さよならの記憶写真館

「大きくなったら、秘密基地で夕日を見ようね」
 三枚目の記憶写真に写し出されていたのは、グスグスと泣きながら小さな手を握り合い、未来に約束した場面だった。
 澪と優太より一学年上の私は一足先に卒園することになり、まるで二人で一つみたいだった優太と私は、卒園式の日に泣き明かした。
 一つ差だから、たった一年だけなのにね。でも子ども時代には、その一年は長く重すぎる壁だった。


『えー、ウソだぁー!』
『ホントだよぉー! だって、麗美ちゃんかそう言ってたんだもーん』
 三人で過ごす、秘密基地の中。
 優太と澪が声を上げて笑っていても、私は何のことか分からず一瞬の間が空いてしまう。

『あー、今日さぁ』
『レミちゃんって子がねー』
 二人は話についていけない私にも話してくれるけど、その時の空気感とか、その子が誰かも分からないのに面白くないよ。
 だけどそんなこと言えるわけもなくて、私はいつも面白いって笑ってた。

 優太は年長になった頃からよく話し、運動も出来るようになったみたいで、遊戯室の隅っこで座っていることもなくなったらしい。
 いやもちろん、その方が良いし。私も卒園の頃に、優太が一人にならないか心配していたけど、なんか淋しくて。

 小学校は、保育園の延長みたいに友達が出来なかった。
 保育園の頃に戻りたいな。
 そう願っても時間は戻らないと分かってたから、だから早く一年が過ぎて三人同じ学校に通いたい。
 そんなことを願っていた。

 だけど私は知らなかった。
 環境によって、人間関係はここまで変わっていくものだったなんて。


『優太、手を繋いで歩こっ!』
 小学二年生になった時、二人は入学してきたけど、その形は変わっていた。
 私たちが住んでいたのは田舎の町で、小学校までは徒歩四十分の距離だから集団登校と決まっていた。
 だから体力がない優太と手を繋いで歩くのは別に変じゃなくて、澪は親切心から言ってると分かってるし、だけど。
 風邪も引いてないのに、喉が焼けるような痛みがして。
 胸がザワザワとして、二人の繋がれた手を無理矢理解きたい衝動に駆られて、私は。
 小学二年生で初恋を自覚し、そして失恋を悟った。
 だって、二人の話す内容とか、歩く感じとかがピッタリで、私はもう中に入れないんだなって嫌でも実感させられるぐらいだったから。

 運命によって結ばれている二人。
 幼稚園の頃に聞いた言葉が蘇り、私には入り込む隙間なんてないのだと嫌ってぐらいに思い知らされた。


『おねーちゃん、優太が秘密基地行こーって!』
『あ……、今日は宿題多いから、二人で行って』
 学校から帰って来てからすぐ、宿題の計算ドリルをリビングで広げてやり始める。
 まあ、嘘じゃなかったんだけどね。
 私は澪みたいに勉強得意じゃなかったし、宿題だけで時間がかかり過ぎる、不器用な方だったから。

 こうして私たちは成長していき、澪は小三でスポ少の陸上に加入。優太は中学年くらいから体力が付いてきて、近所の男の子たちと遊ぶようになり。私は小五で同じクラスになった菜穂(なお)という絵を描くのが好きな子と友達になり、幼馴染の三人は少しずつ離れていくようになった。