雪はいつの間にか降り止み、淡い青空が続く年末。
「さあ、やるニャー!」
お尻をフリフリとした猫が、太陽に向かって片付け宣言を繰り出す。
結局、あれから二日寝込んだ私はすっかり元に戻り、年末の仕事や町内会のことでバタバタとしている間に、気付けば三十一日になってしまった。
猫は、「そんな時間はないニャー!」と怒ると思っていたけど意外なことに、「生存の群れは大事ニャ」と送り出してくれて今に至る。
押し入れから落ちてきた物はまだまだあり、その中でめんどくさいのは、メンズ用の化粧品やワックスだった。
だっていちいちネットで捨て方を調べて、一つ一つ合わせて、捨てないといけないんだよ? めんどくさいったらありゃしない!
「もー! どんだけ持ってるの? 一つあれば、充分じゃなーい!」
「アンタより、美意識高いニャ」
ププッと口元を抑えると、ヒゲがふわっと揺れる。
「やかましいわっ!」
猫の横やりに物の思い出に浸るのも忘れ、一つ一つに「お世話になりました」と言いながら分別していく。
「……ん? 何これ?」
押し入れ片付けの最終段階。奥に押し込んだ物を手前に引き寄せて一つずつ中を確認していくと、赤と緑のラッピングで包まれた細長い棒状の物が見つかった。
それはやたら重くて、硬く、記憶の奥にスッポリ抜けてしまった物。
綺麗に包装されている包みをそっと取り外すと、蛍光灯の光りに反射する金属の棒状の物。
「……あっ」
吐き出す息と共に、小さく声が漏れた。
そうだこれは、最後のプレゼントだった。
二年前のクリスマス。彼がずっと欲しがっていたけど、転売とかの影響でなかなか入手出来なかった、バイクの部品。
バイク店ハシゴして、下町に馴染んだ小さなショップでようやく見つけて、やっと買えたんだった。
クリスマスにサプライズプレゼントで渡す予定だった物で、彼と連絡取れなくなったのは二十日。
その前日に色々と問い詰めたから、彼は慌てて逃げたんだろうな。
ううん、それだけじゃない。彼女と過ごしたかったんだな。
他の部品同様に不燃ゴミ袋に入れようとすると、猫が「ちょっと、待つニャ!」と私の手のこうを肉球で抑えてきた。
「猫……。ありがとう、でもね、もう良いの」
これを持ってても、私には活用できないから。
猫に小判、そうゆうことだから。
「ダメニャー! ……売るニャ」
「……はぁ?」
想定外の発言に、目をパチクリさせてしまう。
「これは未使用ってやつニャ。売って問題なしニャー!」
「売るぅ? ……思い出を?」
「物に罪はニャイ。ニャイニャイ」
チッチッチッと言いたげに手の爪を立てて、横にフリフリとする。
「……そうかなぁ」
開かれたプレゼント包装紙を見て、小さく息を吐く。
確かにそうだよね。誰かが使ってくれるなら、物だって嬉しいよね。
「うん」と返事しようとした、その時。
「それで、コリコリいっぱい買うニャアアアアー!」
ダダ漏れな感情が、ドバドバと溢れだしてきた。
「ニャ? ニャアー!」
突き出していた指をニュッと隠して、「ウニャア」と戯けて見せてくる。
「さあ、やるニャー!」
お尻をフリフリとした猫が、太陽に向かって片付け宣言を繰り出す。
結局、あれから二日寝込んだ私はすっかり元に戻り、年末の仕事や町内会のことでバタバタとしている間に、気付けば三十一日になってしまった。
猫は、「そんな時間はないニャー!」と怒ると思っていたけど意外なことに、「生存の群れは大事ニャ」と送り出してくれて今に至る。
押し入れから落ちてきた物はまだまだあり、その中でめんどくさいのは、メンズ用の化粧品やワックスだった。
だっていちいちネットで捨て方を調べて、一つ一つ合わせて、捨てないといけないんだよ? めんどくさいったらありゃしない!
「もー! どんだけ持ってるの? 一つあれば、充分じゃなーい!」
「アンタより、美意識高いニャ」
ププッと口元を抑えると、ヒゲがふわっと揺れる。
「やかましいわっ!」
猫の横やりに物の思い出に浸るのも忘れ、一つ一つに「お世話になりました」と言いながら分別していく。
「……ん? 何これ?」
押し入れ片付けの最終段階。奥に押し込んだ物を手前に引き寄せて一つずつ中を確認していくと、赤と緑のラッピングで包まれた細長い棒状の物が見つかった。
それはやたら重くて、硬く、記憶の奥にスッポリ抜けてしまった物。
綺麗に包装されている包みをそっと取り外すと、蛍光灯の光りに反射する金属の棒状の物。
「……あっ」
吐き出す息と共に、小さく声が漏れた。
そうだこれは、最後のプレゼントだった。
二年前のクリスマス。彼がずっと欲しがっていたけど、転売とかの影響でなかなか入手出来なかった、バイクの部品。
バイク店ハシゴして、下町に馴染んだ小さなショップでようやく見つけて、やっと買えたんだった。
クリスマスにサプライズプレゼントで渡す予定だった物で、彼と連絡取れなくなったのは二十日。
その前日に色々と問い詰めたから、彼は慌てて逃げたんだろうな。
ううん、それだけじゃない。彼女と過ごしたかったんだな。
他の部品同様に不燃ゴミ袋に入れようとすると、猫が「ちょっと、待つニャ!」と私の手のこうを肉球で抑えてきた。
「猫……。ありがとう、でもね、もう良いの」
これを持ってても、私には活用できないから。
猫に小判、そうゆうことだから。
「ダメニャー! ……売るニャ」
「……はぁ?」
想定外の発言に、目をパチクリさせてしまう。
「これは未使用ってやつニャ。売って問題なしニャー!」
「売るぅ? ……思い出を?」
「物に罪はニャイ。ニャイニャイ」
チッチッチッと言いたげに手の爪を立てて、横にフリフリとする。
「……そうかなぁ」
開かれたプレゼント包装紙を見て、小さく息を吐く。
確かにそうだよね。誰かが使ってくれるなら、物だって嬉しいよね。
「うん」と返事しようとした、その時。
「それで、コリコリいっぱい買うニャアアアアー!」
ダダ漏れな感情が、ドバドバと溢れだしてきた。
「ニャ? ニャアー!」
突き出していた指をニュッと隠して、「ウニャア」と戯けて見せてくる。



