私と莉々愛は、幼稚園からの付き合いだ。
家が近く、親同士も仲がいいため、よくお互いの家に行っていた。
それが徐々に減り始めたのは、中学生になってからだ。
私は文芸部に、莉々愛はバスケ部に入部したことが一つのきっかけだったと思う。
本を読むことだけでなく、文章を書くことも始めた私は、インドアへの道を究めていった。
対して、莉々愛はバスケ部の人たちと遊ぶようになり、いわゆる一軍入りを果たした。
ただ、お互いに友達だという認識は変わらず、一緒に登校したり、廊下ですれ違えば軽く会話をしたりすることはあった。
それすらもやめようと言ったのは、私だ。
莉々愛と、その友人たちの明るさに耐えられなくなって、次第に莉々愛と距離を置くようになった。
それは高校に上がってからも変わらなかった。
莉々愛と同じ高校に通うと決まってから、私から莉々愛に頼んだ。
「高校では、他人のふりをしてほしい」
それを言ったときの莉々愛の顔は、今でも覚えている。
寂しそうな、傷付いた顔。
罪悪感はあったけれど、私の穏やかで静かな高校生活のためには、莉々愛とは徹底的に距離を置くべきだと思い、私はそれを見て見ぬふりをしていた。
しかし、私たちは同じクラスになった。
神様が、離れることは許さないとでも言っているのかと思った。
幸い、出席番号順になると、莉々愛は一番で、私は一番最後だったため、私たちの席は必然的に離れた。
そして、私は教室の隅っこという、最高のポジションをもらうことができた。
対して、莉々愛は持ち前の明るさと人当たりの良さを発揮し、一年四組のスクールカーストトップになっていた。
莉々愛が来れば、教室の空気が一気に明るくなり。
誰もが莉々愛に目を引かれる。
まるでアイドルか、少女漫画の主人公のようで。
私があえて避けなくても、本当に遠い存在となっていた。
今聞けば、このときの莉々愛は相当無理をしていたらしい。
私が避けたから。
それを、莉々愛は自分がなにかしたせいだと思ったらしい。
だから、もう、誰にも嫌な思いをさせないように。
それだけを考えて行動していたと言う。
言われてみれば、腑に落ちるところもあった。
今までの莉々愛とは違っていたところがいくつも。
だけど、あのときの私は、莉々愛を見ないように意識していたから、そのことに気付けなかった。
もし莉々愛の笑顔がニセモノだと気付くことができていたら、あんなことにはならなかっただろうと思うと、後悔に押しつぶされそうになる。
さて、なぜ私が莉々愛を見ないようにしていたのか。
それは、莉々愛がみんなのアイドルになったからだけではない。
莉々愛の友達が苦手だったからだ。
西野夢奏。
少し低い背、ツインテール、甘えた性格。
女子が嫌う女の子というような感じの子だけれど、そこに関しては、私はまったく興味はなかった。
問題は、彼女が莉々愛信者と言ってもいいくらい、莉々愛のことが好きだということ。
一度、莉々愛と仲良くしたいと言った子に対して、西野さんははっきりと言ったのだ。
「その見た目で莉々愛の隣に立つつもり?」
あのときの空気の凍り付き方は、しばらく忘れられない。
莉々愛がすぐにフォローしたけれど、言葉の切れ味が最高すぎて、まったく意味のないものとなってしまっていた。
そんな西野さんが、莉々愛の幼馴染が教室の隅っこで影と同化している私だなんて、認めるはずがない。
きっと、目の敵にされるだろう。
そう思って、私は彼女と関わりたくなかった。
次に、織田鈴菜。
彼女といえば、明るい金髪と派手なメイクだろう。
私からしてみれば、もう、それだけで苦手な対象だった。
そして、篠崎優希音。
彼女はこのグループの姉的存在と言えるだろう。
普通なら、苦手に思うところはない。
けれど、篠崎さんは絶対的に莉々愛の味方だった。
莉々愛の言うことは必ず肯定していた。
莉々愛がそんなことをするわけがないとわかっていたけれど、万が一、莉々愛が私のことを悪く言っていたら、篠崎さんにも敵意を向けられるだろうと、そんな被害妄想をしていた。
とまあ、こんな感じで私はますます莉々愛と関わっていることを隠したくて、息を潜めるように教室の隅にいた。
外から見ていても四人はとても仲がよさそうで、莉々愛以外の三人による威嚇で、自分たちとレベルが会わない人間は寄せ付けないような雰囲気があった。
そこに変化が起き始めたのは、夏休みが明けたころだった。
家が近く、親同士も仲がいいため、よくお互いの家に行っていた。
それが徐々に減り始めたのは、中学生になってからだ。
私は文芸部に、莉々愛はバスケ部に入部したことが一つのきっかけだったと思う。
本を読むことだけでなく、文章を書くことも始めた私は、インドアへの道を究めていった。
対して、莉々愛はバスケ部の人たちと遊ぶようになり、いわゆる一軍入りを果たした。
ただ、お互いに友達だという認識は変わらず、一緒に登校したり、廊下ですれ違えば軽く会話をしたりすることはあった。
それすらもやめようと言ったのは、私だ。
莉々愛と、その友人たちの明るさに耐えられなくなって、次第に莉々愛と距離を置くようになった。
それは高校に上がってからも変わらなかった。
莉々愛と同じ高校に通うと決まってから、私から莉々愛に頼んだ。
「高校では、他人のふりをしてほしい」
それを言ったときの莉々愛の顔は、今でも覚えている。
寂しそうな、傷付いた顔。
罪悪感はあったけれど、私の穏やかで静かな高校生活のためには、莉々愛とは徹底的に距離を置くべきだと思い、私はそれを見て見ぬふりをしていた。
しかし、私たちは同じクラスになった。
神様が、離れることは許さないとでも言っているのかと思った。
幸い、出席番号順になると、莉々愛は一番で、私は一番最後だったため、私たちの席は必然的に離れた。
そして、私は教室の隅っこという、最高のポジションをもらうことができた。
対して、莉々愛は持ち前の明るさと人当たりの良さを発揮し、一年四組のスクールカーストトップになっていた。
莉々愛が来れば、教室の空気が一気に明るくなり。
誰もが莉々愛に目を引かれる。
まるでアイドルか、少女漫画の主人公のようで。
私があえて避けなくても、本当に遠い存在となっていた。
今聞けば、このときの莉々愛は相当無理をしていたらしい。
私が避けたから。
それを、莉々愛は自分がなにかしたせいだと思ったらしい。
だから、もう、誰にも嫌な思いをさせないように。
それだけを考えて行動していたと言う。
言われてみれば、腑に落ちるところもあった。
今までの莉々愛とは違っていたところがいくつも。
だけど、あのときの私は、莉々愛を見ないように意識していたから、そのことに気付けなかった。
もし莉々愛の笑顔がニセモノだと気付くことができていたら、あんなことにはならなかっただろうと思うと、後悔に押しつぶされそうになる。
さて、なぜ私が莉々愛を見ないようにしていたのか。
それは、莉々愛がみんなのアイドルになったからだけではない。
莉々愛の友達が苦手だったからだ。
西野夢奏。
少し低い背、ツインテール、甘えた性格。
女子が嫌う女の子というような感じの子だけれど、そこに関しては、私はまったく興味はなかった。
問題は、彼女が莉々愛信者と言ってもいいくらい、莉々愛のことが好きだということ。
一度、莉々愛と仲良くしたいと言った子に対して、西野さんははっきりと言ったのだ。
「その見た目で莉々愛の隣に立つつもり?」
あのときの空気の凍り付き方は、しばらく忘れられない。
莉々愛がすぐにフォローしたけれど、言葉の切れ味が最高すぎて、まったく意味のないものとなってしまっていた。
そんな西野さんが、莉々愛の幼馴染が教室の隅っこで影と同化している私だなんて、認めるはずがない。
きっと、目の敵にされるだろう。
そう思って、私は彼女と関わりたくなかった。
次に、織田鈴菜。
彼女といえば、明るい金髪と派手なメイクだろう。
私からしてみれば、もう、それだけで苦手な対象だった。
そして、篠崎優希音。
彼女はこのグループの姉的存在と言えるだろう。
普通なら、苦手に思うところはない。
けれど、篠崎さんは絶対的に莉々愛の味方だった。
莉々愛の言うことは必ず肯定していた。
莉々愛がそんなことをするわけがないとわかっていたけれど、万が一、莉々愛が私のことを悪く言っていたら、篠崎さんにも敵意を向けられるだろうと、そんな被害妄想をしていた。
とまあ、こんな感じで私はますます莉々愛と関わっていることを隠したくて、息を潜めるように教室の隅にいた。
外から見ていても四人はとても仲がよさそうで、莉々愛以外の三人による威嚇で、自分たちとレベルが会わない人間は寄せ付けないような雰囲気があった。
そこに変化が起き始めたのは、夏休みが明けたころだった。