さよならの記憶写真館

 パシャ。
 記憶写真十枚目。次の場面は祠ではなく、家付近の大通りを一人で歩いていた。
 日差しの向き的に朝で、制服姿に学生鞄を持っていることから学校に通うためにバス停に向かっているのだろう。
 すると目の前には見慣れた影があって、それは。

「おはよう」
「あ、おはよう」
 田舎の町が、また桜色に染まる頃。中学生の時には滅多に通らなかった大道で、優太と顔を合わせる。
 紺のブレザーにグレーのズボンを履いていて、柔らかなふわふわ髪と赤のネクタイが春風によって揺れる。
 道の端で立っているのは私たち二人だけ。
 その横を、黄色い帽子とランリュックを背負い集団登校する小学生。見慣れた制服姿で、ポツポツと歩く中学生。自転車でスッーと通り過ぎて行く、見慣れない制服を着たおそらく高校生がやたら目につく。
 知り合いは居ないかと優太から一歩離れ、無関係を装い俯くと、ようやく待っていた青いバスが来てくれた。
 乗客は高校生と思われる制服姿のいつもの男女が五組に、今日は夫婦と思われる高齢者が前方に二人座っている。
 田舎ゆえにバスは一時間に一本しかなく、十八歳過ぎると免許を取得し、車を所持する大人がほとんど。
 一家庭、一台ではない。一人一台。通勤や買い物など、車がないと明らかに不便な地域。
 だから乗客は見慣れた人ばかりで、ラッシュの時間のはずなのに、座れないなんて一度もなかった。
 バスに乗り込むと、ようやく私のざわついた心は落ち着いてくれ、いつもの後席から二番目にそっと座る。優太も当たり前のように、その横を。

 高校二年生、優太が山方高校に入学した。
 空が大好きな優太は天体部がある山方高校に強く惹かれたらしく、受験して無事に合格。
 やはり一時間に一度しか来ないバスが嫌だったのか、この地域から通学するのは私たちだけみたい。
 同じバス停に、限られた本数。タイミングが合うのは当然で、それを理由になんとか自分の気持ちも落ち着かせられた。