……あっ。
そうだよね。せっかく猫は部屋を片付ける為に言ってくれてるのに、私は嫌としか言わない。
優柔不断な私に、呆れて当然だよね?
でも、捨てたくないの。だって……。
懐かしい匂いがした衣類をただ力強く抱きしめて、目を強く閉じる。
すると彼が側に居てくれるように、温かくて、優しくて。あの頃の幸せな毎日が、戻ってきたように感じてしまうの。
だから、そんな大切な思い出を捨てることなんか出来なくて、私は身動きが取れなくなってしまう。
誰かが近づいてくる気配に目をそっと開くと、そこに居てくれるのは彼ではなくて、澄んだ瞳でこちらを見据えてくる小さな存在。
「猫……」
握り締めていた衣類を横にやり猫に手を伸ばすと、「ニャ」と渡されたのは、ストラップが付いた手の平サイズのケースだった。
「えっ? これ、私のスマホ!」
「……見るニャ」
スマホケースを開くと、そこに映し出されているのは検索画面。検索内容は「片付け やり方」。
それで気になる結果は、「物を捨てる基準は一年使用しなかったら」と書いてあった。
「ちょっと、猫のクセにスマホ使いこなさないでよぉー!」
スマホケースをパタンと閉じた私は、猫を捕まえようとシュと手を伸ばすも、ジャンプでピョイと避けられてしまう。
「これ、なかなか動かないニャ。片付けられないのは部屋だけじゃないニャ」
「スマホの中も、とっ散らかってて悪かったな!」
どうせ、容量ギリギリですよーだ!
「もしかしたら、まだいるかもしれないじゃない!」
それを聞いて耳をピクリと動かした猫は、私の一瞬の隙をついてスマホのストラップを咥えて引き寄せる。
そしてあろうことか、肉球を上手いこと使い「ニャニャニャニャ」と言いながらスマホをスライドさせたかと思うと、そっと私に差し出してきた。
『自然消滅と判断する期間は約三ヶ月』。
検索トップページに太字で書いてある、一文。
それをまじまじと見つめると、猫は私の膝をポンポンと叩き、ニャアニャアと首を横に振って見せる。
この二年間、ぜったいに触れないようにしていた「自然消滅」の言葉。
それを最も簡単に触れてくるなんて。
ヒドイ、ムゴい、エグい。
語彙力がない私にはそんな単語しか出てこず、思わずこの言葉を叫ぶ。
「あんたは人の心とかないんかぁー!」
「アタイ猫だニャ、ないニャ」
目を細めてそっぽ向き、お腹周りをぺろぺろと舐めて毛繕いを始める。
あまりにもあっけらかんとしている猫の姿に、ヘニャヘニャと力が抜けた私は、両手をついて俯く。
視線の先にはグレーのスエットが転がっていて、お店のタグがチラッと見える。
ああ、そうだ。これは……。
そうだよね。せっかく猫は部屋を片付ける為に言ってくれてるのに、私は嫌としか言わない。
優柔不断な私に、呆れて当然だよね?
でも、捨てたくないの。だって……。
懐かしい匂いがした衣類をただ力強く抱きしめて、目を強く閉じる。
すると彼が側に居てくれるように、温かくて、優しくて。あの頃の幸せな毎日が、戻ってきたように感じてしまうの。
だから、そんな大切な思い出を捨てることなんか出来なくて、私は身動きが取れなくなってしまう。
誰かが近づいてくる気配に目をそっと開くと、そこに居てくれるのは彼ではなくて、澄んだ瞳でこちらを見据えてくる小さな存在。
「猫……」
握り締めていた衣類を横にやり猫に手を伸ばすと、「ニャ」と渡されたのは、ストラップが付いた手の平サイズのケースだった。
「えっ? これ、私のスマホ!」
「……見るニャ」
スマホケースを開くと、そこに映し出されているのは検索画面。検索内容は「片付け やり方」。
それで気になる結果は、「物を捨てる基準は一年使用しなかったら」と書いてあった。
「ちょっと、猫のクセにスマホ使いこなさないでよぉー!」
スマホケースをパタンと閉じた私は、猫を捕まえようとシュと手を伸ばすも、ジャンプでピョイと避けられてしまう。
「これ、なかなか動かないニャ。片付けられないのは部屋だけじゃないニャ」
「スマホの中も、とっ散らかってて悪かったな!」
どうせ、容量ギリギリですよーだ!
「もしかしたら、まだいるかもしれないじゃない!」
それを聞いて耳をピクリと動かした猫は、私の一瞬の隙をついてスマホのストラップを咥えて引き寄せる。
そしてあろうことか、肉球を上手いこと使い「ニャニャニャニャ」と言いながらスマホをスライドさせたかと思うと、そっと私に差し出してきた。
『自然消滅と判断する期間は約三ヶ月』。
検索トップページに太字で書いてある、一文。
それをまじまじと見つめると、猫は私の膝をポンポンと叩き、ニャアニャアと首を横に振って見せる。
この二年間、ぜったいに触れないようにしていた「自然消滅」の言葉。
それを最も簡単に触れてくるなんて。
ヒドイ、ムゴい、エグい。
語彙力がない私にはそんな単語しか出てこず、思わずこの言葉を叫ぶ。
「あんたは人の心とかないんかぁー!」
「アタイ猫だニャ、ないニャ」
目を細めてそっぽ向き、お腹周りをぺろぺろと舐めて毛繕いを始める。
あまりにもあっけらかんとしている猫の姿に、ヘニャヘニャと力が抜けた私は、両手をついて俯く。
視線の先にはグレーのスエットが転がっていて、お店のタグがチラッと見える。
ああ、そうだ。これは……。



