さよならの記憶写真館

「じゃあ、行ってくるね」
 一週間後の日曜日。私の部屋にコソッと寄り、わざわざ挨拶をしに来てくれた澪に目を向ける。
 胸下でキュッと絞られた、ウエストラインのワンピース。水色の膝上スカートより、細くて長い脚が伸びている。
 澪って、こうゆう甘い服装も似合うんだ。
 ベリーショートだと合わせるのが難しそうなのに、チークやリップをピンクにして、ネックレスを小さなハート形にしたら一気に清楚系にまとまっている。
 えっ、待ってよ。そうゆう格好も合わせられるなんて、もう……。

「おねーちゃん?」
 澪の声にハッとなり、私はニコッ笑う。

「いってらっしゃいー!」
 心は揺れているのに、気付かないフリをして。
 ドアが閉まったと同時にガバッと布団を被り、また私は目を強く閉じる。
 今日は私が主人格でいないと、自分が何するか分からない。
 この苦しさは私が担うから、あなたは少しでも苦しまないでね。
 それぐらいしか、出来ないんだけど。


 気温がガクッと下がった夕暮れ時、私は駅舎前をウロウロとしていた。
 二人が帰って来ないんじゃないかとかじゃなくて、二人が帰って来れるかを心配して。
 だって、あそこは……。

「……あっ」
 電車がホームに止まり、降りてきたのは二人の男女。
 田舎だから駅のホームと歩道が近距離にあり、電車から降りてきた人の顔までハッキリ見えてしまう。
 澪の可愛い笑顔。優太の大人っぽい顔付きまで。

 ……ほら、問題ないじゃない。
 駅まで様子を見に来て、何してるの?
 二人に見つからないように、パタパタとその場を後にする私。
 すっかり冷たくなった外気を吸いながら走ると、喉が乾いてヒリヒリする。目と鼻まで痛くなってしまって、本当に嫌になるよね。
 気付けば私は、小山を駆け上り、祠に辿り着いていた。中学生の、あの頃のように。
 ……三十二歳になっても、ここ? 成長しないな、私は。
 祠の主である猫に目配せで挨拶をし、また私は座らせてもらう。するとここはやはり温かくて、まるで大人の私までを迎えてくれたようだった。