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魔法使いの 弟子の弟子

〈この調べと ともに〉
 ポール・デュカス
 交響的スケルツォ『魔法使いの弟子』

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 パパは、ママがお出かけで留守のとき、悪さをする。
 先月は、玉子をそのまま電子レンジで、チンして爆発。レンジの中壁は、四方八方黄身と白身とカラがべっとり。

 先週は、食器洗い機に普通の洗剤を入れて、キッチンの床中泡だらけ。

 家に帰ってきてその光景を見て、またか、とママは指でコメカミを押さえ、清掃命令を下す。

 そして今日。
 ポップコーン作りに挑戦。

 いやな予感しかしない。

 大きなフライパンにサラダ油と塩を入れ、トウモロコシを投入し強火にかける。
 ポップコーン用の乾燥トウモロコシが入っていた袋を見ると、『十回分のお得パック』って書いてある。それを全部入れちゃった。

「えーと、蓋、蓋・・」
おい! 今それを探すのかよ。

 説明書読まない、きちんと計らない、段取り悪い。
 パパは、理科の教師をやってるけど、こんな先生に教えられて、生徒さん、大丈夫だろうか?

 そんなヤバいタイミングで。
 ベランダの窓がガラリと開き、目だし帽を被った男がいきなり入ってきた。

 「おい、金を出せ!」

 フライパンを片手に、蓋を探してアタフタしながら、脅し声の方に向かう。

 その瞬間。
 機は熟していた。

パパン
パン
パパパバン!
パパン
パン
パパパバン!

 熱エネルギーを十分に蓄えたトウモロコシが、元気いっぱい、一再に弾ける。

 何事かと慌てて窓から退散する強盗。

 通報を受けた警察官は、リビングの半分がポップコーンで埋まっているのを見て唖然とし、室内の現場検証を諦めた。

 遅れて帰ってきたママは、その光景を見て、燃えるゴミの袋40リットルの束を無言でパパに手渡した。