さよならの記憶写真館

 十月上旬の秋晴れ。日差しがポカポカと暖かくて、柔らかくて。そんなお出かけ日和な当日、私は顔を顰めていた。

「ねぇ、本当に行って良いの?」
「……うん、ごめんねぇ。優太にも連絡入れておいたから。せっかくだから、隣の遊園地に行ってきたら?」
 ベッドで横になったまま、「いたた」と声を漏らして壁に顔を向ける。
 こっち向きの方が楽だと嘘を吐きながら、目を閉じて。

 頭がガンガンと痛くて、起き上がれない。
 ……と無理矢理な理由を作った。
 狙って熱なんか出せないし、風邪なんかひけないもんね。

「お土産、買ってくるからね」
「うん、ありがとう」
 顔を向けることなく手を振ると、ドアが静かに閉まり、カーテンを締め切っている部屋は無駄に明るい。

 今日は雲一つないほどの快晴で、気候も良かったからな。
 だから電気を消していたのに、見たくないものを見てしまった。
 スタイルの良さを引き立たせる白いTシャツ、細く長い太ももを引き立たせるデニムのショートパンツに、ハイソックス。
 ギャップを被った顔を覗くと、目がパッチリしていて、薄くファンデを塗って、爽やかなオレンジのチークとグロスをのせている、大好きな彼とデートに行く女子がそこには居た。

 ……何かの間違いで、三人で行くことにならなくて良かった。いや、本当に……。

 何の溜息か分からないものを吐き出し、見慣れた天井をただ見つめる。
 今日一日は、私が私をコントロールすることになっている。だって十七歳の私に戻ったら、優太と澪が遊園地に行っていることに耐えられなくて、一目散に駆け出してしまうだろうから……。

 いや、澪の姿に戦意喪失するかも?
 だって、服装がねぇ。
 ムダに買わなくて良かった。


 瞼を閉じると思い出すのは、十七歳の私。
 洋服タンスの服を全部出して、一つずつ着て鏡の前に立つけど、どれを着ても地味で、華がなくて。
 初めて買ったファッション誌の中は、みんなキラキラ輝いているのに、どうして私はそれに近付けないのだろうと悩んでいた。

『はぁー。何で私は、菜穂みたいに可愛くないんだろぉー』
『……ふぇ?』
 お菓子のポキッと折れる音と共に、菜穂の不意の声が返ってきた。
 学校の昼休み。お弁当を食べ終わり、お菓子をポリポリと頬張っている顔があまりにも可愛くて、思わず心の声が漏れてしまっていた。

『ごめん! なんでもないからぁ!』
『……優太くん?』
 ニヤニヤと笑う菜穂に連れて行かれたのは、あのショッピングモールだった。