さよならの記憶写真館

『ごめんニャ、もっと早く優太の気配に気付いてればニャア』
「クロちゃん……。ううん、私が転けなかったら間に合ってたよ……」
 鈍臭さが、死んでまで影響するなんて。
 本当、嫌になっちゃうね。

「支配人さん、未来は変わりましたか?」
 あんな拒絶みたいな別れ方したんだから。きっと。

『はい。中学生以降の記憶写真が半透明になりました。これは未来が変わる前兆で、未来が確定した時に写真が姿を変えます』
 写真が、変わる……?
 どうゆうことかと思ったけど、そっか。
 記憶写真は過去に変えたことに対して、未来に矛盾がないように修正する力があるんだった。
 優太との再会を握り潰したから、あの日の記憶写真は消えて歴史から消失した。今は、私が優太を拒絶したから幼馴染として交流する未来はなくなり、記憶写真は矛盾がないように修正を計っているんだ。

『写真館の額縁に、四人で写る家族写真ありますよね? そこに写る花梨さんが澪さんに変わった時、過去修正は完了したと結論付けられます』
 ……えっ、待って、あの写真!
 そんな、だってあれは……。

「これから……、どうすれば?」
 頭を横に振り、唇を噛み締めて、グッと感情を押し込む。
 迷いを断ち切るためには突き進むしかない。
 そんな思いで、私はただ前を見る。

『優太さんと澪さんが結婚する未来に導く……、ことになりますね』
「私が離れたのに、二人は結婚する未来にならないのですか?」
『はい。もし未来が変わったなら、記憶写真も全て変わっています。半透明ということは、変わるかもしれませんし、変わらないかもしれません……。そんな不安定な状況と理解してください』
「そう……ですか」
 考えが甘かった。私との縁が切れたら二人が結婚する未来にすぐ切り変わると思っていたけど、そんな簡単な話じゃなかった。

 ……というか、優太は女の人のこと好きなのかな?
 あんまりそうゆうの興味なさそうっていうか、私と結婚したのだって、……っ!
 ピキピキと聞こえてくるひび割れ音と共に私の胸は鋭い痛みが襲ってきて、思わずその場にしゃがみ込んでしまった。
 あっ。これ、考えたらダメなやつだ。
 おそらくだけど、私の魂がまたひび割れを起こしているんだ。
 過去を変え過ぎたら魂が砕け散るとは聞いていたけど、精神的な傷も魂に影響するということなのかな?

『大丈夫ですか?』
「あ、はい……」
 とにかく突き進むしかない。
 優太が持ってきてくれた学生鞄を肩に掛けた私は、家に帰っていく。