さよならの記憶写真館

 みんなが帰った後、いつもの準備室で気持ちを落ち着かせていると、由衣がクスクスと笑いながら部屋に入ってきた。みんなと帰ったはずなのに、わざわざ戻ってきた行動力に、ただ力無く溜息が漏れる。
「花梨さぁ、そんなんでコンクールとか間に合うの?」
「出来るよ、まだ時間あるし」
 目を鋭くし、強い目力で睨みつける。
 今出来る、僅かながのやり返し。
 返す言葉は、あの頃より強くなったかもしれない。

「って言うかさー、花梨の人生ってもうとっくに詰んでるしー。私なら、一回死んで人生やり直すレベルだわー!」
 ハハハッと手をパチパチと叩いたかと思えば、準備室から出て行った。
 
 グラッと揺れたような景色を戻そうと瞬きを繰り返し、久しぶりに地毛をギュッと握りしめる。
 あの日、逃げて良かったな……。じゃなかったら、ここまで言われていたよ。
「というか、逆にすごいなぁ。友達にそこまで言う?」
 思わず出た言葉はあまりにも重く、声なんか裏返ってしまって鼻を啜る。
 はぁぁぁ……と溢した溜息と共に、余計なものまで落ちてしまいそうで、窓から見える茜色の夕陽に顔を向ける。

 当時はそうゆう概念も言葉もなかったけど、今なら分かる。
 由衣はおそらく、フレネミーってやつだ。

 自分より格下だと認定した相手に友達になろうと近付いて、言葉や態度で言いなりにさせる。相手が拒否の姿勢をみせてきたら、周りを味方にして孤立させる。
 こうやって相手、……私が逆らえないようにもっていくんだ。

 これに気付いたのは大人になってからで、中学の時に起きたことは全て仕組まれていたんだとようやく理解出来た。
 こっちの意思を尊重してくれない相手とは離れるべき。
 その言葉に、あの時の判断は間違っていなかったのだと救われた。

 だけど、当時の私は自分が悪いと毎日悩んでて、中学生の頃の悪夢なんて何度見てきただろう?

 フレネミーの何が一番怖いかというと、目的の為に手段を選ばないという合理的な理由があるわけではなく、ただ相手を困らせて笑うという短絡的な考えから行動していることだ。
 だから、終わりがくる時は二つしかない。
 離れるか、……潰されるか。