心が読める私と秘密を知った彼

 薄ら目を開けると、そのヒリつきと首の痛さに気付く。
 ライトのような灯りに照らされる為か周辺は明るく、遠くは薄暗い。ゴーと聞こえる音は車? あれ、こんなに大きな音だっけ? まるで、外に居るみたい……。外!
 目をパチっと開け、頬に当たっていたであろう温もりに気付く。そこには、こちらを見ている長谷川くん。
「ご、ごめんなさい!」
 うそ。うそ。うそ。
 私、あのまま寝ちゃったの!
 長谷川くんの肩で!
 あんなに大声まで出して!
 自分の醜態が信じられず、でも迷惑かけたのは間違いなく。ただ、あたふたとしてしまった。
「ん!」
 差し出されたのは、さっき買ってくれたカフェオレ。喉もヒリヒリしていたから、丁度良かった。
 鞄にしまっておいたスマホを見れば、七時過ぎ。私、二時間以上寝ていたのー!
「本当にごめんね! 私!」
「帰るぞ」
 豪快に立ち上がった長谷川くんは、今は前ではなく、横をゆっくり歩いてくれる。

「……どうして長谷川くんは、私が心読んでると分かったの?」
 気付けば、その大きな背中にそう問いかける自分が居た。
 その途端に足を止めこちらに振り返ってきた顔は険しく、明らかに表情を変えていく。
「たまたま。そうゆう映画あるだろ?」
「……そう」
 私は、逸らした目を見逃さなかった。

「あれ? どこ行くの?」
 彼の家に着いても、通り過ぎる姿に声をかけるが何も返してくれない。
 意味が分からず、共に歩くとそこは。
「私の家?」
「じゃあな!」
 私から自分の鞄をスッと取り上げ、早足で去っていく。
 その姿に、送っていくと言ってくれたら良いのにと思いつつ、その不器用さにどこかクスッと笑えてくる。
 ……明日、学校どうしよう。
 本当なら絶対行きたくないけど。私は。
「長谷川くん!」
 気付けば大きな声で、その背中に叫んでいた。
「あ?」
 あまりにも遠くて、絶対聞こえないと思ったのに、振り向いて返事してくれたことにただ驚いた。
「明日も迎えに行くからー!」
 私は心から笑い手を振る。すると。
 振り返してくれた。
 あの硬派な長谷川くんが?
 また知らない彼の姿を知り、心がホワッと温かくなる気持ちを知った。