Xにて、”Y”というアカウントは一夜のうちに存在感を広めていた。
松下高校に通っていると確認できるアカウントを片っ端からフォローし、そのポストを残していた。
そのせいで、そのポストは一気に拡散され、莉々愛を知らない人にまで届いてしまっていた。
私はリア垢はあるけれど、高校名を記していなかったのと、作家垢しか作っていなかったため、フォローされていなかった。
けれど、”Y”が莉々愛の名をしっかり出していたことで、小学生時代の友人伝いでそれを知った。
なんとも悪質で、気分が悪かった。
私ですら怒りを感じるのだ。
これを、莉々愛が見たら?
見てしまったら?
私はXを閉じて、LINEを開く。
莉々愛との会話は昨日の『行ってもいい?』で終わっている。
――莉々愛、大丈夫?
それを送ろうとして、私は文字を消した。
そう聞けば、莉々愛は大丈夫としか返さない。
――莉々愛、家にいる?
応えてくれるだろうか。
お願いだから、応えて。
莉々愛。
すると、既読がついた。
それなのに、莉々愛からは一向にメッセージが届かない。
急にこんなことを言ったから、警戒しているのだろうか。
もしかして、まだあのアカウントの存在を知らない?
いや、そんなことはないはず。
だって、”Y”は西野さんたちをフォローしていた。
だから、莉々愛の耳には入ってしまうはず。
見ていないとは思えない。
あまりにもどかしくて、私は莉々愛に電話をかけた。
だけど、莉々愛は出るどころか、電話を切った。
莉々愛が一人で抱え込もうとしていることは、すぐにわかった。
私は家を飛び出して、莉々愛の家に向かう。
「あら、遥香ちゃん。久しぶりね」
なにも知らないのか、莉々愛のお母さんが穏やかな様子で迎えてくれた。
「あの、莉々愛、いますか」
「莉々愛? まだ部屋から出て来てないから、寝てると思うわ。もしかして約束してた?」
寝ているわけがない。
だって、LINEで既読がついたし、電話は切られた。
そう言おうと思ったけど、ただ寝ぼけていただけなのかもしれないという考えもよぎった。
私が、勝手に焦っているだけではないか、と。
だけど、この目でちゃんと確かめなければ。
「まあ……はい、そんな感じです」
「そうだったのね。上がって待ってて。すぐに起こしてくるから」
「いえ、私が行きます」
そして私は家に上がらせてもらった。
数年ぶりに訪ねたけれど、まったく変わっていない。
莉々愛の部屋の前に立ち、私は深呼吸をした。
「莉々愛、いる? 遥香だけど」
部屋の向こうから、反応はない。
入ってもいいだろうか。
いや、いくら幼馴染でも、勝手に入ることは許されない。
莉々愛が開けてくれるのを、待つしかない。
すると、ドアノブが回った。
ゆっくりとドアが開き、その向こうにいる莉々愛は持ち前の明るさを失っていた。
「……なにしに来たの」
“大丈夫?”すら、出てこなかった。
ケンカしたときでも、あんなふうに敵意を向けられたことはなくて。
私はただただ動揺していた。
あとから聞けば、このとき、莉々愛はいつものメンバーで作られたグループLINEで、こんな会話がされていたらしい。
yume♡
――莉々愛、大丈夫?
すず
――あれ、まじで許せないよね
優希音
――匿名のフリして、悪質すぎる
――私たちは莉々愛の味方だよ
yume♡
――そうだよ!ユメたちは絶対莉々愛の味方!
―――みんなありがとう
すず
――てかさ、Yって、誰なんだろ
yume♡
――ユメ、あの子だと思う
――山内さん
優希音
――山内さんって、よく黒いマスクしてる子?
すず
――なんで山内さん?
yume♡
――だって、ユメ見ちゃったんだもん
――山内さんが、莉々愛と吉良君を睨んでるとこ!
優希音
――それだけで山内さんって決めつけるのは、よくないんじゃない?
―――私も、あの子じゃないと思う
松下高校に通っていると確認できるアカウントを片っ端からフォローし、そのポストを残していた。
そのせいで、そのポストは一気に拡散され、莉々愛を知らない人にまで届いてしまっていた。
私はリア垢はあるけれど、高校名を記していなかったのと、作家垢しか作っていなかったため、フォローされていなかった。
けれど、”Y”が莉々愛の名をしっかり出していたことで、小学生時代の友人伝いでそれを知った。
なんとも悪質で、気分が悪かった。
私ですら怒りを感じるのだ。
これを、莉々愛が見たら?
見てしまったら?
私はXを閉じて、LINEを開く。
莉々愛との会話は昨日の『行ってもいい?』で終わっている。
――莉々愛、大丈夫?
それを送ろうとして、私は文字を消した。
そう聞けば、莉々愛は大丈夫としか返さない。
――莉々愛、家にいる?
応えてくれるだろうか。
お願いだから、応えて。
莉々愛。
すると、既読がついた。
それなのに、莉々愛からは一向にメッセージが届かない。
急にこんなことを言ったから、警戒しているのだろうか。
もしかして、まだあのアカウントの存在を知らない?
いや、そんなことはないはず。
だって、”Y”は西野さんたちをフォローしていた。
だから、莉々愛の耳には入ってしまうはず。
見ていないとは思えない。
あまりにもどかしくて、私は莉々愛に電話をかけた。
だけど、莉々愛は出るどころか、電話を切った。
莉々愛が一人で抱え込もうとしていることは、すぐにわかった。
私は家を飛び出して、莉々愛の家に向かう。
「あら、遥香ちゃん。久しぶりね」
なにも知らないのか、莉々愛のお母さんが穏やかな様子で迎えてくれた。
「あの、莉々愛、いますか」
「莉々愛? まだ部屋から出て来てないから、寝てると思うわ。もしかして約束してた?」
寝ているわけがない。
だって、LINEで既読がついたし、電話は切られた。
そう言おうと思ったけど、ただ寝ぼけていただけなのかもしれないという考えもよぎった。
私が、勝手に焦っているだけではないか、と。
だけど、この目でちゃんと確かめなければ。
「まあ……はい、そんな感じです」
「そうだったのね。上がって待ってて。すぐに起こしてくるから」
「いえ、私が行きます」
そして私は家に上がらせてもらった。
数年ぶりに訪ねたけれど、まったく変わっていない。
莉々愛の部屋の前に立ち、私は深呼吸をした。
「莉々愛、いる? 遥香だけど」
部屋の向こうから、反応はない。
入ってもいいだろうか。
いや、いくら幼馴染でも、勝手に入ることは許されない。
莉々愛が開けてくれるのを、待つしかない。
すると、ドアノブが回った。
ゆっくりとドアが開き、その向こうにいる莉々愛は持ち前の明るさを失っていた。
「……なにしに来たの」
“大丈夫?”すら、出てこなかった。
ケンカしたときでも、あんなふうに敵意を向けられたことはなくて。
私はただただ動揺していた。
あとから聞けば、このとき、莉々愛はいつものメンバーで作られたグループLINEで、こんな会話がされていたらしい。
yume♡
――莉々愛、大丈夫?
すず
――あれ、まじで許せないよね
優希音
――匿名のフリして、悪質すぎる
――私たちは莉々愛の味方だよ
yume♡
――そうだよ!ユメたちは絶対莉々愛の味方!
―――みんなありがとう
すず
――てかさ、Yって、誰なんだろ
yume♡
――ユメ、あの子だと思う
――山内さん
優希音
――山内さんって、よく黒いマスクしてる子?
すず
――なんで山内さん?
yume♡
――だって、ユメ見ちゃったんだもん
――山内さんが、莉々愛と吉良君を睨んでるとこ!
優希音
――それだけで山内さんって決めつけるのは、よくないんじゃない?
―――私も、あの子じゃないと思う