さよならの記憶写真館

 梅雨の晴れ間と思われる、星々が輝く夜だった。

「お母さんはね、お星さまになるんだよ」
 おかあさんはどうなるの? と聞いてきた椿に、澪の明るく、でも涙声が聞こえてくる。
 目を開ける力も、握られた手に返す力も、息をする力すらなくなっていくけど、耳は最後まで聞こえているって本当なんだね。
 見えなくても分かるよ。
 お父さん、お母さんが並んでいてくれて、澪が椿と柚花の側にいてくれて、優太がいてくれて。
 私、みんなに囲んでもらっているんだって。

 一度は諦めた、悲しみの中で看取ってもらうこと。
 だけど過去修正をしてもこの未来は同様にきてくれて、私はどれほど幸せ者なのだろう。
 しかも、綺麗な星が輝いている日だったなんて知らなかったな。
 本当、幸せ者だな私は。


 ……もしかしたら、奇跡が起こるんじゃないかと思っていた。
 柚花は無事に生まれて、癌は転移しなくて、完治させて。「あの頃は大変だった」と大人になった椿と柚花に話して、だから検診に行きなさいよと私は軽口を叩いている。
 それは無理で転移していたとしても、治療を頑張って上手く付き合っていって、二人が大人になるまで生きれたらとか、そんな希望を持っていた。

 だけど現実は癌が発覚し、三年後に死亡。
 四歳と二歳の娘を残してしまった。

 周りが言っていたことが正しかった。
 私はきっと、間違った選択をしてしまったのだろう。

 だけど、またあの局面に立って思ったの。やっぱり、この子を諦めることは出来ないなって。
 もし死の運命を変えることが許され、あの宣告の日に戻れたとしても、私は結局同じ最期を迎えるだろう。
 何度も何度も繰り返しても、その未来だけは絶対に変わらない。
 だから、この決断をもう後悔しない。もう死んだことを悔やんだりしないから。

 ……だから、だからね。
 柚花。あなたが物事を理解出来るようになり、もし何かのきっかけで出生の秘密を知ることがあっても、絶対に自分のせいだと思わないでください。
 その決断をしたのはお母さんであり、あなたではありません。私は覚悟の上であなたを産みました。
 だから、絶対に自分の存在を否定しないでください。
 あなたが事実を知る未来が訪れないことを、切に願います。


 私の呼吸は完全に止まり、それに伴って心臓も止まっていき、最後には何も聞こえなくなった。
 三十二歳と二ヶ月。私、吉永花梨の人生は終わりを迎えた。