さよならの記憶写真館

 それからどうにも身動きが取れなくなってしまった私は、本当の意味で彷徨う魂となってしまった。
 澪と優太の仲を取り持つ考えも、由衣から十四歳の私を守ろうともせず、ただ流されるまま二週間という時を過ごしていた。

「澪ぉー! ちょっと降りてきてー!」
 十二月十五日、夕食前の六時半過ぎ。期末テストが終わって冬休みが近づいてる頃、それは起こった。
 部活から帰ってきて気疲れからベッドでウトウトしていると、突如聞こえた大きな声。下にいるお母さんが二階の澪の部屋に向かって呼びかけているようで、夕食だと言う時と違って声は大きく、不穏な空気に包まれていた。
 ドアを開けバタバタと降りる音に隣の部屋である私の方まで緊迫感が伝わってきて、私まで部屋から出ていき階段を半分ほど降りていた。

「ごめんなさい。今日は部活があったので、一緒に帰ってないです」
「いえ、変わりなかったと思います」
 澪の切羽詰まった声が、ポツポツと聞こえてきた。
 普段より周りの出来事に関心がなくて、その最中に入ろうとしない私がどんどんと足を進めていく。
 なんだか胸騒ぎがして、すごく嫌な予感がして。

「本当にごめんねぇ、もうあの子ったら……」
 久しぶりに聞く声は優太のおばさんのもので、口調はいつも通りだけど明らかに息が上がっていて、動揺みたいなものを感じ取れる。
 ……何だっけ、この出来事?
 中学二年生。優太のおじさんおばさんとは変わらず交流はあったけど世間話するぐらいで、こんな切迫詰まって家に来ることはなかった……と思う。

「澪、優太くんが行きそうな場所に心当たりない? 私が探してくるから、奈緒子さんは家で待っててあげて」
 奈緒子さんはおばさんの名前で、お母さんが宥めるように声をかける様子から、ようやくことの重大さに気付いた。

 優太を……探す? まさか、居なくなったの!
 十四歳の私が玄関に駆け寄ると、そこには握り締めた手を口元を抑えているおばさんがいて、カタカタと震えているのは寒さからだけではないのだろう。
 澪は携帯で優太と連絡を取ろうとしているようだけど、「やっぱ繋がらない」と呟き、衣類掛けに引っ掛けておいたウインドブレーカーに素早く袖を通し、ファスナーをしっかり締めた。

「心当たりを探します! おばさんは警察に相談の電話をしてください!」
 マフラーを巻き、雪用の長靴を履いて、おばさん達の静止も振り切って、澪は駆け出してしまった。

 待って、一体何が起きてるの?
 どうして優太がいなくなってしまったの? 
 大体、こんな騒ぎ覚えてないし、中学二年生の時に家に帰れなくなったのは私の方だった。
 なんで優太の方がいなくなってしまうの?
 まるで私と運命を入れ替えたような出来事が、どうして起こるの?
 優太、どこにいるの? 何でいなくなっちゃったの? 優太……。