さよならの記憶写真館

『……花梨さん、少しよろしいですか?』
 そろそろ次の場面に切り変える話だろうと身構えたけど、私の気持ちが落ち着くまで待ってくれるみたいで、優しい支配人さんの声にどこか力が抜けていく感覚がする。 
 また由衣の悪声を聞かないといけないと思うと、大人の私すら削られていくものがあった。

『過去修正のことなんですけど、まだ未来は変わっていないようですね』
 えっ、どうして? 優太と再会した過去を消したのに!

『確かに、記憶写真の四枚目である優太さんと花梨さんが祠前で座っている写真は消え、お二人の再会は歴史上消失しました。しかし、その後の写真は変化ありません。……おそらくですが、優太さんと花梨さんはまだ運命により繋がっています。因果というのは、一つだけではないですからね』

 ……優太と、私が……?
 ひび割れたように痛かった魂がポカっと温かくなり、その隙間をうめてくれたような感覚に包まれていく。
 ……って、何考えているの? 隣人で幼馴染だから環境が備わっているだけで、優太と運命で繋がっているのは私じゃないのに。

『ですから今後は、優太さんと接点を持ちそうになったら現在の花梨さんに主人格を変えて関わりを断つ、という対処法でいきましょう』
 お願い、します。

 眠れない十四歳の私は何度も寝返りを打ち、深く重い溜息を吐く。
 寝れない、過去の私も眠れなかったな。
 色々と辛くて、優太との再会が嬉しくて。

 ……だけどあの再会はなくなり、これからは私が知っている未来ではなくなってしまった。
 優太との因果が他にあるということは何がキッカケで再会するか分からないし、それに由衣とのことだって変わっているかもしれない。
 だけど私がやることは、優太と関わらないことだ。どれほど辛い未来が待っているとしても。