駄菓子より甘い瀬野くん

***
 
「——で、なんの話してたんだっけ」
 未だに痛そうに自身の頭を抑えている長谷川が地面に寝転びながら言った。
「原田の数学の小テストがヤバい話」
「うぐっ……!」
 話が完全に戻ってしまった。忘れてくれたと思ったのに……。
 瀬野くんの言葉できちんと思い出したらしい長谷川は「そうだったそうだった」と腹に力を入れて起き上がる。
「で、原田。さっき言おうとしてたことだけど」
「な、なに……?」
「とにかく、ちょっとは勉強しないとまずいぞ。うちの補習は鬼スパルタで有名だからな」
「え……」
 ——なにそれ、聞いたことないんたけど!?
「す、スパルタって……」
「エグい量の課題出されたり」
「朝から夜まで補習授業を受けたり」
「追試で合格点に届くまで家に帰れなかったり、かな?」
 ——鬼だ! めっちゃスパルタだ……!!
「ど、どうしよう……」
 初めての中間テストまでもう一ヶ月もない。他の科目も勉強しないといけないから、数学だけに時間を使うわけにもいかない。
 俺が頭を抱え唸っていると、後ろからポンポンと肩を叩かれた。振り向くといつの間にか立ち上がっていた長谷川と目が合い、バッチリとウインクをしてくる。
 
「バカで天才な原田くんのために、俺らがチャチャっと教えてやるよ」
「は、長谷川くん……!」
「赤点回避、頑張ろうね」
「横井くん……!」
「他の教科はできるんだろ? じゃあいけるって」
「瀬野くん……!」
 なんと、三人が勉強に付き合ってくれるそうだ。
 なんて有難い……。
 ——こんなに優しい友達ができるなんて、恵まれてるなぁ……。
「あ、ありがとう。頑張る……!」

 こうして、俺の為の『数学赤点回避勉強会』が開催されることになった。