「……まあ、売ってもいいけど、正直二束三文ってところだと思うけどねー」
ププッとなる口元を抑えて部品を写真に撮り、スマホ検索する。
「ニショク、サンミョン?」
キョトンとした目で、スマホを覗き込む。
「あー、つまり、大したお金にはならないってこと。キャットフード六袋ぐらい買えたら御の字かなぁー」
元は三万円した部品なんだけど、二年もしてたら型落ちしてるだろうし、いいところ三千円ぐらいだろう。
部品の品番号を確認しながら、ネットストアで市場価値について調べる。
「……は? えっ!」
目をまん丸くした私は、スマホをギュッと握り締めて顔を寄せる。
「さ、さ、さ、三十万ー!!」
すっとんきょんな悲鳴を上げて、握っていた部品をまじまじと見つめる。
「いやいやいやっ! 一桁、……いや二桁違うんじゃないのぉー!」
「どうことニャ?」
「つ・ま・り、キャットフード六百袋ってことぉー!」
「ニャアニャアー! コリコリパラダイスだニャアアアアアア!」
同時にバンザーイと手を上げて、一緒に飛び跳ねて、床でコロコロと回る。
どうやらこの部品に合うバイクは廃盤となり、同時に部品の製造もストップしてしまった。だからマニアの間では、この部品はいくら出しても買いたいという声もあるらしく、高額な取引がされているみたい。
当時でもなかなか入手できなかったみたいだし、彼も入手できないと肩を落としていた。
だから見かねた私は、地元の個人店も足を運んでようやく入手した物だった。
……好きだったんだよね。喜んで欲しかったんだよね。
だから年末の忙しい時に僅かな可能性にかけて、電車に乗って……。バカみたいだね。
「……その人、可哀想ニャ」
「あー、そうだね」
あれだけ欲しがっていたのに。その価値も分からない私なんかがずっと持っていたんだから。
「ニャニャ。可哀想なやつニャ、ザマァみろニャーアアアアア!」
湿った空気を一変させる、猫のご満月な大絶叫。
それを聞いた私は、女心を弄んだバツだと大笑いを被せる。
ああ、面白いな。過去のことで大笑いできるのは。
面白過ぎて気付けば、一筋の涙が落ちてくる。
「さあ、あと少し! 片付けが終わったら、猫とゆったり過ごす大晦日の夜が待っているんだから!」
目を袖でゴシゴシと拭き、すぅーと大きく息を吸う。
収納のために置いてある、本棚や衣類ケースを一旦全て出し、ホウキで掃いて、以前置いていた場所へと戻していく。
上段には季節ものを収納する衣類ケース、小説を仕舞う本棚、常備薬や避難袋を保管しておく棚。
下段には扇風機などの大きな季節ものや、買い溜めした日用品を一時的に入れておく場所。
そうと決めてしまえば、ベッドや床に平積みにされていた小説は本棚に戻っていき、玄関に放置された扇風機は下段に置き、また安売りの日に日用品の買い溜めはできるし、常備薬も準備できるね。
押し入れをパタンと閉じれば、部屋は彼と付き合う前に過ごしていたスッキリとした空間へと戻っていた。
あとは溜まったゴミを収集日に持っていくだけ。
「ありがとう、猫! やっと部屋、片付いたよ!」
「あと、これニャ」
猫が差し出してきたのはスマホで、そこには写真がズラーと並んでいて、そこには優しく微笑む男性が写っていた。
ププッとなる口元を抑えて部品を写真に撮り、スマホ検索する。
「ニショク、サンミョン?」
キョトンとした目で、スマホを覗き込む。
「あー、つまり、大したお金にはならないってこと。キャットフード六袋ぐらい買えたら御の字かなぁー」
元は三万円した部品なんだけど、二年もしてたら型落ちしてるだろうし、いいところ三千円ぐらいだろう。
部品の品番号を確認しながら、ネットストアで市場価値について調べる。
「……は? えっ!」
目をまん丸くした私は、スマホをギュッと握り締めて顔を寄せる。
「さ、さ、さ、三十万ー!!」
すっとんきょんな悲鳴を上げて、握っていた部品をまじまじと見つめる。
「いやいやいやっ! 一桁、……いや二桁違うんじゃないのぉー!」
「どうことニャ?」
「つ・ま・り、キャットフード六百袋ってことぉー!」
「ニャアニャアー! コリコリパラダイスだニャアアアアアア!」
同時にバンザーイと手を上げて、一緒に飛び跳ねて、床でコロコロと回る。
どうやらこの部品に合うバイクは廃盤となり、同時に部品の製造もストップしてしまった。だからマニアの間では、この部品はいくら出しても買いたいという声もあるらしく、高額な取引がされているみたい。
当時でもなかなか入手できなかったみたいだし、彼も入手できないと肩を落としていた。
だから見かねた私は、地元の個人店も足を運んでようやく入手した物だった。
……好きだったんだよね。喜んで欲しかったんだよね。
だから年末の忙しい時に僅かな可能性にかけて、電車に乗って……。バカみたいだね。
「……その人、可哀想ニャ」
「あー、そうだね」
あれだけ欲しがっていたのに。その価値も分からない私なんかがずっと持っていたんだから。
「ニャニャ。可哀想なやつニャ、ザマァみろニャーアアアアア!」
湿った空気を一変させる、猫のご満月な大絶叫。
それを聞いた私は、女心を弄んだバツだと大笑いを被せる。
ああ、面白いな。過去のことで大笑いできるのは。
面白過ぎて気付けば、一筋の涙が落ちてくる。
「さあ、あと少し! 片付けが終わったら、猫とゆったり過ごす大晦日の夜が待っているんだから!」
目を袖でゴシゴシと拭き、すぅーと大きく息を吸う。
収納のために置いてある、本棚や衣類ケースを一旦全て出し、ホウキで掃いて、以前置いていた場所へと戻していく。
上段には季節ものを収納する衣類ケース、小説を仕舞う本棚、常備薬や避難袋を保管しておく棚。
下段には扇風機などの大きな季節ものや、買い溜めした日用品を一時的に入れておく場所。
そうと決めてしまえば、ベッドや床に平積みにされていた小説は本棚に戻っていき、玄関に放置された扇風機は下段に置き、また安売りの日に日用品の買い溜めはできるし、常備薬も準備できるね。
押し入れをパタンと閉じれば、部屋は彼と付き合う前に過ごしていたスッキリとした空間へと戻っていた。
あとは溜まったゴミを収集日に持っていくだけ。
「ありがとう、猫! やっと部屋、片付いたよ!」
「あと、これニャ」
猫が差し出してきたのはスマホで、そこには写真がズラーと並んでいて、そこには優しく微笑む男性が写っていた。



