さよならの記憶写真館

「お姉ちゃん、頭痛い?」
「……えっ! いや……」
 澪の声にパチっと瞬きするのは私ではなく、十七歳の私。
 呆けている間に、体は元の持ち主に返っていたようだ。

「お母さんが、夕飯食べれるか聞いてたよ?」
「あー、今日は良いかな……。お土産ありがとうね」
 痛くもない頭を摩り、見せつけるようにベッドにゴロンと転がれば、澪は布団を掛け直してくれる。

「ゆっくり寝なよー」
「うん」
 布団を被りキュッと目を閉じたのは、泣けてきたからだろう。
 二人のデートを目の当たりにした痛み、澪みたいになれない不甲斐なさ、傷付くことが怖くて逃げてしまった自分への苛立ち。
 過去修正の為に未来の私が勝手に動いていることから、この時代を生きる私からしたら矛盾する行動ばかり起こしている。
 今回の子どもの国だって本当なら喜んで二人で行くだろうけど、私は三人で行こうとか言い出して仮病まで使って二人にしている。
 主人格である私がそれに疑問を抱かないように、クロちゃんが記憶の改ざんをしているらしく、過去の私は自分で決めて動いていると思っているみたい。
 ごめんね、十七歳の私。本当は二人で出掛けたかったよね? 勇気のない自分を嫌いになっちゃうよね?
 目を開ければ布団の中で一緒に潜っていたウサウサと目が合い、私は手を伸ばして抱き締めていた。

 あの時くれた、ぬいぐるみ。
 恥ずかしいと思いつつ、並んで買ってくれたんだ。
 これはずっと持っていて、結婚しても枕元に置いていた大切な物。
 だから、だからね。
 これを大切にすることは許して。