「東京で大規模な空襲があったらしいよ!」
他村とよく交流がある照さんが、その一報を私達村民に教えてくれた。
畑を耕していた大志さんはその言葉で力が抜けたのか、鍬は地面に落ちた。
「……被害状況は?」
フラフラとした足取りで、照さんの元に寄っていく。
「焼き野原になったって……」
「そう……ですか」
また目の光を失った大志さんは、ただ呆然と東京方面の空を眺めた。
三月十日は東京大空襲が起きた日。空襲の被害として最悪の被害をもたらしたと、歴史で習っている。
たった一夜のことで十万人が亡くなったとされる史上最悪の被害を、私は知っていたのに何も言わなかった。
だって、言ったところで何とか出来るわけない。気味悪がられて避けられるだけ。だから、言えなかった。
ごめんなさい。大志さんの友人が亡くなると分かっていたのに、保身に走ってしまった。
これから沖縄で兵士や一般人が亡くなり、広島と長崎で原爆が落とされて巻き込まれた人々が亡くなり、日本は降伏し終戦となる。
私はそれを知っているけど、絶対に口にしてはならない。これだけの犠牲を払わないと間違っていたことに気付けなかった日本。私なんかに止められるわけないのだから。
他村とよく交流がある照さんが、その一報を私達村民に教えてくれた。
畑を耕していた大志さんはその言葉で力が抜けたのか、鍬は地面に落ちた。
「……被害状況は?」
フラフラとした足取りで、照さんの元に寄っていく。
「焼き野原になったって……」
「そう……ですか」
また目の光を失った大志さんは、ただ呆然と東京方面の空を眺めた。
三月十日は東京大空襲が起きた日。空襲の被害として最悪の被害をもたらしたと、歴史で習っている。
たった一夜のことで十万人が亡くなったとされる史上最悪の被害を、私は知っていたのに何も言わなかった。
だって、言ったところで何とか出来るわけない。気味悪がられて避けられるだけ。だから、言えなかった。
ごめんなさい。大志さんの友人が亡くなると分かっていたのに、保身に走ってしまった。
これから沖縄で兵士や一般人が亡くなり、広島と長崎で原爆が落とされて巻き込まれた人々が亡くなり、日本は降伏し終戦となる。
私はそれを知っているけど、絶対に口にしてはならない。これだけの犠牲を払わないと間違っていたことに気付けなかった日本。私なんかに止められるわけないのだから。



