「っと、そろそろ休憩終わるからもう戻るな」
「うん」
水筒がスッと離れていく。
「あ、そうだ彰人。原田が伝えたいことあるらしいよ」
「そうそう! ほら、原田」
「うぇっ!?」
急に二人が声を張り上げたかと思えば、グラウンドに戻ろうとする瀬野くんを引き留める。慌てて振り返ると二人はグッと親指を立ててこちらに向けてくるが、全然グッドじゃない!
——え、本気で言うのか? 今!?
「伝えたいこと?」
瀬野くんがクルリと方向転換し、駆け足でこちらに戻ってくる。
「あ、えっと……なな、なんでもなくて……」
「その反応はなんでもなくないでしょ」
「そ、んなことないっ……!」
俺が首を横に振るが、瀬野くんは全く納得してくれなかった。
そんなやりとりをしていると、いつの間にか俺の真後ろまで近づいていた長谷川と横井がトンと俺の背中に手を置いた。
「原田、早く言ってあげないと彰人の休憩終わっちゃうよ」
「ほーら、大丈夫だから」
軽く二人に背を押され、瀬野くんにグンッと近づく。
「いやでも、その……本当に、たいしたことなくて」
「うん」
「えっと、えっとね」
「うん」
「その……。瀬野くんサッカー上手だなって、かっこいいなって、思っただけ、で……」
段々小さくなっていく声を、瀬野くんはちゃんと聞き取ってくれたのだろう。え、と小さく呟いたあと、銅像のように固まって動かなくなってしまった。
その瞬間、笛の音とともに監督らしき男性の「休憩終わりー」という声がグラウンド中に響く。ざわざわと部員が集まっていく中、瀬野くんだけは一向に動かず俺をジッと見つめていた。
「あ、あの?」
「っ……。う、わぁ……」
かと思えば、タオルに顔をうずめしゃがみ込んでしまった。
「せせせせ瀬野くんっ!?」
「——やっばい」
「ど、え? ど、どうしよう……!?」
体調が急に悪くなったのかと焦って瀬野くんの背中を擦る。長谷川と横井に助けを求めようと顔を上げると、二人は後ろを向いてクスクスと笑いをこらえていた。いや、肩が震えていたから堪えれてはいないか。
……じゃなくて!
「あの、二人とも……?」
「あー、原田? 彰人は大丈夫だから」
「でも——」
「彰人、監督さん呼んでるよ」
横井がグッと手を引っ張り瀬野くんを立たせる。
未だにタオルのせいで顔はよく見えないけど、耳がほんのりと赤くなっているのが見えた。思わず耳たぶに触れると、瀬野くんの身体がビクリと跳ねる。
「あ、ごめ……。でも、耳真っ赤だよ、大丈夫?」
「…………ん、大丈夫。大丈夫だから……」
タオル越しのくぐもった声にはいつもの元気が見えなかった。
その時、後ろから「彰人ー!早く来い」と瀬野くんを呼ぶ声が聞こえる。
瀬野くんは「はーい」と返事をしながら俺の頭をグシャグシャに撫でる。
「じゃ、勉強頑張れよ」
「あ、うんっ!」
俺の返事だけ聞いて、瀬野くんはグラウンドに戻って行った。
「もう彰人、原田の髪の毛跳ねちゃってるじゃん」
横井がササッと手ぐしで髪を整えてくれる。その間、俺はさっきの瀬野くんの様子をただ呆然としながら思い浮かべていた。
「瀬野くん、大丈夫かな……」
俺の心配をよそに、長谷川がニヤッと口角をあげる。
「大丈夫大丈夫、あれはさっきの原田と一緒」
「一緒?」
「純粋に褒められて嬉しかったんだろうね」
「それって、どういう……」
「「照れてるだけ」」
「照れ……え!?」
あの瀬野くんが、照れて……?
というか、なんかこれ俺が照れてたことがバレ……じゃなくて、別に俺は照れてないし。本音が飛び出してちょっとだけ、ほんのちょっとだけ恥ずかしかっただけだし。
思わずうーっと声にならないうめき声をあげると、横井は何も気にしていない様子でパッと俺の頭から手を離し、そのまま校舎の方に身体をを向けた。
「さ、とりあえず教室戻ろうか。暑いし」
「そうだな。原田、早く行くぞ! クーラーこそ神!」
横井と長谷川が校舎に向かって歩いていく。
せっかく瀬野くんに冷ましてもらった頬がまたじんわりと熱を持っていくのを感じて、俺は焦って前で待ってくれている二人を追いかけた。
これはきっと、暑すぎる太陽のせいだから。
――早く、クーラーに冷ましてもらおう。
「うん」
水筒がスッと離れていく。
「あ、そうだ彰人。原田が伝えたいことあるらしいよ」
「そうそう! ほら、原田」
「うぇっ!?」
急に二人が声を張り上げたかと思えば、グラウンドに戻ろうとする瀬野くんを引き留める。慌てて振り返ると二人はグッと親指を立ててこちらに向けてくるが、全然グッドじゃない!
——え、本気で言うのか? 今!?
「伝えたいこと?」
瀬野くんがクルリと方向転換し、駆け足でこちらに戻ってくる。
「あ、えっと……なな、なんでもなくて……」
「その反応はなんでもなくないでしょ」
「そ、んなことないっ……!」
俺が首を横に振るが、瀬野くんは全く納得してくれなかった。
そんなやりとりをしていると、いつの間にか俺の真後ろまで近づいていた長谷川と横井がトンと俺の背中に手を置いた。
「原田、早く言ってあげないと彰人の休憩終わっちゃうよ」
「ほーら、大丈夫だから」
軽く二人に背を押され、瀬野くんにグンッと近づく。
「いやでも、その……本当に、たいしたことなくて」
「うん」
「えっと、えっとね」
「うん」
「その……。瀬野くんサッカー上手だなって、かっこいいなって、思っただけ、で……」
段々小さくなっていく声を、瀬野くんはちゃんと聞き取ってくれたのだろう。え、と小さく呟いたあと、銅像のように固まって動かなくなってしまった。
その瞬間、笛の音とともに監督らしき男性の「休憩終わりー」という声がグラウンド中に響く。ざわざわと部員が集まっていく中、瀬野くんだけは一向に動かず俺をジッと見つめていた。
「あ、あの?」
「っ……。う、わぁ……」
かと思えば、タオルに顔をうずめしゃがみ込んでしまった。
「せせせせ瀬野くんっ!?」
「——やっばい」
「ど、え? ど、どうしよう……!?」
体調が急に悪くなったのかと焦って瀬野くんの背中を擦る。長谷川と横井に助けを求めようと顔を上げると、二人は後ろを向いてクスクスと笑いをこらえていた。いや、肩が震えていたから堪えれてはいないか。
……じゃなくて!
「あの、二人とも……?」
「あー、原田? 彰人は大丈夫だから」
「でも——」
「彰人、監督さん呼んでるよ」
横井がグッと手を引っ張り瀬野くんを立たせる。
未だにタオルのせいで顔はよく見えないけど、耳がほんのりと赤くなっているのが見えた。思わず耳たぶに触れると、瀬野くんの身体がビクリと跳ねる。
「あ、ごめ……。でも、耳真っ赤だよ、大丈夫?」
「…………ん、大丈夫。大丈夫だから……」
タオル越しのくぐもった声にはいつもの元気が見えなかった。
その時、後ろから「彰人ー!早く来い」と瀬野くんを呼ぶ声が聞こえる。
瀬野くんは「はーい」と返事をしながら俺の頭をグシャグシャに撫でる。
「じゃ、勉強頑張れよ」
「あ、うんっ!」
俺の返事だけ聞いて、瀬野くんはグラウンドに戻って行った。
「もう彰人、原田の髪の毛跳ねちゃってるじゃん」
横井がササッと手ぐしで髪を整えてくれる。その間、俺はさっきの瀬野くんの様子をただ呆然としながら思い浮かべていた。
「瀬野くん、大丈夫かな……」
俺の心配をよそに、長谷川がニヤッと口角をあげる。
「大丈夫大丈夫、あれはさっきの原田と一緒」
「一緒?」
「純粋に褒められて嬉しかったんだろうね」
「それって、どういう……」
「「照れてるだけ」」
「照れ……え!?」
あの瀬野くんが、照れて……?
というか、なんかこれ俺が照れてたことがバレ……じゃなくて、別に俺は照れてないし。本音が飛び出してちょっとだけ、ほんのちょっとだけ恥ずかしかっただけだし。
思わずうーっと声にならないうめき声をあげると、横井は何も気にしていない様子でパッと俺の頭から手を離し、そのまま校舎の方に身体をを向けた。
「さ、とりあえず教室戻ろうか。暑いし」
「そうだな。原田、早く行くぞ! クーラーこそ神!」
横井と長谷川が校舎に向かって歩いていく。
せっかく瀬野くんに冷ましてもらった頬がまたじんわりと熱を持っていくのを感じて、俺は焦って前で待ってくれている二人を追いかけた。
これはきっと、暑すぎる太陽のせいだから。
――早く、クーラーに冷ましてもらおう。



