「ね、ねえ、長谷川くん? 学校行かないとだめだよ! 遅刻してしまうよ!」
「別に良いだろ? お前、一年の頃からバカ真面目に毎日通っているんだし、一日ぐらい」
そう言い、歩く速度を一向に変えようとしない。
「だめだよ! 学校は行かないと!」
「どうしてだよ? まだ二年だし、受験も先だろ! 一日ぐらい休んでも何も変わらねーよ!」
「……でも」
私は俯き、黙り込んでしまう。
そうだよね。別に良いよね。それなのに、どうして私はその一歩が踏み出せないのだろう。
学校に行かないと、陰口を叩かれるから?
でも、心で思われているから一緒だよね。
日常を壊したくないと願っているから?
ううん。違う。心のどこかで、こんな日常壊れたら良いと願っていた。
『これ以上、厄介かけないでよね』
不意にその言葉が脳裏に過ぎる。
そう言ったのは。
キリキリキリ。
薬で落ち着いたはずの胃は、またキリキリとし始める。
痛みの中、色々な記憶が巡ってゆく。そこで思い浮かんだのは、両親の姿だった。
お願い、お父さん。お母さんに怒らないで。ちゃんと学校に行くから。
「鈴木に任せちまえよ。お前にばっか押し付けるんだからよ!」
「……え?」
長谷川くんが話しているのは、委員会の仕事のことだ。
鈴木くんは男子の委員長だけど、二年生の代表になったと知って明らかに溜息吐いてたし、こいつに任せなければ良かったって思っているのを知ってるから頼れないでいる。
「お前さ」
「何?」
「別に」
すると長谷川くんは くるっと方向転換させ、歩いてきた道を戻っていく。
そっちは、学校?
あ、私がうるさいから。ウジウジしてるから、嫌だと思ったよね?
そう思い身構えるけど、長谷川くんからは一向に何も聞こえてこない。
いや、正確には聞こえてくるけど、それは「暑い」、「ダルイ」、「学校めんどくさい」ばかりで私への感情は一つもなかった。
そういえば長谷川くんは、私のこと考えたことあったっけ?
そう考え、チラッと彼を見る。
ズンズンと歩いていく彼からは、具体的な声が聞こえたことはなく、いつも「ダルイ」、「眠い」ばっかりだった。
それは同じクラスだった一年生の頃から。
人に興味ないのかな。
みんな、こうだったら良いのにな。
そう思いながら、ゆっくり歩くその背中を見つめた。
荷物持ちなのに、鞄持たなくていいの?
もしかして、気を使ってくれている?
そう思いながら、後ろから付いて行く。
その言葉のおかげか、学校に着く頃には痛みはなくなり、授業を受けることが出来た。いつも通りノートの書き写しや買い出しをこなし、気付けば休み時間も昼休みも私は一人。
だけど淋しさより安堵の感情が溢れてくる私は、やはり性格が悪いのだと思う。
「別に良いだろ? お前、一年の頃からバカ真面目に毎日通っているんだし、一日ぐらい」
そう言い、歩く速度を一向に変えようとしない。
「だめだよ! 学校は行かないと!」
「どうしてだよ? まだ二年だし、受験も先だろ! 一日ぐらい休んでも何も変わらねーよ!」
「……でも」
私は俯き、黙り込んでしまう。
そうだよね。別に良いよね。それなのに、どうして私はその一歩が踏み出せないのだろう。
学校に行かないと、陰口を叩かれるから?
でも、心で思われているから一緒だよね。
日常を壊したくないと願っているから?
ううん。違う。心のどこかで、こんな日常壊れたら良いと願っていた。
『これ以上、厄介かけないでよね』
不意にその言葉が脳裏に過ぎる。
そう言ったのは。
キリキリキリ。
薬で落ち着いたはずの胃は、またキリキリとし始める。
痛みの中、色々な記憶が巡ってゆく。そこで思い浮かんだのは、両親の姿だった。
お願い、お父さん。お母さんに怒らないで。ちゃんと学校に行くから。
「鈴木に任せちまえよ。お前にばっか押し付けるんだからよ!」
「……え?」
長谷川くんが話しているのは、委員会の仕事のことだ。
鈴木くんは男子の委員長だけど、二年生の代表になったと知って明らかに溜息吐いてたし、こいつに任せなければ良かったって思っているのを知ってるから頼れないでいる。
「お前さ」
「何?」
「別に」
すると長谷川くんは くるっと方向転換させ、歩いてきた道を戻っていく。
そっちは、学校?
あ、私がうるさいから。ウジウジしてるから、嫌だと思ったよね?
そう思い身構えるけど、長谷川くんからは一向に何も聞こえてこない。
いや、正確には聞こえてくるけど、それは「暑い」、「ダルイ」、「学校めんどくさい」ばかりで私への感情は一つもなかった。
そういえば長谷川くんは、私のこと考えたことあったっけ?
そう考え、チラッと彼を見る。
ズンズンと歩いていく彼からは、具体的な声が聞こえたことはなく、いつも「ダルイ」、「眠い」ばっかりだった。
それは同じクラスだった一年生の頃から。
人に興味ないのかな。
みんな、こうだったら良いのにな。
そう思いながら、ゆっくり歩くその背中を見つめた。
荷物持ちなのに、鞄持たなくていいの?
もしかして、気を使ってくれている?
そう思いながら、後ろから付いて行く。
その言葉のおかげか、学校に着く頃には痛みはなくなり、授業を受けることが出来た。いつも通りノートの書き写しや買い出しをこなし、気付けば休み時間も昼休みも私は一人。
だけど淋しさより安堵の感情が溢れてくる私は、やはり性格が悪いのだと思う。



