モキュメンタリーホラー。

 ノベマ!サイトにてそのコンテストが開催されると知ったとき、私は、今回は見送ることになりそうだと思った。

 まず、モキュメンタリーがよくわからなかった。
 初めて聞く言葉だし、フィクションのドキュメンタリーと、読んでもわからなかった。
 だから、書けないと思ったのだ。

 そしてなにより、私はホラーが苦手だ。
 簡易的なお化け屋敷でも避けるし、どんなジャンルでも漫画なら読むと謳っている私だが、どうしてもホラーだけは手が出せないでいる。

 それなのに、私が今、こうして文字を綴っているのには、ちゃんと理由がある。

 それは、幼なじみの藍川(あいかわ)莉々愛(りりあ)に頼まれたからだ。
 莉々愛自身が経験したことを、記録として残してほしい、と。

 初めは気乗りしなかった。
 幼なじみのあの姿を記録に残すなんて、嫌だと思った。

 だけど、莉々愛に言われたのだ。

遥香(はるか)が小説として残してくれることで、私と同じように苦しむ人が減ってくれたらいいなって思ったの」

 こう言われてしまえば、書かないわけにはいかないだろう。
 ゆえに、私は莉々愛を襲った悲劇に『ひとりじめ』というタイトルをつけ、描くことに決めた。

 ただ、ホラーとして書き切る自信がないため、サスペンスとして書かせてほしい。

 どうか、莉々愛の思いがたくさんの人に届くことを願って。