「お願い、あの子たちの存在は守って! クロちゃん! 支配人さん!」
熱でフラつこうが、声が掠れようが、息が切れようが。
私は必死に叫び続ける。
お願い、お願い……。
『花梨さん。こればかりは……』
脳内に響いてくるのは、支配人さんの覇気のない声。
そうだ、分かってる。
過去修正を出来るのは一度だけ。人生と同じで、もう一度はない。やり直すことは出来ない。
分かってた、分かっていたはずだった。だけどこんな未来になるなんて思いもしなかったの!
「お願いします! だったら、私の魂を捧げます! 生まれ変わることなんて、いらない! だから、あの子達は……!」
流れる涙を抑えようと目を閉じると、瞼の奥に映るのは椿と柚花の妊娠が分かり、お腹をさすりながら命に換えても守り抜くと決めたあの日のこと。
だけど私は生きられない運命にあって、幼い二人を残して死んでしまったことが耐えられなくて未来を変えようとしたのに、私のせいでこんなことになるなんて。
お願い、消えないで!
『一つ、方法はあるニャ』
耐えきれずに涙を溢していた私に、呼びかけてくれる救いの言葉。
何? どうしたら良いの? 私、なんだってするから!
『花梨が、責任持って子ども達を産むニャ』
……え? それって……?
『過去修正をやめる。そうゆうことです』
支配人さんの言葉に、入っていた力がスルスルと抜けていき、ベッドに倒れこんでしまう。
じゃあ、私は今まで何をしてきたの? 優太を傷付けて、何も成せなくて、大切な思い出まで消して、一体何をしていたの?
『成しましたよ』
……え?
『優太さんは元々弱音を吐けない性格で、だからこそ一人で全てを背負い込み、花梨さんのご病気のことすら誰にも相談出来ず、追い詰められてしまったのでしょう』
澪に背中を摩られ、泣いている写真。
堰を切ったように目から溢れる涙にどれほど追い詰められていたのかと、苦しくなった一枚。
あの過去を変えたくて、私は。
『しかしこの過去修正により、中学生の優太さんが過去では吐き出せなかった弱音を言葉にして、花梨さん伝えることが出来ました。おそらくお二人の会話が過去より増えているのは、互いの苦しみを話し合い理解し合ったからでしょう。優太さんは何かあれば花梨さんに相談する習慣がついていき、それが友達、職場の方々、公的サービスへとどんどんと増えていき、周りを頼る勇気に繋がっていくはずです。過去修正は出来事だけではなく人を強くすることもあり、それが結果的に未来を変える一因となります。だから成しましたよ」
「……人を?」
確かに優太の口数は増えて、小さい困りごとを話してくれるようになったけど、それって優太が変わっていたからだったんだ。
『それにニャ、修正前の人生は優太にとって悪いことがなかったニャア。花梨はずっと一緒で、二人で暮らして、子どもちゃんも生まれて、幸せだニャーと平和ボケしてたんだニャア。だけど今回の過去修正で花梨がバイバイし出したから、優太はボケてる場合じゃニャイと一生懸命考えたんだニャア。澪ちゃんに会わないとか、花梨にウソつくのやめて本心をぶつけるとか、気持ちを言葉にするとか。まあ言い逃げしちゃうのが優太らしいけど、ポケポケしてた時よりよっぽど変わったニャ。大丈夫だニャ、ここまで行動が取れる勇気と行動力と覚悟があれば優太は一人親としてやっていけるだニャ』
クロちゃんの優しい声が私の魂へと伝わり、どんどんと傷が塞がっていくような気がする。
「……あ、でもさ。優太は、その……。元々、好きだったのかな? 私のこと。過去を変えたから、気持ちも変わっただけかもしれないし……」
自分でも、めんどくさいこと言っていると分かってる。
だけど、私は、単に子供が欲しかったわけじゃなくて、優太との……。
『確かめたら良いニャ』
「え、でも、今からじゃ」
『簡単ニャアよ、目を見れば一発ニャ。修正前と同じ目をしていたら、優太は花梨にゾッコンってことだニャ』
「ゾッコン! いや、そんな……」
三十二歳になっても恋愛にウジウジしてて、自分を否定して、本当に情けないよね私。
『とにかく風邪を治しましょう。すみませんね、話しかけて』
「いえ」
目を閉じれば雨音が聞こえてきて、そういえば最後の記憶付近で頻回に窓外から聞こえてきたなと思い返す。
スッと涙が溢れたのはいつか。どうして涙が流れてしまったのか。もう思い出せなかった。
熱でフラつこうが、声が掠れようが、息が切れようが。
私は必死に叫び続ける。
お願い、お願い……。
『花梨さん。こればかりは……』
脳内に響いてくるのは、支配人さんの覇気のない声。
そうだ、分かってる。
過去修正を出来るのは一度だけ。人生と同じで、もう一度はない。やり直すことは出来ない。
分かってた、分かっていたはずだった。だけどこんな未来になるなんて思いもしなかったの!
「お願いします! だったら、私の魂を捧げます! 生まれ変わることなんて、いらない! だから、あの子達は……!」
流れる涙を抑えようと目を閉じると、瞼の奥に映るのは椿と柚花の妊娠が分かり、お腹をさすりながら命に換えても守り抜くと決めたあの日のこと。
だけど私は生きられない運命にあって、幼い二人を残して死んでしまったことが耐えられなくて未来を変えようとしたのに、私のせいでこんなことになるなんて。
お願い、消えないで!
『一つ、方法はあるニャ』
耐えきれずに涙を溢していた私に、呼びかけてくれる救いの言葉。
何? どうしたら良いの? 私、なんだってするから!
『花梨が、責任持って子ども達を産むニャ』
……え? それって……?
『過去修正をやめる。そうゆうことです』
支配人さんの言葉に、入っていた力がスルスルと抜けていき、ベッドに倒れこんでしまう。
じゃあ、私は今まで何をしてきたの? 優太を傷付けて、何も成せなくて、大切な思い出まで消して、一体何をしていたの?
『成しましたよ』
……え?
『優太さんは元々弱音を吐けない性格で、だからこそ一人で全てを背負い込み、花梨さんのご病気のことすら誰にも相談出来ず、追い詰められてしまったのでしょう』
澪に背中を摩られ、泣いている写真。
堰を切ったように目から溢れる涙にどれほど追い詰められていたのかと、苦しくなった一枚。
あの過去を変えたくて、私は。
『しかしこの過去修正により、中学生の優太さんが過去では吐き出せなかった弱音を言葉にして、花梨さん伝えることが出来ました。おそらくお二人の会話が過去より増えているのは、互いの苦しみを話し合い理解し合ったからでしょう。優太さんは何かあれば花梨さんに相談する習慣がついていき、それが友達、職場の方々、公的サービスへとどんどんと増えていき、周りを頼る勇気に繋がっていくはずです。過去修正は出来事だけではなく人を強くすることもあり、それが結果的に未来を変える一因となります。だから成しましたよ」
「……人を?」
確かに優太の口数は増えて、小さい困りごとを話してくれるようになったけど、それって優太が変わっていたからだったんだ。
『それにニャ、修正前の人生は優太にとって悪いことがなかったニャア。花梨はずっと一緒で、二人で暮らして、子どもちゃんも生まれて、幸せだニャーと平和ボケしてたんだニャア。だけど今回の過去修正で花梨がバイバイし出したから、優太はボケてる場合じゃニャイと一生懸命考えたんだニャア。澪ちゃんに会わないとか、花梨にウソつくのやめて本心をぶつけるとか、気持ちを言葉にするとか。まあ言い逃げしちゃうのが優太らしいけど、ポケポケしてた時よりよっぽど変わったニャ。大丈夫だニャ、ここまで行動が取れる勇気と行動力と覚悟があれば優太は一人親としてやっていけるだニャ』
クロちゃんの優しい声が私の魂へと伝わり、どんどんと傷が塞がっていくような気がする。
「……あ、でもさ。優太は、その……。元々、好きだったのかな? 私のこと。過去を変えたから、気持ちも変わっただけかもしれないし……」
自分でも、めんどくさいこと言っていると分かってる。
だけど、私は、単に子供が欲しかったわけじゃなくて、優太との……。
『確かめたら良いニャ』
「え、でも、今からじゃ」
『簡単ニャアよ、目を見れば一発ニャ。修正前と同じ目をしていたら、優太は花梨にゾッコンってことだニャ』
「ゾッコン! いや、そんな……」
三十二歳になっても恋愛にウジウジしてて、自分を否定して、本当に情けないよね私。
『とにかく風邪を治しましょう。すみませんね、話しかけて』
「いえ」
目を閉じれば雨音が聞こえてきて、そういえば最後の記憶付近で頻回に窓外から聞こえてきたなと思い返す。
スッと涙が溢れたのはいつか。どうして涙が流れてしまったのか。もう思い出せなかった。



