「じゃあ原田、またね」
「また彰人が居ないとき話そうぜ〜!」
だから、なんで瀬野くんは嫌がるんだよ。とは聞けず、俺と二人は駅で解散した。
二人と反対の路線で電車を待っていると、ピコンとスマホが震える。見ると、さっき交換した二人から早速メールが届いていた。帰り道に横井からの提案で交換しておいたのだ。俺は少しルンルンでアプリを開いた。
『改めて、今日はありがとう。そしてごめんね。また話そうね! 彰人が居ない時に』
『今日はありがとな! 彰人のことよろしく〜。また彰人がいねぇときに話そうぜ!』
そんなに? そんなに瀬野くん嫌がってるの!?
二人して最後に『彰人が居ない時に』と書いてあることに驚く。
俺はメールでなら聞けるかもと思い、二人に同じ内容の返信をした。
『今日はありがとう、俺も話せて嬉しかった。あの、なんで瀬野くんは俺が二人と話すの嫌がるのかな? 理由わかったりする?』
少し時間が空いたあと、二人一斉に返事が返ってきた。仲良しか。
まず、先に届いていた横井のメールを開く。
意味がわからなかったので長谷川のメールも開いたが、こちらもほとんど同じような事が書いてあった。
『僕から言うことは出来ないかな……』
『原田が感づくことを祈ってるぜ』
――どういうことだよ。
何度読んでも意味のわからない返信に、解読を諦めてスマホの画面を切る。『感づく』ってなんだよ感づくって。一体何を感づけばいいんだよ。
すると、またしてもピコンと軽やかな音とともにスマホが震える。
また二人かなと電源ボタンを押すと、ロック画面に表示されたのは二人の名前ではなく、まさかの瀬野くんだった。
それと同時に電車が来たので、乗り込みながらロックを解除しアプリを開く。
空いていた端っこの席に座り、トーク画面に飛ぶ。
『拓実とみなとに会ったの?』
ポンと現れた文字を読み、頭が真っ白になる。え、何で知ってるの?
まあ多分、どちらかが言ったのだろう。でないと部活中だったはずの瀬野くんが知っていることの説明がつかない。なんでわざわざ瀬野くんに隠れて会ったのに本人に言ったのかは、わからないが。
これはなんと返信するのが正解か頭を悩ませていると、スマホの上部分にメールの通知が届く。横井からだ。
『言わないとそれはそれで怒られるので、彰人に報告しました。あとはよろ!』
――適当か! 丸投げしてくんな! よろってなんだよ『よろ』って……!
既読は着いてるのに返信しないからか、瀬野くんから追加のメールが届く。
『ねえ原田見てるでしょ? なんで返事くれないの?』
『で、本当に二人と会ったの?』
これは誤魔化しても意味がないと悟った俺は、素直に本当のことを書くことにした。
『うん、会ったよ。二人とも良い人だね』
すると、すぐに既読が付き一瞬で返事が返ってくる。
『大丈夫? 何もされてない?』
二人を何だと思ってるんだよ……。
俺はポチポチと文章を打ち込み送信する。
『別に何もされてないよ。ちょっとお話しただけ。手繋がれたりはしたけど』
さっきと同じように一瞬で既読が着いたのに、今度はなかなか返事が送られてこなかった。
俺はそのまま画面を切ってズボンのポケットに入れ、ぼーっと窓の外を眺める。
まだ明るい空に真っ赤な夕日が輝いている。家に着く頃には空も暗くなっているだろうか。田舎の夜道は真っ暗で怖い。懐中電灯を入れていたか確認するために鞄を漁っていると、ポケットのスマホが震える。
取り出すと、瀬野くんから返事が届いていた。短く簡潔だったそれに、俺もすぐに返事をした。
スマホをまたポケットに仕舞い鞄に目線を落とすと、奥の方に携帯用のミニ懐中電灯があるのを見つけた。良かった、これで安心して帰れる。
止まった駅を確認すると、まだまだ降りる駅には程遠い。俺は少し眠ろうと、膝に抱えた鞄に頭を乗せて目を瞑った。
『そっか、わかった。また明日な』
『うん、また明日』
***
次の日の朝、靴箱の前で瀬野くんが腕を組み仁王立ちで立っていた。
「ええっと、瀬野くん、おは、よう……?」
「おはよう原田」
瀬野くんの背中から、何故か炎が見える……。笑顔なのに全く笑ってない目で挨拶され、少し狼狽えてしまう。
「あ、あの、瀬野くん――」
「とりあえず靴履き替えたら?」
「う、うん……」
言われた通り素直に靴を上履きに履き替えると、右手を掴まれグッと引っ張られる。教室とは真反対の廊下を突き進んでいく瀬野くんに困惑が隠せない。
「あの、待って……! ど、どこ、行くの?」
黙って前を歩く瀬野くんは俺の言葉に反応したようにピタリと足を止めた。
周りを見ると人ひとり居ない。よく見ると本校舎とは別の建物のようだった。いつの間にわたり廊下を渡っていたのだろう。瀬野くんに着いていくのに必死で、周囲を全く見ていなかった。
瀬野くんは俺に向き合うと、俺の両手をぎゅっと握りしめてきた。驚きと困惑で目を見開いて見上げることしかできない俺を、瀬野くんはジッと見ていた。
「……上書き」
「え?」
「上書き。昨日二人と手繋いだんでしょ? だから俺で上書きしてるの」
上書き……? 手を繋いだだけで? なんでわざわざ?
不思議に思ったが、瀬野くんの切実そうな表情を見ると何も言えなくなった。
ぎゅっと俺より少し大きな手で包みこまれる。じんわりと手の温もりが伝わってきて、なぜか少しホッとする。昨日の二人の手と違うのは、この安心感だったのかもしれない。
「瀬野くんの手の方が、あ、安心……する」
俺がぎゅっと手を握り返すと、瀬野くんは何故か天を見上げ、そのまま動かなくなってしまった。
それからしばらく経っても全く動かないので、遅刻しないよう今度は俺が瀬野くんの手を引っ張って教室まで連れて行ったのは、ここだけの話。
☆次回第6話の投稿日は未定です。
少々お待ちください☆
「また彰人が居ないとき話そうぜ〜!」
だから、なんで瀬野くんは嫌がるんだよ。とは聞けず、俺と二人は駅で解散した。
二人と反対の路線で電車を待っていると、ピコンとスマホが震える。見ると、さっき交換した二人から早速メールが届いていた。帰り道に横井からの提案で交換しておいたのだ。俺は少しルンルンでアプリを開いた。
『改めて、今日はありがとう。そしてごめんね。また話そうね! 彰人が居ない時に』
『今日はありがとな! 彰人のことよろしく〜。また彰人がいねぇときに話そうぜ!』
そんなに? そんなに瀬野くん嫌がってるの!?
二人して最後に『彰人が居ない時に』と書いてあることに驚く。
俺はメールでなら聞けるかもと思い、二人に同じ内容の返信をした。
『今日はありがとう、俺も話せて嬉しかった。あの、なんで瀬野くんは俺が二人と話すの嫌がるのかな? 理由わかったりする?』
少し時間が空いたあと、二人一斉に返事が返ってきた。仲良しか。
まず、先に届いていた横井のメールを開く。
意味がわからなかったので長谷川のメールも開いたが、こちらもほとんど同じような事が書いてあった。
『僕から言うことは出来ないかな……』
『原田が感づくことを祈ってるぜ』
――どういうことだよ。
何度読んでも意味のわからない返信に、解読を諦めてスマホの画面を切る。『感づく』ってなんだよ感づくって。一体何を感づけばいいんだよ。
すると、またしてもピコンと軽やかな音とともにスマホが震える。
また二人かなと電源ボタンを押すと、ロック画面に表示されたのは二人の名前ではなく、まさかの瀬野くんだった。
それと同時に電車が来たので、乗り込みながらロックを解除しアプリを開く。
空いていた端っこの席に座り、トーク画面に飛ぶ。
『拓実とみなとに会ったの?』
ポンと現れた文字を読み、頭が真っ白になる。え、何で知ってるの?
まあ多分、どちらかが言ったのだろう。でないと部活中だったはずの瀬野くんが知っていることの説明がつかない。なんでわざわざ瀬野くんに隠れて会ったのに本人に言ったのかは、わからないが。
これはなんと返信するのが正解か頭を悩ませていると、スマホの上部分にメールの通知が届く。横井からだ。
『言わないとそれはそれで怒られるので、彰人に報告しました。あとはよろ!』
――適当か! 丸投げしてくんな! よろってなんだよ『よろ』って……!
既読は着いてるのに返信しないからか、瀬野くんから追加のメールが届く。
『ねえ原田見てるでしょ? なんで返事くれないの?』
『で、本当に二人と会ったの?』
これは誤魔化しても意味がないと悟った俺は、素直に本当のことを書くことにした。
『うん、会ったよ。二人とも良い人だね』
すると、すぐに既読が付き一瞬で返事が返ってくる。
『大丈夫? 何もされてない?』
二人を何だと思ってるんだよ……。
俺はポチポチと文章を打ち込み送信する。
『別に何もされてないよ。ちょっとお話しただけ。手繋がれたりはしたけど』
さっきと同じように一瞬で既読が着いたのに、今度はなかなか返事が送られてこなかった。
俺はそのまま画面を切ってズボンのポケットに入れ、ぼーっと窓の外を眺める。
まだ明るい空に真っ赤な夕日が輝いている。家に着く頃には空も暗くなっているだろうか。田舎の夜道は真っ暗で怖い。懐中電灯を入れていたか確認するために鞄を漁っていると、ポケットのスマホが震える。
取り出すと、瀬野くんから返事が届いていた。短く簡潔だったそれに、俺もすぐに返事をした。
スマホをまたポケットに仕舞い鞄に目線を落とすと、奥の方に携帯用のミニ懐中電灯があるのを見つけた。良かった、これで安心して帰れる。
止まった駅を確認すると、まだまだ降りる駅には程遠い。俺は少し眠ろうと、膝に抱えた鞄に頭を乗せて目を瞑った。
『そっか、わかった。また明日な』
『うん、また明日』
***
次の日の朝、靴箱の前で瀬野くんが腕を組み仁王立ちで立っていた。
「ええっと、瀬野くん、おは、よう……?」
「おはよう原田」
瀬野くんの背中から、何故か炎が見える……。笑顔なのに全く笑ってない目で挨拶され、少し狼狽えてしまう。
「あ、あの、瀬野くん――」
「とりあえず靴履き替えたら?」
「う、うん……」
言われた通り素直に靴を上履きに履き替えると、右手を掴まれグッと引っ張られる。教室とは真反対の廊下を突き進んでいく瀬野くんに困惑が隠せない。
「あの、待って……! ど、どこ、行くの?」
黙って前を歩く瀬野くんは俺の言葉に反応したようにピタリと足を止めた。
周りを見ると人ひとり居ない。よく見ると本校舎とは別の建物のようだった。いつの間にわたり廊下を渡っていたのだろう。瀬野くんに着いていくのに必死で、周囲を全く見ていなかった。
瀬野くんは俺に向き合うと、俺の両手をぎゅっと握りしめてきた。驚きと困惑で目を見開いて見上げることしかできない俺を、瀬野くんはジッと見ていた。
「……上書き」
「え?」
「上書き。昨日二人と手繋いだんでしょ? だから俺で上書きしてるの」
上書き……? 手を繋いだだけで? なんでわざわざ?
不思議に思ったが、瀬野くんの切実そうな表情を見ると何も言えなくなった。
ぎゅっと俺より少し大きな手で包みこまれる。じんわりと手の温もりが伝わってきて、なぜか少しホッとする。昨日の二人の手と違うのは、この安心感だったのかもしれない。
「瀬野くんの手の方が、あ、安心……する」
俺がぎゅっと手を握り返すと、瀬野くんは何故か天を見上げ、そのまま動かなくなってしまった。
それからしばらく経っても全く動かないので、遅刻しないよう今度は俺が瀬野くんの手を引っ張って教室まで連れて行ったのは、ここだけの話。
☆次回第6話の投稿日は未定です。
少々お待ちください☆



