「狩り人同士で一緒に住むとかできないかな? もっと交友関係を深めるためにも!」
「待って。悠真くんと結葵様は、恋仲同士」
初さんと来栖さんとのやりとりは、とても平和な光景に見える。
こういう日常が、紫純琥珀蝶という非現実的なものを一瞬だけ忘れさせてくれる。
こういう言葉の交わし合いこそが、私にとっての安心材料になる。
(いつもの初さんと来栖さん……)
つい最近までは知らなかった二人のことを、これからはもっとよく覚えていきたい。
ただでさえ、紫純琥珀蝶に記憶を喰われる脅威に怯える日々。
だからこそ、私は日々を記憶に留めることの大切さを心に刻む。
「いちいち移動しなくても済むように、狩り人の数が増えてほしいー……」
紫純琥珀蝶を狩る力というのは、親から子へ代々引き継がれるものではなくて完全に神様のいたずらのように何も法則性がない。
昨今の朱色村は蝶の数が極端に少なくて、数少ない狩り人の人数を割かなくて済むようになっていたらしい。
(私が朱色村にいたからなのか、それとも偶然なのか……)
数少ない狩り人の中に、私が加わった。
それが大きな力になれたらいいと思うものの、そんな理想通りの未来を生きられるかといったら自信はない。理想を描くことは得意でも、理想を実現するには力が足りないと、北白川の外に出て学んでいくことも多い。
「紫純琥珀蝶を世界中にばらまいて、新しい人材の発掘……」
「その発想は怖すぎるかな……」
「冗談」
私たちが生きている間に、紫純琥珀蝶が消滅してくれたらそれでいい。
だけど、これから何年……何十年。もっと酷いときは何百年、何千年という年月を、淡い紫色の蝶々と付き合っていかなければいけないと考えると、狩り人の数を増やすことは急務なのかもしれない。
たかが人材不足では済まされない時代がやってくるのかもしれない。
「少し……怖くなってしまいますね」
和やかな雰囲気を味わうことができていたのに、穏やかでない未来を想像した途端に笑顔は消えてしまう。
深刻な話をしているのだから当然でもあるけれど、この場から笑顔が消えるということは、私たちが平和な場所にいないという証でもある。
「世の中には、記憶がなくなるくらいどうってことないって唱える政治家たちもいるくらいだからねー」
「一寸先は闇……」
蝶に奪われる記憶は、生きていくのに支障がない程度のもの。
蝶に記憶を奪われたところで、生きていくことはできる。
そんなことは、この世界に生きる人たちみんなが分かっている。
生活に支障を来すわけではないなんてことは、誰もがみんな理解をしている。
「それでも、記憶が抜け落ちた人生を歩みたくない方はいます」
そんな想いを抱く人たちがいるからこそ、悠真様たち狩り人は存在することが許される。
失いたくない大切な人の記憶を守るために、悠真様たち狩り人は力を行使する。
「先の未来のことを考えていても仕方がありません。私たちは民を守ることに力を注いでいきましょう」
民を守ると言っておきながら、裏では政治家や富を持っている人たちが都合よく記憶を消すための実験を行っている。この後ろめたさこそ、悠真様が抱いているもの。
(その後ろめたさや罪の重さを、悠真様から分けてもらうために私は存在する)
民を守れば、後ろめたさがなくなるというわけではない。
でも、狩り人が命令されているのは民の記憶を守ること。
せっかく力を貸してくれる狩り人がいるのだから、民を守ることに意識を集中させていかなければいけない。
「待って。悠真くんと結葵様は、恋仲同士」
初さんと来栖さんとのやりとりは、とても平和な光景に見える。
こういう日常が、紫純琥珀蝶という非現実的なものを一瞬だけ忘れさせてくれる。
こういう言葉の交わし合いこそが、私にとっての安心材料になる。
(いつもの初さんと来栖さん……)
つい最近までは知らなかった二人のことを、これからはもっとよく覚えていきたい。
ただでさえ、紫純琥珀蝶に記憶を喰われる脅威に怯える日々。
だからこそ、私は日々を記憶に留めることの大切さを心に刻む。
「いちいち移動しなくても済むように、狩り人の数が増えてほしいー……」
紫純琥珀蝶を狩る力というのは、親から子へ代々引き継がれるものではなくて完全に神様のいたずらのように何も法則性がない。
昨今の朱色村は蝶の数が極端に少なくて、数少ない狩り人の人数を割かなくて済むようになっていたらしい。
(私が朱色村にいたからなのか、それとも偶然なのか……)
数少ない狩り人の中に、私が加わった。
それが大きな力になれたらいいと思うものの、そんな理想通りの未来を生きられるかといったら自信はない。理想を描くことは得意でも、理想を実現するには力が足りないと、北白川の外に出て学んでいくことも多い。
「紫純琥珀蝶を世界中にばらまいて、新しい人材の発掘……」
「その発想は怖すぎるかな……」
「冗談」
私たちが生きている間に、紫純琥珀蝶が消滅してくれたらそれでいい。
だけど、これから何年……何十年。もっと酷いときは何百年、何千年という年月を、淡い紫色の蝶々と付き合っていかなければいけないと考えると、狩り人の数を増やすことは急務なのかもしれない。
たかが人材不足では済まされない時代がやってくるのかもしれない。
「少し……怖くなってしまいますね」
和やかな雰囲気を味わうことができていたのに、穏やかでない未来を想像した途端に笑顔は消えてしまう。
深刻な話をしているのだから当然でもあるけれど、この場から笑顔が消えるということは、私たちが平和な場所にいないという証でもある。
「世の中には、記憶がなくなるくらいどうってことないって唱える政治家たちもいるくらいだからねー」
「一寸先は闇……」
蝶に奪われる記憶は、生きていくのに支障がない程度のもの。
蝶に記憶を奪われたところで、生きていくことはできる。
そんなことは、この世界に生きる人たちみんなが分かっている。
生活に支障を来すわけではないなんてことは、誰もがみんな理解をしている。
「それでも、記憶が抜け落ちた人生を歩みたくない方はいます」
そんな想いを抱く人たちがいるからこそ、悠真様たち狩り人は存在することが許される。
失いたくない大切な人の記憶を守るために、悠真様たち狩り人は力を行使する。
「先の未来のことを考えていても仕方がありません。私たちは民を守ることに力を注いでいきましょう」
民を守ると言っておきながら、裏では政治家や富を持っている人たちが都合よく記憶を消すための実験を行っている。この後ろめたさこそ、悠真様が抱いているもの。
(その後ろめたさや罪の重さを、悠真様から分けてもらうために私は存在する)
民を守れば、後ろめたさがなくなるというわけではない。
でも、狩り人が命令されているのは民の記憶を守ること。
せっかく力を貸してくれる狩り人がいるのだから、民を守ることに意識を集中させていかなければいけない。