慌てつつ周りの商品に当たらないよう気をつけながら着いていくと、瀬野くんは店の一番奥にあるコーナーの一角をジッと眺めていた。
「これとさっきのスニーカーで迷ってるんだけど」
「あぁ〜」
朝言っていた『少しお高めのボールペン』だろう。
後ろから覗くと、ボールペンの入った細長い箱がいくつか並んで置かれていた。瀬野くんは真ん中にあったボールペンをそっと手に取る。
光沢感のある黒いボディーに、金の口金とクリップ。
ノック部分はなく、ボディーをひねると口金が出る仕組みらしい。見るからに高級なボールペンに、思わず「おぉ」と感嘆の声が漏れてしまう。
「かっこいいでしょ?」
「うん、かっこいい」
「だから迷うんだよな〜」
瀬野くんはボールペンを目線の高さまで持ち上げ、ジーッと見つめる。眉間に皺が寄るくらい真剣に見つめたあと、急にクルリと振り返ってカウンターの方へ歩き出した。
「……よし、土井じいに相談してくる。ちょっと待ってて!」
「うぇっ!? ちょ、待って——」
咄嗟に手を伸ばすも、Tシャツの裾を掠めるだけだった。あっという間にカウンターに行ってしまった瀬野くん。俺はその場で縮こまった。
瀬野くんは『ちょっと待ってて』と言った。
よし、大人しく待っておこう。動くのは怖い!
そんなわけでその場に留まったわけだが、五分もしたら飽きてしまった。カウンターでは未だに瀬野くんと土井さんが二人で話し込んでいる。
俺は細心の注意をはらいながら、少しだけ周りの商品を見てみることにした。
軽く見渡すだけでも様々な商品が目に入ってくる。ボールペンやキーホルダーだけではなく、手帳やカードケースに小物入れ、はたまたイヤリングなどのアクセサリー類まで。
——さっきは値段に驚いて頭からずっぽ抜けてたけど、これを全部手作りって凄いよな〜。
顔を近づけてよく見てみると、ひとつひとつが丁寧に巧妙に作られていることがわかる。これは高くても仕方がない。というか、相応の値段だったのだろう。
納得しながらゆっくりと目線を移動させる。
その時、一つのパスケースと目が合ったような気がした。
——あ、これとか横井くん使ってそう。
淡い水色の、皮のパスケース。
緊張しながら恐る恐る手に取り、表面をそっと撫でてみる。柔らかな触り心地は何故かとても肌に馴染んでしっくりときた。
たぶんこのパスケースが目に入ったのは色のせいだ。透き通るようなその色は、横井を初めてみたときに感じた柔らかくて爽やかなあの雰囲気を彷彿とさせた。
——これ、いいなぁ。
なんだかグッと惹き込まれてしまった。
財布を確認すると、きちんと値段分のお金があった。
この二ヶ月間バイトを頑張った自分をこれほど褒めたくなったことはない。よくやった、俺!
パスケースは俺の中で一気に誕プレ候補一位に躍り出た。
とにかく『候補』ができたことにホッと安堵の息を吐く。今までは何を買えばいいのかすら分からなかったから、候補の一つもなかったのだ。
渡したい物を一つ見つけることができた、それだけで心に少し余裕ができる。
安心すると、視界が一気にブワッと広がった気がした。横井の誕生日まであと少ししかない。自分が無意識のうちに『早く決めないと』と焦っていたことに気付いた。
その不安がなくなって、心が軽くなったからだろうか。急にパスケースの隣にあったミサンガが目に入ってきた。ミサンガなんてあったんだ……。
「これも綺麗だなぁ〜」
「何が?」
「わっ!? せ、瀬野くん」
真後ろから急に話しかけられて心臓が飛び上がる。瀬野くんは俺の手元を見て首を傾げていた。
「これ、ミサンガ?」
「うん、綺麗でしょ」
細い糸が何本も連なり、それが三つ編みで編み込まれている。糸も良いものを使っているのだろう。艶やかなそれは光に反射して輝いて、とても綺麗だった。
「確かに綺麗だな。欲しいの?」
「いや、欲しいというか……見てただけ、かな」
「買ってあげようか?」
「……なんで?」
え、なんで急に?
さすがに申し訳ないし、買うとしてもちゃんと自分で買うけど。
「んー、早めの誕生日プレゼントとか? 原田の誕生日って九月でしょ」
「え」
「9月12日だよね。あれ、違ったっけ?」
「合ってる、けど——なんで知ってるの!?」
当たり前のように俺の誕生日を言い当てられて、頭の中は驚きと困惑で埋め尽くされる。
——なんで知ってるの? 瀬野くんには誕生日を伝えてなかったはず……。え、本当になんで知ってるの!?
驚きに染まった顔を見て、瀬野くんがクスリと笑った。
「原田がみなとの誕生日知ったのと一緒。メールに誕生日設定してるでしょ? プロフィール画面から見れるんだよ」
「……あ」
なるほど、確かにスマホを買った時にメールの初期設定で誕生日を入力した気がする。俺が横井や長谷川の誕生日を見れたように、瀬野くんも俺の誕生日を確認できたというわけか。
そう考えていた拍子に、一つ思い出したことがある。
「長谷川くんの誕生日は2月22日だよね」
「おー、よく覚えてるな」
「覚えやすかったから。……ねぇ、瀬野くんの誕生日はいつなの?」
俺の問いかけに、瀬野くんは少しだけ目を見開いた。まるで、聞かれることが予想外だったかのように。
横井の誕生日を知った日の翌日、俺は瀬野くんと長谷川のプロフィールを開いて二人の誕生日もしっかり確認していた。
長谷川は2月22日としっかり表示されたのに対して、瀬野くんは『非表示』と書かれており誕生日を見れなかったのだ。
何度か聞こうとして——躊躇ってしまった。
非表示にしているということは、誕生日を知られたくないのかと思って。
「瀬野くんがプレゼントをくれるなら、俺も、瀬野くんに誕生日プレゼント渡したい」
でも今この流れなら、瀬野くんも誕生日を教えてくれるかな。
一縷の望みをかけて聞いてみるが瀬野くんの視線は俺を捉えたままで、一向に口を開いてくれなかった。
「あ、でも教えたくないなら、別に無理にとは言わないんだけど。その、で、できればというか……」
やっぱり嫌なこと聞いちゃったかな。不安になって顔の前で手を振りながら弁明すると、瀬野くんが焦ったように「大丈夫だよ」と落ち着かせてくれる。
「ごめんごめん。誕生日聞かれると思ってなくてびっくりしちゃっただけで、嫌とかじゃないから」
「そっか、良かった」
「うん。——俺の誕生日はね、4月2日」
「……過ぎてるじゃん!」
「ははっ、実はそうなんだよね〜。だから俺、原田よりちょっとだけお兄ちゃんなんだよ?」
いたずらっぽくウインクをしてくる瀬野くん。似合うな……って、今はそんなことはよくて!
「せ、瀬野くん! 何が欲しい!?」
「うおっ、急にどしたー?」
「どしたーじゃないよ! ぷ、プレゼントなにがいい!?」
「待て待て原田、落ち着いて」
宥めるように頭を撫でられる。なんだか弟扱いされてるような気がして、つい唇を尖らせてしまう。
「俺、瀬野くんにもちゃんと誕生日プレゼントを渡したいんだ。欲しいものがあるなら、言って欲しい」
「かわいい……じゃなくて。原田はさ、これが欲しいの?」
これ、といって瀬野くんがミサンガの乗った皿を指さす。
「お、俺の欲しいものじゃなくて——」
「いいから。これ欲しいの?」
俺は瀬野くんの欲しいものが聞きたいのに……。瀬野くんの押しに負けて素直に頷く。そんな俺を瀬野くんは凄く優しい笑みで見つめてきて、ミサンガを一つ手に取った。
「じゃあ俺もこれがいいな。原田とお揃いの物が欲しい」
「お揃い?」
「そ。俺は原田の分買うから、原田は俺の分を買って?」
な、なるほど?
用はプレゼント交換ということか。少し遅めの誕生日プレゼントと、少し早めの誕生日プレゼント。
「それなら、わかった」
「やった! 原田、俺の色選んでよ」
ミサンガは色が何種類かある。
赤・青・黄・緑・紫——他様々な色があるなかで、俺は迷わずにとある色のミサンガを取った。
「これ……」
「青?」
「うん。瀬野くん、サッカー部の練習着が青色でしょ? 初めて見た時、金髪と相まって凄く似合ってるなって思ったんだ。あと、瀬野くんラムネ好きだし、爽やかキラキラ〜って感じだし……」
色々話したが、つまりは俺から見た瀬野くんの印象だ。
恐る恐る瀬野くんの反応を見ると笑っていたので、嫌いな色とかではなさそうでホッと胸を撫で下ろす。横井の誕プレといい、人の物を選ぶという経験がほとんどないからどうしても緊張してしまうのだ。
すると、瀬野くんも俺と同じように迷わず一本のミサンガを取る。
「じゃあ原田のは……これ!」
「黄色?」
それは、輝くような黄色のミサンガだった。
「原田の下の名前って『優しく輝く』で優輝だろ?」
「よ、よく漢字まで覚えてるね」
それに、急に「優輝」って呼ばれて少しドキッとしてしまった。新鮮すぎる。
「そりゃ、原田にピッタリな名前だから。優しくて、真っすぐで、暖かいお日様みたい。だから黄色」
「あ、ありがとう……」
名前を褒められるのなんて初めてだ。気に入っている名前だし、なんだか凄く嬉しい。
それに、なんだか物凄く褒めてもらった気がする。
勝手に口角が上がってしまう。ニヤけた顔を見られたくなくて下を向くと、瀬野くんが俺の手を握りちょんちょんと引っ張ってきた。
「お互いに決まったし、とりあえずお会計行こ」
「うん」
深〜く深呼吸し、顔を整える。よし、大丈夫。ニヤけてない。
「これとさっきのスニーカーで迷ってるんだけど」
「あぁ〜」
朝言っていた『少しお高めのボールペン』だろう。
後ろから覗くと、ボールペンの入った細長い箱がいくつか並んで置かれていた。瀬野くんは真ん中にあったボールペンをそっと手に取る。
光沢感のある黒いボディーに、金の口金とクリップ。
ノック部分はなく、ボディーをひねると口金が出る仕組みらしい。見るからに高級なボールペンに、思わず「おぉ」と感嘆の声が漏れてしまう。
「かっこいいでしょ?」
「うん、かっこいい」
「だから迷うんだよな〜」
瀬野くんはボールペンを目線の高さまで持ち上げ、ジーッと見つめる。眉間に皺が寄るくらい真剣に見つめたあと、急にクルリと振り返ってカウンターの方へ歩き出した。
「……よし、土井じいに相談してくる。ちょっと待ってて!」
「うぇっ!? ちょ、待って——」
咄嗟に手を伸ばすも、Tシャツの裾を掠めるだけだった。あっという間にカウンターに行ってしまった瀬野くん。俺はその場で縮こまった。
瀬野くんは『ちょっと待ってて』と言った。
よし、大人しく待っておこう。動くのは怖い!
そんなわけでその場に留まったわけだが、五分もしたら飽きてしまった。カウンターでは未だに瀬野くんと土井さんが二人で話し込んでいる。
俺は細心の注意をはらいながら、少しだけ周りの商品を見てみることにした。
軽く見渡すだけでも様々な商品が目に入ってくる。ボールペンやキーホルダーだけではなく、手帳やカードケースに小物入れ、はたまたイヤリングなどのアクセサリー類まで。
——さっきは値段に驚いて頭からずっぽ抜けてたけど、これを全部手作りって凄いよな〜。
顔を近づけてよく見てみると、ひとつひとつが丁寧に巧妙に作られていることがわかる。これは高くても仕方がない。というか、相応の値段だったのだろう。
納得しながらゆっくりと目線を移動させる。
その時、一つのパスケースと目が合ったような気がした。
——あ、これとか横井くん使ってそう。
淡い水色の、皮のパスケース。
緊張しながら恐る恐る手に取り、表面をそっと撫でてみる。柔らかな触り心地は何故かとても肌に馴染んでしっくりときた。
たぶんこのパスケースが目に入ったのは色のせいだ。透き通るようなその色は、横井を初めてみたときに感じた柔らかくて爽やかなあの雰囲気を彷彿とさせた。
——これ、いいなぁ。
なんだかグッと惹き込まれてしまった。
財布を確認すると、きちんと値段分のお金があった。
この二ヶ月間バイトを頑張った自分をこれほど褒めたくなったことはない。よくやった、俺!
パスケースは俺の中で一気に誕プレ候補一位に躍り出た。
とにかく『候補』ができたことにホッと安堵の息を吐く。今までは何を買えばいいのかすら分からなかったから、候補の一つもなかったのだ。
渡したい物を一つ見つけることができた、それだけで心に少し余裕ができる。
安心すると、視界が一気にブワッと広がった気がした。横井の誕生日まであと少ししかない。自分が無意識のうちに『早く決めないと』と焦っていたことに気付いた。
その不安がなくなって、心が軽くなったからだろうか。急にパスケースの隣にあったミサンガが目に入ってきた。ミサンガなんてあったんだ……。
「これも綺麗だなぁ〜」
「何が?」
「わっ!? せ、瀬野くん」
真後ろから急に話しかけられて心臓が飛び上がる。瀬野くんは俺の手元を見て首を傾げていた。
「これ、ミサンガ?」
「うん、綺麗でしょ」
細い糸が何本も連なり、それが三つ編みで編み込まれている。糸も良いものを使っているのだろう。艶やかなそれは光に反射して輝いて、とても綺麗だった。
「確かに綺麗だな。欲しいの?」
「いや、欲しいというか……見てただけ、かな」
「買ってあげようか?」
「……なんで?」
え、なんで急に?
さすがに申し訳ないし、買うとしてもちゃんと自分で買うけど。
「んー、早めの誕生日プレゼントとか? 原田の誕生日って九月でしょ」
「え」
「9月12日だよね。あれ、違ったっけ?」
「合ってる、けど——なんで知ってるの!?」
当たり前のように俺の誕生日を言い当てられて、頭の中は驚きと困惑で埋め尽くされる。
——なんで知ってるの? 瀬野くんには誕生日を伝えてなかったはず……。え、本当になんで知ってるの!?
驚きに染まった顔を見て、瀬野くんがクスリと笑った。
「原田がみなとの誕生日知ったのと一緒。メールに誕生日設定してるでしょ? プロフィール画面から見れるんだよ」
「……あ」
なるほど、確かにスマホを買った時にメールの初期設定で誕生日を入力した気がする。俺が横井や長谷川の誕生日を見れたように、瀬野くんも俺の誕生日を確認できたというわけか。
そう考えていた拍子に、一つ思い出したことがある。
「長谷川くんの誕生日は2月22日だよね」
「おー、よく覚えてるな」
「覚えやすかったから。……ねぇ、瀬野くんの誕生日はいつなの?」
俺の問いかけに、瀬野くんは少しだけ目を見開いた。まるで、聞かれることが予想外だったかのように。
横井の誕生日を知った日の翌日、俺は瀬野くんと長谷川のプロフィールを開いて二人の誕生日もしっかり確認していた。
長谷川は2月22日としっかり表示されたのに対して、瀬野くんは『非表示』と書かれており誕生日を見れなかったのだ。
何度か聞こうとして——躊躇ってしまった。
非表示にしているということは、誕生日を知られたくないのかと思って。
「瀬野くんがプレゼントをくれるなら、俺も、瀬野くんに誕生日プレゼント渡したい」
でも今この流れなら、瀬野くんも誕生日を教えてくれるかな。
一縷の望みをかけて聞いてみるが瀬野くんの視線は俺を捉えたままで、一向に口を開いてくれなかった。
「あ、でも教えたくないなら、別に無理にとは言わないんだけど。その、で、できればというか……」
やっぱり嫌なこと聞いちゃったかな。不安になって顔の前で手を振りながら弁明すると、瀬野くんが焦ったように「大丈夫だよ」と落ち着かせてくれる。
「ごめんごめん。誕生日聞かれると思ってなくてびっくりしちゃっただけで、嫌とかじゃないから」
「そっか、良かった」
「うん。——俺の誕生日はね、4月2日」
「……過ぎてるじゃん!」
「ははっ、実はそうなんだよね〜。だから俺、原田よりちょっとだけお兄ちゃんなんだよ?」
いたずらっぽくウインクをしてくる瀬野くん。似合うな……って、今はそんなことはよくて!
「せ、瀬野くん! 何が欲しい!?」
「うおっ、急にどしたー?」
「どしたーじゃないよ! ぷ、プレゼントなにがいい!?」
「待て待て原田、落ち着いて」
宥めるように頭を撫でられる。なんだか弟扱いされてるような気がして、つい唇を尖らせてしまう。
「俺、瀬野くんにもちゃんと誕生日プレゼントを渡したいんだ。欲しいものがあるなら、言って欲しい」
「かわいい……じゃなくて。原田はさ、これが欲しいの?」
これ、といって瀬野くんがミサンガの乗った皿を指さす。
「お、俺の欲しいものじゃなくて——」
「いいから。これ欲しいの?」
俺は瀬野くんの欲しいものが聞きたいのに……。瀬野くんの押しに負けて素直に頷く。そんな俺を瀬野くんは凄く優しい笑みで見つめてきて、ミサンガを一つ手に取った。
「じゃあ俺もこれがいいな。原田とお揃いの物が欲しい」
「お揃い?」
「そ。俺は原田の分買うから、原田は俺の分を買って?」
な、なるほど?
用はプレゼント交換ということか。少し遅めの誕生日プレゼントと、少し早めの誕生日プレゼント。
「それなら、わかった」
「やった! 原田、俺の色選んでよ」
ミサンガは色が何種類かある。
赤・青・黄・緑・紫——他様々な色があるなかで、俺は迷わずにとある色のミサンガを取った。
「これ……」
「青?」
「うん。瀬野くん、サッカー部の練習着が青色でしょ? 初めて見た時、金髪と相まって凄く似合ってるなって思ったんだ。あと、瀬野くんラムネ好きだし、爽やかキラキラ〜って感じだし……」
色々話したが、つまりは俺から見た瀬野くんの印象だ。
恐る恐る瀬野くんの反応を見ると笑っていたので、嫌いな色とかではなさそうでホッと胸を撫で下ろす。横井の誕プレといい、人の物を選ぶという経験がほとんどないからどうしても緊張してしまうのだ。
すると、瀬野くんも俺と同じように迷わず一本のミサンガを取る。
「じゃあ原田のは……これ!」
「黄色?」
それは、輝くような黄色のミサンガだった。
「原田の下の名前って『優しく輝く』で優輝だろ?」
「よ、よく漢字まで覚えてるね」
それに、急に「優輝」って呼ばれて少しドキッとしてしまった。新鮮すぎる。
「そりゃ、原田にピッタリな名前だから。優しくて、真っすぐで、暖かいお日様みたい。だから黄色」
「あ、ありがとう……」
名前を褒められるのなんて初めてだ。気に入っている名前だし、なんだか凄く嬉しい。
それに、なんだか物凄く褒めてもらった気がする。
勝手に口角が上がってしまう。ニヤけた顔を見られたくなくて下を向くと、瀬野くんが俺の手を握りちょんちょんと引っ張ってきた。
「お互いに決まったし、とりあえずお会計行こ」
「うん」
深〜く深呼吸し、顔を整える。よし、大丈夫。ニヤけてない。



