駄菓子より甘い瀬野くん

 前後に並んでカウンターのレジに持っていく。先に前にいた瀬野くんが支払いを済ませた。
「次」
「は、はい」
 木のカウンターの上に青色のミサンガを置く。すると土井さんが丁寧に袋の中に梱包してくれる。
「はい、4000円」
 ――うぉう、やっぱり高い……。
 顔に出ていたのか、土井さんに「糸も良いものを使ってるし、一本一本手作りだからな。これくらいになるんだ」と言われてしまった。
「わ、わかってます。凄く、綺麗なので」
 土井さんが一本一本こだわって作っているのは、見ているだけでわかる。多少高いが、このミサンガなら適正価格だろう。
 財布からお金を取り出しトレーの上に置くが、土井さんはなぜかそれに手を付けず俺の顔をジッと見てきた。
「あ、あのぉ……?」
「……彰人と仲良くなった理由がわかった気がするよ」
 そう言って、トレーのお金を数え「ピッタリ。毎度あり」と袋を渡してくれる。
 ――いや、俺と瀬野くんが仲良くなった理由ってなに?俺が気になるんですけど!?

 聞こうとしたが、その瞬間後ろから「買えた?」と瀬野くんに話しかけられた。土井さんはもう別の作業をしている。完全にタイミングを失った。
 ――まあ、いっか。 そこまでして聞きたいわけでもないし。

「うん、買えたよ」
「じゃあはい、これは原田の分。ちょっと早い誕生日プレゼント」
「ありがとう。俺からも、ちょっと遅い誕生日プレゼント」
 袋をお互いに交換し合う。
「ねぇ、開けてみてもいい?」
「もちろん、もうそれは原田のだから」

 袋を開けて、中に入っていた黄色いミサンガを顔の高さまで持ち上げる。すると、丁度目の前にいる瀬野くんの髪と重なった。
 
「この色、瀬野くんの髪の毛みたいで、すっごく綺麗だね」

 瞬間、笑顔のまま瀬野くんがビシッと固まった。まるで石みたいに。
「瀬野くん?」
「——っもぉ~! 原田ってホントに……いや狙ってないところが良いんだけどさぁ!」
「へ? なになに、どうしたの……?」
 急に顔を手で覆い狼狽える瀬野くんに驚いてしまう。
 それと同時に、後ろから「わっはっは」と豪快な笑い声が聞こえてくる。土井さんだ。土井さん、あんな声出せるんだ。さっきまで声カッスカスだったのに。

「原田、お前最高だなぁ! 彰人がイチコロじゃねぇか」
「土井じい黙ってッ!」
 瀬野くんの叫びに土井さんが更に笑う。
 何が起こっているのか、俺だけがわかっていなかった。

 なぜか顔を真っ赤にした瀬野くんがよろよろとおぼつかない足取りでこちらに近づいてきて、俺にギュッと抱きついてくる。肩に頭をグリグリされて、少しくすぐったい。
「もう原田が怖いぃ〜」
「な、なんで!?」
「外さないから」
「なにが!?」
 小さく呟かれた言葉は意味不明だった。
 ――外さない? なにを? てか俺、今なんかした?
 瀬野くんがどうしてこうなっているのかはわからないけど、とりあえず慰めようと背中に手を回して優しくさする。

 すると瀬野くんがゆっくりと顔を上げ、真剣な表情で「それ」と呟いた。

 ――だから、それってなに!?

 ぽかんと口を開ける俺に、また肩に頭を乗せぎゅうぎゅうと俺を抱きしめる瀬野くん、そしてそれを見て爆笑している土井さんというなんともカオスな状態は、それから十分ほど続いた。


◇◇◇

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☆次回第17話は、10月下旬頃に投稿予定です☆