放課後の駅前。
昨日約束した通り、私たちはプラネタリウムのロビーで待ち合わせていた。
朔夜くんは、昨日よりも少しだけ疲れたような、けれど私を見つけた瞬間にパッと花が咲くような笑顔を見せた。
「待たせてごめん、つむぎ。行こうか」
彼が差し出してくれたのは、温かいホットココア。
「あ、ありがとう。喉が渇いてたの、どうしてわかったの?」
「……さっきの授業、移動教室だっただろ? 階段を上り下りして、少し疲れてるかなと思って」
彼はさらりと答えるけれど、私の教室から移動教室のルートなんて、彼には関係ないはずなのに。 そんな疑問を抱く暇もないほど、彼は自然に私の手を取り、暗がりのドーム内へと導いてくれた。
リクライニングシートに深く身を沈めると、ドームいっぱいに満天の星が広がる。
解説員の声が心地よく響く中、隣に座る朔夜くんの気配がすぐ近くに感じられた。
「……ねえ、つむぎ。あの並んでいる二つの星、見える?」
「ええと、どれかな」
彼が私の手をとり、指先で星を指し示す。
重なる肌の熱に、鼓動が速くなる。
「あれは、片方の星がもう片方の星をずっと追いかけ続けているんだ。何万年も、何億年も。相手が光を失っても、隣にいたいと願って」
「……なんだか、少し切ないね」
「僕は、素敵だと思うよ。……僕も、たとえ世界が何度壊れても、君を見つけ出すから」
暗闇に乗じて、彼が私の耳元で囁く。
その声は、星の光よりも深く、私の胸に突き刺さった。
彼はまるで、本当に「世界が壊れる」ところを見たことがあるかのような、確信に満ちた言い方をした。
上映が終わる直前、解説員が「今夜の特別な星占い」をアナウンスした。
『今日、この会場にいる三月生まれの方に、幸運の星からのメッセージです』
私は目を見開いた。
私は三月生まれだ。
『――羽が舞い、月が輝く名前を持つあなた。大切な人は、すぐ隣にいます』
「……えっ。羽が舞い、月……って、私の名前?」
「……あ、本当だ。偶然かな、すごいね」
朔夜くんは驚いたふりをして笑った。
けれど、彼の横顔はどこかやり遂げたような、穏やかな満足感に満ちていた。
偶然なはずがない。
彼はこのアナウンスさえも、何らかの方法で仕組んだのか、あるいは……。
プラネタリウムを出て、駅のホームに向かう途中。
幸せな高揚感に包まれていた私は、ふと彼のポケットからこぼれ落ちた「小さな紙屑」を拾い上げた。
それは、今日行ったプラネタリウムのチケット……の半券だった。
けれど、そこには妙なことが書かれていた。
『100回目:成功』
殴り書きされたその文字を見て、私の指先が冷たく凍りつく。
100回目?
成功って、何が?
「つむぎ、どうしたの?」
振り返った朔夜くんの瞳が、夕闇の中で不気味なほど鮮やかに光った。
彼は私の手の中にある紙屑に気づくと、一瞬だけ、見たこともないような「絶望」と「執着」が入り混じった表情を浮かべた。
「……ああ、それは。……ただの、僕のおまじないだよ」
彼は優しく笑って私の手から紙を取り上げたけれど、その指先は、隠しきれないほど激しく震えていた。
昨日約束した通り、私たちはプラネタリウムのロビーで待ち合わせていた。
朔夜くんは、昨日よりも少しだけ疲れたような、けれど私を見つけた瞬間にパッと花が咲くような笑顔を見せた。
「待たせてごめん、つむぎ。行こうか」
彼が差し出してくれたのは、温かいホットココア。
「あ、ありがとう。喉が渇いてたの、どうしてわかったの?」
「……さっきの授業、移動教室だっただろ? 階段を上り下りして、少し疲れてるかなと思って」
彼はさらりと答えるけれど、私の教室から移動教室のルートなんて、彼には関係ないはずなのに。 そんな疑問を抱く暇もないほど、彼は自然に私の手を取り、暗がりのドーム内へと導いてくれた。
リクライニングシートに深く身を沈めると、ドームいっぱいに満天の星が広がる。
解説員の声が心地よく響く中、隣に座る朔夜くんの気配がすぐ近くに感じられた。
「……ねえ、つむぎ。あの並んでいる二つの星、見える?」
「ええと、どれかな」
彼が私の手をとり、指先で星を指し示す。
重なる肌の熱に、鼓動が速くなる。
「あれは、片方の星がもう片方の星をずっと追いかけ続けているんだ。何万年も、何億年も。相手が光を失っても、隣にいたいと願って」
「……なんだか、少し切ないね」
「僕は、素敵だと思うよ。……僕も、たとえ世界が何度壊れても、君を見つけ出すから」
暗闇に乗じて、彼が私の耳元で囁く。
その声は、星の光よりも深く、私の胸に突き刺さった。
彼はまるで、本当に「世界が壊れる」ところを見たことがあるかのような、確信に満ちた言い方をした。
上映が終わる直前、解説員が「今夜の特別な星占い」をアナウンスした。
『今日、この会場にいる三月生まれの方に、幸運の星からのメッセージです』
私は目を見開いた。
私は三月生まれだ。
『――羽が舞い、月が輝く名前を持つあなた。大切な人は、すぐ隣にいます』
「……えっ。羽が舞い、月……って、私の名前?」
「……あ、本当だ。偶然かな、すごいね」
朔夜くんは驚いたふりをして笑った。
けれど、彼の横顔はどこかやり遂げたような、穏やかな満足感に満ちていた。
偶然なはずがない。
彼はこのアナウンスさえも、何らかの方法で仕組んだのか、あるいは……。
プラネタリウムを出て、駅のホームに向かう途中。
幸せな高揚感に包まれていた私は、ふと彼のポケットからこぼれ落ちた「小さな紙屑」を拾い上げた。
それは、今日行ったプラネタリウムのチケット……の半券だった。
けれど、そこには妙なことが書かれていた。
『100回目:成功』
殴り書きされたその文字を見て、私の指先が冷たく凍りつく。
100回目?
成功って、何が?
「つむぎ、どうしたの?」
振り返った朔夜くんの瞳が、夕闇の中で不気味なほど鮮やかに光った。
彼は私の手の中にある紙屑に気づくと、一瞬だけ、見たこともないような「絶望」と「執着」が入り混じった表情を浮かべた。
「……ああ、それは。……ただの、僕のおまじないだよ」
彼は優しく笑って私の手から紙を取り上げたけれど、その指先は、隠しきれないほど激しく震えていた。



