寝返りを打った拍子に、ぬくぬくのお布団から足が飛び出した。外の空気の冷たさに驚いて、急いで布団の中に足を戻す。その過程でなんだか目が覚めてしまった。
「んぁ、朝……?」
身体を起こすと、閉められたカーテンの隙間からすっと日が差し込んでいた。
「——もしかして僕、めちゃくちゃ早くに起きたんじゃない?」
家からは物音一つしないし、外だって日が差してるとはいえまだ薄暗い。二度寝しないようにベッドから立ち上がり、カーテンを開ける。
なんて素晴らしい朝なんだ、自分一人で朝起きれたぞ。僕の中だと歴史的快挙だ。
「ふふふ、後輩くんどんな反応するかなぁ〜」
今日も来るであろう後輩くんの驚いた顔が目に浮かぶ。
(さて、今は何時かな〜!)
完全に今が朝だと思い込んでいた僕は、ワクワクした気持ちで壁にかかっている時計を見た。長い針と短い針が、両方てっぺんを向いている。
「…………ん?」
寝ぼけてるのかな?
ゴシゴシと目を擦り、もう一度時計を見る。
やっぱり両方12を指していた。
夜中にしては外が明るすぎる。となれば、導かれる答えはただ一つ。
「いやいやいや、まさか……」
慌ててベッドに戻りスマホを開くと、ロック画面に大きく『p.m.12時』と表示された。それを見て膝から崩れ落ちそうになる。
そう、今は朝ではなくお昼だったのだ。外が薄暗かったのは、ただ天気が曇りなだけだった。
なんとか倒れないよう踏ん張ると、ロック画面に通知が一件来ていることに気づいた。
確認すると、早朝に後輩くんから一通メールが届いていたようだ。僕はそれを迷わずタップすると、一瞬でトーク画面に移った。
『すみません、今日行けません』
「メールで送られても気づかないよっ!」
ふかふかのベッドの上にボスンとスマホを落とす。
朝六時に送られていたそのメールに、寝ていた僕はもちろん気付かなかった。
この僕が、スマホの通知音なんかで起きると思う!? 無理でしょ!
「あぁ〜! どうしよう!!」
いや、慌てている場合ではない。急いで準備して学校に向かわなければ……!
ドタバタと音を立てながら階段を降りる。
——古都音るい、実に八ヶ月ぶりの大遅刻です。
◇
「古都音、最近は調子良かったのにな」
「すみません……」
担任の先生から手渡された入室許可証がひどく懐かしく、重く感じる。
あの後、ご飯も食べずに急いで家を飛び出した。こういう時、家から学校が近いと便利だ。距離だけでこの高校を選んで良かった。
なんとか昼休み中に登校し、そのまま職員室へ直行する。お母さんから遅刻連絡が入っていたようで、先生は笑顔で対応してくれた。
「ま、去年に比べたらこの一回くらいたいしたことないさ。去年は遅刻大魔人だったからな」
「そう、ですね」
「なんだ古都音、元気ないな。体調悪いのか?」
「いえ、まだ少し眠くて……」
「そうか、よく来たな。まだ昼休み残ってるから、ご飯食べて来い」
「はい」
話も終わったので職員室を出ようとすると、先生に待ったと呼び止められる。
「でもな、古都音——」
「っ……」
先生の言葉がグサッと心に突き刺さって、逃げるように礼をして職員室を飛び出した。
もらった入室許可証をポケットに突っ込み、枯れ木になった銀杏の根元に腰を下ろす。鞄からリビングの机に用意されていた弁当を取り出して、一人で黙々と食べ進めた。
いつもは隣に後輩くんがいて一緒にお話ししながら弁当を食べるのに、今日は一人。後輩くんと会うまでずっと一人で食べていたのに、なんだか寂しくて仕方がない。
——いつの間にか、後輩くんが隣にいるのが当たり前になっていたんだなぁ……。
無言だったからかいつもより早く食べ終わった弁当を片付け、ふぅっと息を吐いた。スマホの時計を確認すると、昼休みはまだ十五分ほど残っている。
(教室に行って本でも読もうかな)
弁当をカバンの中に放り込み、そのまま校舎に向かって歩き出した。
「んぁ、朝……?」
身体を起こすと、閉められたカーテンの隙間からすっと日が差し込んでいた。
「——もしかして僕、めちゃくちゃ早くに起きたんじゃない?」
家からは物音一つしないし、外だって日が差してるとはいえまだ薄暗い。二度寝しないようにベッドから立ち上がり、カーテンを開ける。
なんて素晴らしい朝なんだ、自分一人で朝起きれたぞ。僕の中だと歴史的快挙だ。
「ふふふ、後輩くんどんな反応するかなぁ〜」
今日も来るであろう後輩くんの驚いた顔が目に浮かぶ。
(さて、今は何時かな〜!)
完全に今が朝だと思い込んでいた僕は、ワクワクした気持ちで壁にかかっている時計を見た。長い針と短い針が、両方てっぺんを向いている。
「…………ん?」
寝ぼけてるのかな?
ゴシゴシと目を擦り、もう一度時計を見る。
やっぱり両方12を指していた。
夜中にしては外が明るすぎる。となれば、導かれる答えはただ一つ。
「いやいやいや、まさか……」
慌ててベッドに戻りスマホを開くと、ロック画面に大きく『p.m.12時』と表示された。それを見て膝から崩れ落ちそうになる。
そう、今は朝ではなくお昼だったのだ。外が薄暗かったのは、ただ天気が曇りなだけだった。
なんとか倒れないよう踏ん張ると、ロック画面に通知が一件来ていることに気づいた。
確認すると、早朝に後輩くんから一通メールが届いていたようだ。僕はそれを迷わずタップすると、一瞬でトーク画面に移った。
『すみません、今日行けません』
「メールで送られても気づかないよっ!」
ふかふかのベッドの上にボスンとスマホを落とす。
朝六時に送られていたそのメールに、寝ていた僕はもちろん気付かなかった。
この僕が、スマホの通知音なんかで起きると思う!? 無理でしょ!
「あぁ〜! どうしよう!!」
いや、慌てている場合ではない。急いで準備して学校に向かわなければ……!
ドタバタと音を立てながら階段を降りる。
——古都音るい、実に八ヶ月ぶりの大遅刻です。
◇
「古都音、最近は調子良かったのにな」
「すみません……」
担任の先生から手渡された入室許可証がひどく懐かしく、重く感じる。
あの後、ご飯も食べずに急いで家を飛び出した。こういう時、家から学校が近いと便利だ。距離だけでこの高校を選んで良かった。
なんとか昼休み中に登校し、そのまま職員室へ直行する。お母さんから遅刻連絡が入っていたようで、先生は笑顔で対応してくれた。
「ま、去年に比べたらこの一回くらいたいしたことないさ。去年は遅刻大魔人だったからな」
「そう、ですね」
「なんだ古都音、元気ないな。体調悪いのか?」
「いえ、まだ少し眠くて……」
「そうか、よく来たな。まだ昼休み残ってるから、ご飯食べて来い」
「はい」
話も終わったので職員室を出ようとすると、先生に待ったと呼び止められる。
「でもな、古都音——」
「っ……」
先生の言葉がグサッと心に突き刺さって、逃げるように礼をして職員室を飛び出した。
もらった入室許可証をポケットに突っ込み、枯れ木になった銀杏の根元に腰を下ろす。鞄からリビングの机に用意されていた弁当を取り出して、一人で黙々と食べ進めた。
いつもは隣に後輩くんがいて一緒にお話ししながら弁当を食べるのに、今日は一人。後輩くんと会うまでずっと一人で食べていたのに、なんだか寂しくて仕方がない。
——いつの間にか、後輩くんが隣にいるのが当たり前になっていたんだなぁ……。
無言だったからかいつもより早く食べ終わった弁当を片付け、ふぅっと息を吐いた。スマホの時計を確認すると、昼休みはまだ十五分ほど残っている。
(教室に行って本でも読もうかな)
弁当をカバンの中に放り込み、そのまま校舎に向かって歩き出した。



