心が読める私と秘密を知った彼

「ただいま」
 おかえりと言ってくれる家族は居ないけど、思わず声が出ていた。
 温かな気持ちのまま宿題をして、今日の夕飯と、明日のお弁当に回せる食事を作る。前はお父さんとお母さんの分も作っていたけど、止めた。その理由は……。
 ピコン。
 鞄に入れっぱなしだったスマホが鳴り、私は慌てて取り出す。

「……長谷川くん?」
 そう言えば昨日、交換条件を出された時にメッセージアプリを交換していたんだった。
 期待通りにならなかった落胆と、思いがけない人からのメッセージにそわそわしながら、スマホを操作し内容を確認する。

『お袋のこと誰にも言うなよ』
 スマホの液晶パネルに表示されたのは、その一文のみ。ぶっきらぼうなメッセージに、私の口元はまた緩んでしまう。
『分かってるよ。良いお母さんじゃない?』
 そう送るとすぐにピコンと鳴り、スマホが新たなメッセージを通知してくれる。
『うるせー』
 その裏表もない内容に、私はまたクスッと笑ってしまう。そして。

「羨ましいよ。私には……」
 思わず、そう呟いてしまっていた。
 家を見渡せば置いてある物は私のばかりで、まるで一人暮らしの家みたいなリビングに、気付けば小さく溜息を漏らしてしまう。
 お父さん、お母さん。今度はいつ帰ってくるのだろう。