***
「彰人、最近あからさまに原田に手を焼くようになってきたな……」
原田が資料室を出ていったあと、隣の拓実がポツリと呟いた言葉にうんと頷き、同意する。
「だね。あの彰人が、まさか他人にカーディガンを貸すとは」
「てか、もう原田を他人とは言えないだろ」
「それもそうだね」
四月、原田と出会ってからの彰人は、世界に初めて色がついたように目に輝きが宿った。成長していくにつれ失ってしまった光を、もう一度取り戻したように。
彰人は自分の物を他人に貸すのがあまり好きではない。
本当に困っている人がいれば、彰人は優しいからきちんと貸してあげる。けれど、それ以外で僕と拓実以外に物の貸し借りをしている場面を、今まで見たことがなかった。
そして、この話は割と有名だ。
というより、なぜか『瀬野彰人は潔癖症で人に物を貸すのが苦手』ということで広まったのだが……。
実際には潔癖症とはまた違うと、僕と拓実は思っている。自分の物を他人に触られるのを、酷く嫌がるきらいがあるのだ。
まあ話を戻すと、今日一日原田が注目されていたのは、人に物を貸さないと有名な彰人がカーディガンを貸したからだろう。噂が回ってきた時は、流石の僕と拓実も嘘だと思ったくらいだ。
だから放課後、二人で確認しに行った。
すると、本当に『瀬野』と縫われたカーディガンを着ている原田が廊下を歩いていたのだ。
あの時は本当に驚いた。
彰人は一体どれほど原田を信頼しているのだろう。
この短期間で、彰人にとって原田は掛け替えのない存在になっている。
そして、それだけじゃなくて——。
「……僕ら以外に気を許せる人ができたのはいいことだけど、ちゃんと見ておかないと。あのままだと暴走しかねない」
「だな。いつか『原田は俺の!』とか言ってきそう」
「うわー、言いそう……」
彰人なら原田の嫌がることはしないという信頼はありつつ、あのまま暴走しないという保証もない。
原田が好きで、大切なあまり、いつか何かをやらかしてしまいそうな――そんな嫌な予感が、どうしても離れないのだ。
「まあ、今の俺らに出来ることは二人を見守ることくらいか?」
「そうだね。なにかあったら助けてあげよう」
「いやー、ほんと彰人っていい友達持ったよなー!」
「もっと感謝してほしいよね」
二人がいい関係を保てるよう、できる限りのサポートをしよう。
それが、彰人に新たな光をもたらしてくれた原田に対して、僕らにできる唯一の恩返しだと思うから。
「とりあえず、原田泣かせたら彰人を締める」
「同意」
あんな良い子を泣かせるなんて、流石の彰人でも許さないからね。
「彰人、最近あからさまに原田に手を焼くようになってきたな……」
原田が資料室を出ていったあと、隣の拓実がポツリと呟いた言葉にうんと頷き、同意する。
「だね。あの彰人が、まさか他人にカーディガンを貸すとは」
「てか、もう原田を他人とは言えないだろ」
「それもそうだね」
四月、原田と出会ってからの彰人は、世界に初めて色がついたように目に輝きが宿った。成長していくにつれ失ってしまった光を、もう一度取り戻したように。
彰人は自分の物を他人に貸すのがあまり好きではない。
本当に困っている人がいれば、彰人は優しいからきちんと貸してあげる。けれど、それ以外で僕と拓実以外に物の貸し借りをしている場面を、今まで見たことがなかった。
そして、この話は割と有名だ。
というより、なぜか『瀬野彰人は潔癖症で人に物を貸すのが苦手』ということで広まったのだが……。
実際には潔癖症とはまた違うと、僕と拓実は思っている。自分の物を他人に触られるのを、酷く嫌がるきらいがあるのだ。
まあ話を戻すと、今日一日原田が注目されていたのは、人に物を貸さないと有名な彰人がカーディガンを貸したからだろう。噂が回ってきた時は、流石の僕と拓実も嘘だと思ったくらいだ。
だから放課後、二人で確認しに行った。
すると、本当に『瀬野』と縫われたカーディガンを着ている原田が廊下を歩いていたのだ。
あの時は本当に驚いた。
彰人は一体どれほど原田を信頼しているのだろう。
この短期間で、彰人にとって原田は掛け替えのない存在になっている。
そして、それだけじゃなくて——。
「……僕ら以外に気を許せる人ができたのはいいことだけど、ちゃんと見ておかないと。あのままだと暴走しかねない」
「だな。いつか『原田は俺の!』とか言ってきそう」
「うわー、言いそう……」
彰人なら原田の嫌がることはしないという信頼はありつつ、あのまま暴走しないという保証もない。
原田が好きで、大切なあまり、いつか何かをやらかしてしまいそうな――そんな嫌な予感が、どうしても離れないのだ。
「まあ、今の俺らに出来ることは二人を見守ることくらいか?」
「そうだね。なにかあったら助けてあげよう」
「いやー、ほんと彰人っていい友達持ったよなー!」
「もっと感謝してほしいよね」
二人がいい関係を保てるよう、できる限りのサポートをしよう。
それが、彰人に新たな光をもたらしてくれた原田に対して、僕らにできる唯一の恩返しだと思うから。
「とりあえず、原田泣かせたら彰人を締める」
「同意」
あんな良い子を泣かせるなんて、流石の彰人でも許さないからね。



