さよならの記憶写真館

 期末テストが終わった七月上旬。
 祠前に座る十四歳の私は、入道雲が広がる空をただ見上げていた。
 ──なんだ、人間関係ってこんな簡単だったんだ。
 あまりにも醒めた心の声に、「そうだね」と返していた。

 本当、こんなつまらないものだったんだ。

 由衣が十一月に入部してくるまで、美術部の子たちとは日常会話できるぐらいの関係だった。
 由衣と仲良くなっても別に変わりなかったのに、年明けぐらいから美術部の子たちと話すことはなくなっていき、正直避けられているなと感じることはあった。
 きっと変なことをして怒らせてしまったのだろう、そう思うと怖くて、話しかけようとも謝ろうともしなかった。
 だけど、今回の盗作疑惑でやっと理由が分かった。
 みんなも先生も「また」と言っていた。
 由衣は前にも言ってたんだ。私に構想、盗られたって。
 いつか分からないけど、由衣を怒らせた時に。

 大人になって思うことは、この世は声が大きい方の勝ちという現実。
 人脈を作った方が正義で、根回し出来るかで決まる世界。
 人間関係は陣取り合戦とどこかで聞いたことがあったけど、どこか納得だった。

 だってさ、真面目に頑張ってきても、誰も私を信じてくれなかったじゃない。
 裏でコツコツ頑張っても、当たり前だけど誰も評価なんかしてくれなかった。
 神様は見てくれていると信じたこともあったけど、じゃあなんで病気になってしまったのかとか、意味分からないし。
 大切なのは、頑張りをいかにアピール出来るか。
 周りをいかに味方につけるか。
 そこを疎かにした私は、いざという時に助けてもらえる存在ではなく、コミュニティの敵となってしまう。
 そのことに気付かなかった、自分が悪いのだから。
 だから、これでいい。いい加減、物事というものを理解しなよ、三十二歳の私。
 十四歳の私の方が、よっぽど大人じゃない?
 平坦な人生を送りたいなら、時には我慢しないといけないことだってあるんだから。

 過去の私も言いなりになれば良かったんだね。そしたら、あんな苦労しなくて済んだのに。