さよならの記憶写真館

 暮れていく夕陽を眺めながらどこまでも情けないことを考えていると、下の玄関からガチャと音がしてタンタンタンと一定のリズムで階段を登ってくる音がする。
 慌ててベッドに飛び込むとドアをノックする音がして、「はーい」と返事をする。
 ……あ、ちょっと元気に声を出しすぎたかな?
 そう思った私は、布団を被る。

「ごめん、起こしちゃった? 具合、大丈夫?」
「……ううん、起きてたからー。ごめんね。どうだった? 写真とかあったら、見せてよー」
 不意に傷付くのが怖いから、あえて先に傷付こうとする。
 本当、いくつになっても臆病だね。

「あー、うん。遊園地に行ったんだー」
 渡された水色のデジカメを操作していくと、遊園地前のツーショットから始まり、ジェットコースター前、お化け屋敷前、昼ご飯のパークのフードに、チェロスを食べている場面、観覧車前に、観覧車中での景色と共に写っている澪と優太がいた。

 えっ、何これ?
 デジカメを操作する手は停滞していき、早く終わって欲しいと願ってしまうほどだった。

 射撃ではしゃいで、メリーゴーランドに二人に乗って、 ゴーカートでぶつかってキャアキャア叫んで、アヒルのボートを必死に漕いで、お昼ご飯なんて大人用のウサウサプレートに可愛いーって叫んでいた私って何?

 全身がブワッて熱くなるぐらいに並ぶ二人は大人っぽくて、優太と私が写ったものとは違った。
 その理由はやはり身長で、中学二年生で再会した時は同じぐらいだったのにそれから優太はぐんぐんと伸びていって、私はあっという間に追い抜かれて、見下ろされるようになった。
 気付けば頭一つ分ぐらいの違いが出て、おそらく十五センチ差があるだろう。
 あの頃は、オシャレしたら優太の横に並べるぐらいになれたと思い込んでいたけど違うね。
 澪との写真と見比べたら、高校生のお兄さんが中学生の子を遊びに連れて行ってくれているようにしか見えなかった。

「あ、そうそう。これお土産だから」
 ニコッと笑う澪が遊園地のロゴが入った小さな紙袋を渡してくれ、箱に入っていたのは髪飾りで、大人っぽいピンクのクリスタルがキラリと光っていた。

「可愛いー! ありがとう」
 美術の絵を描く時、髪を結うから。
 いつも飾り気のないゴムで人結びだったから、気にかけてくれたのだろう。
 本当にセンスが良い、澪らしいチョイスだ。

「あとこれは優太から」
 手渡されたもう一つの紙袋はA4サイズぐらいに大きく、やたら立体的に大きい。
 もしかしてこれってと思いながら紙袋の中に手を入れると柔らかな手触りがして、それはいつも私の側にいてくれた存在だった。
 滑らかな触り心地、フィットする大きさ、真ん丸な黒目、全身が淡いピンク、ウサギの独特の口元、頭から伸びる二本の長い耳。
 私がずっと大切にしていた、ウサウサのぬいぐるみだった。

「あー、これね。子供の国の敷地まで行って、子連れのお父さんお母さんに紛れて、並んで買ってくれたんだよー。あのお兄ちゃんウサウサ好きなんだーって女の子に指差されて、顔真っ赤になってたんだよねぇ。見てられなくて、私のだって言って入ったけど、ずーと俯いて黙ってて。男の子ってなんか変なことに気にするよねー」

 澪の嬉しそうな声に一切の返事が出来ない私は、もう会えないと思っていた友達に再会出来たように、そっと抱き寄せる。
 私の最期まで、寄り添ってくれていた友と。