さよならの記憶写真館

 パシャ。
 グラッと世界が揺れたら周囲に立っていた木々は青葉から桜の花びらに変わっていて、また同じ祠前に座っていた。

「花梨、入学おめでとう」
「ありがとう」
 花びらが舞う、木々の下。祠前で立ち尽くした私たちを照らしてくれる暖かな日差しに、桃色の柔らかな絨毯が季節を彩ってくれる頃。
 重たかったセーラー服を脱いだ私は、紺のブレザーに袖を通し、赤いリボンをキュッと結び、膝上のスカートにハイソックスを合わせていた。
 当時の流行りである、膝上スカートと紺のハイソックス。
 頑張ってオシャレしたつもりだったけど、優太はいつも自然体な美しさを目にしていると知っているからこそ、私に向けられる視線を直視出来なかった。

 今日は高校の入学式だったみたいで、そこで小学校の友達だった菜穂と念願の再会。
 真っ暗だった中学校生活を遠くから照らしてくれていたのは菜穂で、中学二年生の時は辛くてメールを返せなかったのにさりげなく近況報告をしてくれ、連絡が切れないようにしてくれていた。
 ようやく落ち着いた三年生になった頃にメールを返せるようになると、菜穂は何も聞かずに小学生の時と同じように関わってくれて、どれほど救われていたのだろう。
 久しぶりに会って、絵のことをいっぱい話して、まさかの同じ山方高校を受験すると聞いた時は二人で飛び跳ねるぐらいに喜んで、絶対合格すると意気込んで。そして今日、念願の同じ制服で入学式の日を迎えた。
 ただ菜穂との再会は未練との関連はなく、記憶写真はない。当然ながら飛ばされていく出来事で、優太に話した内容から思い出に浸ることしか出来なかった。
 ……あの場面を、もう一度体感したかったな。
 ためらいもなく互いに身を寄せ抱きしめ合ったあのフィット感は他になく、気兼ねなく笑い合える大切な友達だった。