さよならの記憶写真館

 虫の音が鳴る、秋の夜。
 決意を固めた私は澪の部屋をノックし、中に入れてもらう。
 空き部屋になる前の六畳の空間は懐かしく、落ち着いた雰囲気の木製ベッド、本棚に仕舞ってある陸上と美容の本、置いてある小物はどれも無地で私とは違う大人の部屋だった。

「何、お姉ちゃん?」
 シンプルな勉強机から振り返った澪は、変わらずのベリーショートに、陸上部を続けているからかスラッと細く長く、部屋着のスエットですら綺麗に着こなしてしまう。
 どうやら勉強していたようで、やはり市内トップの高校に通う人は勉強量も違うのだと今なら分かる。
 高校生になり、私より落ち着いた雰囲気を醸し出している澪がそこにはいた。

「えっ、子どもの国? 三人で? ……本当に、良いの? 一緒に行って?」
 三人で久しぶりに出掛けようと誘うと、先程までの落ち着いた雰囲気はなくなり、声を弾ませてくる。
 大きな瞳はキョロキョロと動き、艶のある口元は緩んでいた。

「うん、久しぶりに行こうよ! ……まあ、ウサウサに会いに行くのに付き合ってもらわないといけないんだけどねー。でもさ、他にアウトレットとかも行くし。優太も、澪に会いたいって言ってたからー」
 嘘は吐いていない。いつもの会話の中で、優太はよく「澪に会いたい」と言っていたのは本当のことだから。

「はぁー、良かった。……なんかさ、最近二人仲が良くって、入れなかったんだよねー」

 ドクンと鳴る心臓は、大きく脈打つ。
 自室の椅子に保たれ掛かり、大きく吐く息には、澪のはち切れんばかりの不安が詰まっているように思えた。

「それは……、同じ高校だから。バスの時間一緒なのに、別々に行くのも逆に変だねーってなっただけだし」
「うん。まあ、そうなんだけどねー。優太かぁ、最近会えなかったから嬉しいなぁ」
 遠くを見ていた目は私の方に向き、ニコッと笑って見せる。

「じゃあ、来週の日曜日だから」
「うん、ありがとうー」
 その言葉に返事が出来ない私は、部屋に戻ってドアを閉める。
 鏡に映るのはラフなTシャツとズボン姿の私で、部屋に溢れる可愛いキャラクター物、ハンガーにかけてあった制服も私服も私とは全然違う。細身でオシャレで、本当に姉妹なのか、私ですら疑ってしまうぐらいだった。

 ごめん、鈍感で。
 人への気遣いも出来ないなんて、致命的だよね私。