

 振り向く。

「何」

「今の僕も?」

「何が」

「大事?」

 ずるい質問。

 わかっている。

 湊は少しだけ。

 困った顔をした。

 それから。

「ああ」

 一言。

 好きではない。

 でも。

 十分だった。

「そっか」

「じゃあ行く」

「うん」

 廊下の向こうへ。

 湊が消える。

 僕は。

 その背中を見送った。

 大事。

 僕は湊にとって。

 大事。

 それなら。

 今は。

 それでいい。

     *

 図書室。

 五時十分。

 湊はまだ来ない。

 僕は窓際の席で本を開いていた。

 でも。

 全然頭に入らない。

 ノートを開く。

 何となく。

 右上に四角。

 一個。

 二個。

 やめる。

 代わりに。

 真ん中へ。

 一行書いた。

『湊はもう好きと言わない。』

 その下。

『僕はそれが嫌だった。』

 さらに。

『でも、聞かなくてもわかることはある。』

 ペンが止まる。

 本当に?

 わかる?

 湊が。

 僕をどう思っているか。

 わかる。

 たぶん。

 でも。

 もう一つ。

 もっと大事なこと。

 僕は。

 湊をどう思っている。

 過去の僕じゃない。

 一回目でも。

 二回目でも。

 三回目でもない。

 今の僕。

 今。

 僕は。

 久世湊を。

 どう思っている。

 会いたい。

 一緒に帰りたい。

 何を食べたか知りたい。

 嫌いなしいたけを無理やり食べさせたい。

 名前を呼びたい。

 呼ばれたい。

 袖をつかみたい。

 笑ってほしい。

 僕を知っていてほしい。

 忘れたくない。

 そして。

 もう。

 湊だけに。

 過去の僕を見ていてほしくない。

 僕はノートに。

 もう一行書いた。

『今度は、僕が決める。』

「何を?」

 声。

 顔を上げる。

 湊が立っていた。

「うわっ」

「何その反応」

「いつ来たの」

「今」

「見た?」

「何を」

 慌ててノートを閉じる。

「何でもない」

「怪しい」

「見ないで」

「見ない」

 向かいに座る。

「委員会?」

「終わった」

「遅かった」

「先生の話長かった」

「待った」

「悪い」

「プリン一個」

「何が」

「待った代」

「高い」

「じゃあ半分」

「それなら」

 僕は笑う。

「帰ろ」

「ああ」

 立ち上がる。

 机の下。

 あの落書き。

『飲めないなら買うな』

『新商品だったから』

 昔の僕と。

 昔の湊。

 でも。

 今。

 ここにいる僕たちは。

 過去じゃない。

     *

 喫茶アオ。

 閉店前。

「本当に来るとは思わなかった」

 店主が笑う。

「プリン二つ?」

「一つ」

 僕が言う。

「半分こします」

 店主が少し目を細めた。

「前もよくやってたね」

 胸が。

 少しだけ引っかかる。

 でも。

 今日は。

 笑えた。

「じゃあ今日は前と違うことします」

「何」

 湊が聞く。

「僕が大きいほう食べる」

「前もそうだった」

「台無し!」

 湊が笑う。

「じゃあ」

 僕はプリンを真ん中から割る。

 片方。

 少し大きい。

 それを湊の皿に置いた。

「はい」

「俺?」

「うん」

「何で」

「前の僕はしなかったでしょ」

「たぶん」

「じゃあ今の僕」

 湊が。

 僕を見る。

「そういうこと?」

「そういうこと」

 小さいほうを食べる。

「うまい」

「知ってる」

「禁止って言った」

「忘れてた」

「僕みたいに?」

 言ってから。

 しまった。

 でも。

 湊は。

 少し笑った。

「それは笑えない」

「ごめん」

「でも」

「何」

「今のはちょっと面白かった」

「どっち」

「どっちも」

 僕たちは。

 笑った。

 ほんの少しずつ。

 忘れたことを。

 笑えるようになっている。

     *

 帰り。

 駅の改札前。

「じゃあまた明日」

「うん」

 湊が離れる。

 僕は。

 一度手を上げて。

 でも。

 呼び止めた。

「湊」

「何」

「好きって」

 彼の顔が強張る。

「言わなくていいよ」

 僕は続けた。

「……」

「もう聞かない」

「本当に?」

「うん」

「何で急に」

「わかったから」

「何が」

 僕は少し考えた。

「湊が言わなくても」

 一歩。

 近づく。

「僕が知ればいい」

「何を」

「湊のこと」

 彼が黙る。

「それで」

 僕は笑った。

 平気なふりじゃない。

 たぶん。

 本当に笑っている。

「今度は僕が決める」

「何を」

「まだ秘密」

「何だよ」

「じゃあね」

 改札を通る。

「律」

 振り返る。

「何」

 湊は。

 少し迷ってから。

「明日も」

「うん」

「ちゃんと来いよ」

 胸が。

 ぎゅっとなる。

 何でもない言葉。

 でも。

 僕には。

 よくわかった。

 明日も忘れないで。

 そう聞こえた。

「行くよ」

 僕は答えた。

「絶対」

 湊は。

 安心したように笑った。

 好きとは。

 言わなかった。

 もう。

 それでよかった。

 僕は。

 電車の中でスマホを開いた。

 湊とのトーク画面。

 消さない。

 今日のことも。

 明日のことも。

 残していく。

 そして。

 家に着いてから。

 現代文のノートを開いた。

『今度は、僕が決める。』

 その下へ。

 一行。

 書き足す。

『過去の僕が三回好きになったからじゃない。』

 少し考える。

 もう一行。

『今の僕が、湊を好きになるかどうかを。』

 ペンを置く。

 まだ。

 好きとは書かなかった。

 でも。

 なぜか。

 答えはもう。

 すぐそこまで来ている気がした。