結局あたしたちは陽太に逆らうことができず、彼の自宅までやってきた。
陽太の後ろをついて歩いている間、照りつける太陽の熱を首すじに感じながら、まるで絞首台に連れて行かれているような気分に陥った。
「ねえ、陽太くんのことどう思う?」
璃子があたしに小声で聞く。前には涼がいて、さらに先頭を陽太が歩いている。あたしたちの声は、陽太には聞こえないはずだ。
「まったく狂ってるとしか言いようがないわね。でも陽太は日葵のこと好きだったから、気持ちは分かる」
「そうだけど……。でもわたしたちが疑われるのはあんまりだよ」
泣きそうな声をしている璃子だけど、本心がどうなのかは分からない。
だって、タイムカプセルから日葵を貶める手紙が出てきたのは事実なのだ。あたしだって友達を疑いたくはないけれど、この中の誰かがあの手紙を仕込んだとしか思えない。あたしはその犯人が、璃子であってもおかしくないと思っている。
二十分ほど歩いて陽太の自宅へとたどり着いた。閑静な住宅地で、あたしも小学生の頃に何度かお邪魔したことがある。きっと他のみんなも同じだろう。
「お邪魔します」
平日だからか、陽太の家には誰もいなかった。お母さんは専業主婦だったと思うけど、用事で出かけているのだろう。あたしが陽太のお母さんに会ったのはずいぶん昔だ。小学生の頃、陽太のお母さんがお父さんと再婚してすぐだったような気がする。人当たりの良い優しそうなお母さんだった。本当のお母さんとあまり関係が良くなかったと聞いていたので、新しいお母さんと会ってほっとした。だがあの時はまだ陽太も新しいお母さんに対してよそよそしい態度をとっていた記憶がある。
静まり返った部屋の中で、陽太はあたしたちをリビングのソファに座らせた。
「これから一人ずつ、ひまと最後に会った日のことを話してもらう。俺の部屋に呼ぶから来て」
「最後に会った日のこと?」
涼が首を傾げる。あたしも、「いつだっけ」と記憶を掘り返す。全然覚えてない。高校は日葵と別の学校だった。でも、まったく会っていなかったわけじゃない。時々だけど、日葵と璃子と三人で遊ぶこともあった。が、あまり詳しいところまで思い出せない……。
璃子も一緒なのだろう。困った顔で陽太を見つめている。でも、もはや審判と化した陽太にはあたしたちの心の叫びなんて聞こえないかのようだ。リビングをうろうろと落ち着きなく歩き、やがて「まずは涼から」と指名した。
「え、おれ!?」
「そうだよ。何か文句でもある?」
「いや、文句っていうか。ただびっくりして……」
普段はおちゃらけている涼も、陽太が纏っているピリついた空気に、おバカな返しはできない様子だ。
「誰かはトップバッターになるんだから誰でもいいだろ。なんだ、何か後ろめたいことでもあるのか」
「ちげえよ。……ったく、陽太、お前ずっとおかしいぞ。大体なんでこんな——」
涼が最後まで言い終わらないうちに、陽太がリビングから出て階段のほうへと向かっていった。これ以上話は聞かないという意思表示だ。なんだか逆らったら良くないことが起こるような気がする——有無を言わさぬ威圧的な空気に飲まれて、涼は諦めてそそくさと陽太についていった。
「みくりちゃん、わたし、怖いよ」
一連の流れを目にしていたあたしと璃子がリビングに残される。璃子の震える声は、あたしの心中をそのまま言い当てたものだ。
「あたしだって……。陽太って普段はしっかり者だしみんなのリーダーって感じで頼もしいのに、日葵のことになると周りが見えなくなるから。ちょっと空回りしてるだけだと信じたい……」
自分ではそう言うものの、本心では焦っていた。璃子と同じように、得体の知れない恐怖に煽られて、本当は泣きそうになっている。でも、昔からみんなの前で気の強いキャラを貫いている手前、ここで泣き出すわけにはいかなかった。
陽太の後ろをついて歩いている間、照りつける太陽の熱を首すじに感じながら、まるで絞首台に連れて行かれているような気分に陥った。
「ねえ、陽太くんのことどう思う?」
璃子があたしに小声で聞く。前には涼がいて、さらに先頭を陽太が歩いている。あたしたちの声は、陽太には聞こえないはずだ。
「まったく狂ってるとしか言いようがないわね。でも陽太は日葵のこと好きだったから、気持ちは分かる」
「そうだけど……。でもわたしたちが疑われるのはあんまりだよ」
泣きそうな声をしている璃子だけど、本心がどうなのかは分からない。
だって、タイムカプセルから日葵を貶める手紙が出てきたのは事実なのだ。あたしだって友達を疑いたくはないけれど、この中の誰かがあの手紙を仕込んだとしか思えない。あたしはその犯人が、璃子であってもおかしくないと思っている。
二十分ほど歩いて陽太の自宅へとたどり着いた。閑静な住宅地で、あたしも小学生の頃に何度かお邪魔したことがある。きっと他のみんなも同じだろう。
「お邪魔します」
平日だからか、陽太の家には誰もいなかった。お母さんは専業主婦だったと思うけど、用事で出かけているのだろう。あたしが陽太のお母さんに会ったのはずいぶん昔だ。小学生の頃、陽太のお母さんがお父さんと再婚してすぐだったような気がする。人当たりの良い優しそうなお母さんだった。本当のお母さんとあまり関係が良くなかったと聞いていたので、新しいお母さんと会ってほっとした。だがあの時はまだ陽太も新しいお母さんに対してよそよそしい態度をとっていた記憶がある。
静まり返った部屋の中で、陽太はあたしたちをリビングのソファに座らせた。
「これから一人ずつ、ひまと最後に会った日のことを話してもらう。俺の部屋に呼ぶから来て」
「最後に会った日のこと?」
涼が首を傾げる。あたしも、「いつだっけ」と記憶を掘り返す。全然覚えてない。高校は日葵と別の学校だった。でも、まったく会っていなかったわけじゃない。時々だけど、日葵と璃子と三人で遊ぶこともあった。が、あまり詳しいところまで思い出せない……。
璃子も一緒なのだろう。困った顔で陽太を見つめている。でも、もはや審判と化した陽太にはあたしたちの心の叫びなんて聞こえないかのようだ。リビングをうろうろと落ち着きなく歩き、やがて「まずは涼から」と指名した。
「え、おれ!?」
「そうだよ。何か文句でもある?」
「いや、文句っていうか。ただびっくりして……」
普段はおちゃらけている涼も、陽太が纏っているピリついた空気に、おバカな返しはできない様子だ。
「誰かはトップバッターになるんだから誰でもいいだろ。なんだ、何か後ろめたいことでもあるのか」
「ちげえよ。……ったく、陽太、お前ずっとおかしいぞ。大体なんでこんな——」
涼が最後まで言い終わらないうちに、陽太がリビングから出て階段のほうへと向かっていった。これ以上話は聞かないという意思表示だ。なんだか逆らったら良くないことが起こるような気がする——有無を言わさぬ威圧的な空気に飲まれて、涼は諦めてそそくさと陽太についていった。
「みくりちゃん、わたし、怖いよ」
一連の流れを目にしていたあたしと璃子がリビングに残される。璃子の震える声は、あたしの心中をそのまま言い当てたものだ。
「あたしだって……。陽太って普段はしっかり者だしみんなのリーダーって感じで頼もしいのに、日葵のことになると周りが見えなくなるから。ちょっと空回りしてるだけだと信じたい……」
自分ではそう言うものの、本心では焦っていた。璃子と同じように、得体の知れない恐怖に煽られて、本当は泣きそうになっている。でも、昔からみんなの前で気の強いキャラを貫いている手前、ここで泣き出すわけにはいかなかった。



