さよならの記憶写真館

 パシャ。
 オレンジ色に照らされる、学校前のバス停。
 そこに居るのは。

「優太」
 美術部が終わった帰り道、当たり前のように居る優太に声をかける。

「あっ、俺は今日も天体部で遅くなっただけで……」
「そんなの分かってるよ」
 部活がなければ三時五十二分、部活をすれば五時四十一分のバスになる。意味の分からない言い訳に、思わず笑みが溢れる。
 バスに揺られること三十分。見慣れた地元に帰ってきて、そんな私達を夕陽が待ってくれていたように私たちを照らしてくれる。

「ありがとうございました」
 いつものように運転手さんの前に通学定期を出し、バスの階段を降りると、優太はただ空を見上げている。
 私が前を歩くと優太はまた一定の距離を取り、無関係を装い歩いてくれる。
 だってここ大通りだし、同じ中学だった子の家とかあるし、そんなの見られたら……。
 だけど私はそんな時間が淋しくて、一秒でも一緒に居たくて。
 そんな思いで振り返ると、優太は私を見ていてくれていて、その目が優しかったからこそ、思い切って行動出来た。

「ねえ、一緒に帰ってくれない?」
「え?」
 突然振り返って近付いてきたかと思えば、唐突に変なことを言われた優太は、ただ瞬きを繰り返していた。

「……あ、何でもないのー」
 ハハッと軽く笑って見せ、冗談だよって駆けて行く。
 恥ずかしい。紅潮する頬を、茜色の空に影響されてそう見えるだけだと言い訳して、早歩きで狭い田舎道に続く横断歩道に向かう。
 押しボタンを押すも、なかなか青になってくれない歩行者用信号。これほど長い待ち時間はないと思っていると、その横に立つのは優太だった。

「……うん」
 さっきの返事だと理解すると同時に信号は青になり、同じ歩調で前に進む。
 肩が並ぶのは五十センチほど距離となり、一気に心の距離まで縮まったような気がした期末テストが終わった夏の始まり。
 優太の頬が赤く見えたのは、夕陽が赤く染まったからだろう。
 こうして私たちは、秘密の祠を卒業した。
 こっそりと会う、その関係を。