さよならの記憶写真館

 高校二年生の秋、遊園地からの帰り道。
 十月の空は忙しなく、昼間の暖かさと共に早々と去り、肌寒さを感じる中、街灯を頼りに田舎道を抜けていく。

『優太、今日はありがとう!』
『こっちこそ、……楽しかった』
『うん』

 今日は予定通りに帰れる安堵感と、どこか複雑な気持ちがグチャグチャと混在する感情を押し込めていると、とうとう家に着いてしまった。
 並んでいた私達は玄関前で向き合い、別れの言葉を口にする。
 そんな心を読まれないようにと不自然なほどに声を張り上げてしまい、少しトーンを下げる。
 周囲が暗くて良かった。上手く笑えているか、分からなかったから。

『……じゃあ』
『あ、これ』
『え?』

 優太はずっと持っていた紙袋を私に差し出してきて、家族用のお土産だと聞いていたから、思わず『えっ、ふぇ?』と変な声が出てしまって口を閉じる。
 そっと袋に手を入れると滑らかな手触りがして、柔らかくて、思わず抱き締めたくなる物が目の前にあった。

『ウサウサだぁ!』

 家の前だと気付いた私は、また手で口をキュッと抑え、 周りをキョロキョロと見渡す。
 悩んで結局買わなかったぬいぐるみ。私が知らないところで買ってくれていたんだ。

『あ、ありがとう。大切にするから……』
 周囲は薄暗いだというのにカァァァと赤面していく顔を隠そうと、ウサウサに顔を埋める。
 上空に輝く星々はキラキラと輝いていて、これほど綺麗な景色は生まれて初めてみたのかもしれないと思った、あの頃。
 眠れぬ夜に何度も寝返りを打ち、抱き締めているウサウサと暗闇で目が合う度に胸がドキドキとして、また眠れなくて。
 そんな十七歳の秋。私は優太に恋していた。