寒波が流れ込む、日照りもない極寒。
窓よりコンコンと音が響く。
勢いよくカーテンを開けると、霜でビッチリの小窓よりかろうじて見える黒い影。
「いらっしゃーい! さあ、入って!」
濡れタオル持参で窓を開けると、こちらをチラッと見たかと思えば猫はツーンとした表情で、黙って私に抱き抱えられる。
「今日はよろしくねぇ!」
「ヒマだからニャ」
猫は自ら足を一本ずつ上げ、濡れタオルで肉球を拭かせる。フニフニとする感覚にフニャアと頬が緩むけど、これは猫が要望したことで私の趣味ではないから!
部屋が汚れるとかの配慮みたいだけど、別にいいのになぁ。
肉球をまじまじと見つめて汚れが落ちていることを確認した猫は、私の胸元からピョンと飛び降りる。
そして、部屋をぐるっと見回した目を細めて溜息を吐いた。
「……あ、ほら。ちゃんと掃除はしてるし、埃は払ってるし、白猫になる心配はないでしょ? あはははは……」
目はキョロキョロ、手はクニクニ、声はヘロヘロ。
そんな私に猫はより目を細めて、ツーンとした態度を取ってくる。
「はい、女に二言はありました……」
猫の前で正座し、背中を丸めてシュンとする。
あの啖呵を切って一ヶ月間。猫は毎日遊びにきてくれたけど、私の部屋は一向に片付かなかった。
でもね、電球に被っていた埃だってしっかり落としたし、掃除機は休みの日にはかけてるんだよ?
そりゃ、猫曰く足の踏み場がないらしいけど、別に生活出来るから問題ないじゃない?
そう思いながら猫の方をチラッと見ると目の前にいた猫は居なくなっていて、「やっぱり、全部ポイッとニャ」とゴミ袋を咥えてやってきた。
「それだけはお許しをー! 猫様ー!」
猫に縋ると、ニャアニャアと体を捩らせ、そこをペロペロと舐める。
どうやら、触るなということらしい。
あれから猫の生態について勉強したんだけど、どうやら犬とは違うみたい。
尻尾を振るのは犬にとっては歓喜でも、猫にとっては立腹らしく。つまり私は、初めから猫を怒らせていたらしい。
その他にも、尻尾を太くしたり、「フシャー」と唸ったり、身を屈めたり……。
まあ、そうゆうことらしい。
で、でもさ、二人で片付ける話になったってことは、猫と私の距離感は縮まったと思って良いってことかな?
全部捨ててやるー! と言わんばかりにシャアシャアさせている猫に、私は秘密兵器を出すことにした。
「まあまあ、まずは腹ごしらえでも」
差し出したプラスチックのお皿に、パラパラと音が鳴れば、猫は目を輝かせ「ニャアー!」と飛びつく。
「お、お、おいしいニャ。噛んだらフワッと魚の風味がするニャ。カリカリすればするほど味がするニャ。ゴックンする喉は幸せいっぱいだニャアアアアア!」
目を細め、フカフカな尻尾を真っ直ぐに立たせ、お尻をフリフリとさせている。
「喋るか食べるか、どっちかにしなよー」
はははっと笑いながら見つめる顔は本当に可愛らしくて、猫のデレッデレ具合にこっちまでとろけてしまいそうになる。
猫が遊びに来るようになって、一週間が経った頃。
まあ腹ごしらえの一つになればと、ペットショップの試供品をもらって試してみた。
正直、このツンツン猫のことだから、「ニャ」と鼻で笑うだろうな……っと思っていた。
だけど袋を取り出す時のカサカサ音に即座に反応した猫は、「ニャア! ニャア、ニャア、ニャア、ニャアアアアア!」と大騒ぎだった。
「カリカリだニャ」「ニンゲン、分かってるニャ」「お利口ニャ!」
そんなことで、私は初めて猫に認められた。
……キャットフードの中で一番安いのは、秘密にしておこう。
窓よりコンコンと音が響く。
勢いよくカーテンを開けると、霜でビッチリの小窓よりかろうじて見える黒い影。
「いらっしゃーい! さあ、入って!」
濡れタオル持参で窓を開けると、こちらをチラッと見たかと思えば猫はツーンとした表情で、黙って私に抱き抱えられる。
「今日はよろしくねぇ!」
「ヒマだからニャ」
猫は自ら足を一本ずつ上げ、濡れタオルで肉球を拭かせる。フニフニとする感覚にフニャアと頬が緩むけど、これは猫が要望したことで私の趣味ではないから!
部屋が汚れるとかの配慮みたいだけど、別にいいのになぁ。
肉球をまじまじと見つめて汚れが落ちていることを確認した猫は、私の胸元からピョンと飛び降りる。
そして、部屋をぐるっと見回した目を細めて溜息を吐いた。
「……あ、ほら。ちゃんと掃除はしてるし、埃は払ってるし、白猫になる心配はないでしょ? あはははは……」
目はキョロキョロ、手はクニクニ、声はヘロヘロ。
そんな私に猫はより目を細めて、ツーンとした態度を取ってくる。
「はい、女に二言はありました……」
猫の前で正座し、背中を丸めてシュンとする。
あの啖呵を切って一ヶ月間。猫は毎日遊びにきてくれたけど、私の部屋は一向に片付かなかった。
でもね、電球に被っていた埃だってしっかり落としたし、掃除機は休みの日にはかけてるんだよ?
そりゃ、猫曰く足の踏み場がないらしいけど、別に生活出来るから問題ないじゃない?
そう思いながら猫の方をチラッと見ると目の前にいた猫は居なくなっていて、「やっぱり、全部ポイッとニャ」とゴミ袋を咥えてやってきた。
「それだけはお許しをー! 猫様ー!」
猫に縋ると、ニャアニャアと体を捩らせ、そこをペロペロと舐める。
どうやら、触るなということらしい。
あれから猫の生態について勉強したんだけど、どうやら犬とは違うみたい。
尻尾を振るのは犬にとっては歓喜でも、猫にとっては立腹らしく。つまり私は、初めから猫を怒らせていたらしい。
その他にも、尻尾を太くしたり、「フシャー」と唸ったり、身を屈めたり……。
まあ、そうゆうことらしい。
で、でもさ、二人で片付ける話になったってことは、猫と私の距離感は縮まったと思って良いってことかな?
全部捨ててやるー! と言わんばかりにシャアシャアさせている猫に、私は秘密兵器を出すことにした。
「まあまあ、まずは腹ごしらえでも」
差し出したプラスチックのお皿に、パラパラと音が鳴れば、猫は目を輝かせ「ニャアー!」と飛びつく。
「お、お、おいしいニャ。噛んだらフワッと魚の風味がするニャ。カリカリすればするほど味がするニャ。ゴックンする喉は幸せいっぱいだニャアアアアア!」
目を細め、フカフカな尻尾を真っ直ぐに立たせ、お尻をフリフリとさせている。
「喋るか食べるか、どっちかにしなよー」
はははっと笑いながら見つめる顔は本当に可愛らしくて、猫のデレッデレ具合にこっちまでとろけてしまいそうになる。
猫が遊びに来るようになって、一週間が経った頃。
まあ腹ごしらえの一つになればと、ペットショップの試供品をもらって試してみた。
正直、このツンツン猫のことだから、「ニャ」と鼻で笑うだろうな……っと思っていた。
だけど袋を取り出す時のカサカサ音に即座に反応した猫は、「ニャア! ニャア、ニャア、ニャア、ニャアアアアア!」と大騒ぎだった。
「カリカリだニャ」「ニンゲン、分かってるニャ」「お利口ニャ!」
そんなことで、私は初めて猫に認められた。
……キャットフードの中で一番安いのは、秘密にしておこう。



